漢方薬:牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
お年寄りの頻尿改善に確かな実績。下半身のしびれや痛みにも処方されます。

効能・効果
疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:
下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ

用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

かすみ目、口が渇く、かゆみ、四肢のしびれ、下肢の脱力感、冷え、夜間頻尿、排尿困難



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医薬品は使用上の注意をお読みいただき、正しくお使いください。
お買い求めの際には、漢方を現代病に活かす 漢方専門 大山漢方薬局に、お気軽にご相談ください。


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(注意)
漢方専門 大山漢方堂薬局の 厳選、漢方薬、健康食品のご注文は、大山漢方薬局に、直接、お電話、FAX、E-mail にてご用命ください。
お電話:0283-22-1574、FAX:0283-22-1607、E-mail:ohyama@poem.ocn.ne.jp
お待ち致しております。



「大山漢方堂 漢方医学と漢方健康相談」

      大山漢方堂薬局の得意とする病気、大山漢方堂薬局に漢方相談のあるご病気一覧、

  大山漢方堂薬局 漢方健康相談窓口、医学博士大山博行先生、医学博士小松靖弘先生のご紹介


" THE KAMPO " 漢方
 漢方薬, How the Japanese Updated Traditional Herbal Medicine



<漢方薬のご服用をお考えの皆様へのお願い!>

*漢方薬のご服用に関しましては、
「使用上の注意」をよく読み、「用法・用量」をよく守り、適切にご服用ください。

また、今回、始めて、漢方薬のご服用を希望されるお客様は、
下記、問診表に必要事項を記入して送信するか、

漢方相談お申し込みフォーム

お電話にて、直接、大山漢方薬局に、ご相談ください。
症状・体質を詳しくお伺いした上で、適切な漢方薬をアドバイスさせて頂きます。

(大山漢方薬局 / 無料漢方相談電話 0283-22-1574 / 9:00〜19:00)

<注意>
大山漢方薬局、デジタル店舗で、お取り扱いの漢方薬は、すべて「一般用医薬品」です。

以上、よろしくお願い致します。

E-mail to Dr. Ohyama Kampo Pharmacy.


 漢方を現代病に活かす! 漢方専門 大山漢方薬局デジタル店舗へ!



大山漢方堂薬局 〒327-0026 栃木県佐野市金屋仲長町2432
TEL&FAX : 0283-22-1574  E-mail : ohyama@poem.ocn.ne.jp



漢方薬:五苓散(ごれいさん) 《傷寒論》
患者のタイプ:中間証(体力中程度の人)
使用目的:口渇、排尿量・回数異常があり、ときに浮腫、悪心、嘔吐、頭痛、めまい、下痢、腹痛、発熱などの症状を伴うもの。
心窩部に振水音を認めることも多い。
適応症:浮腫、ネフローゼ、尿毒症、腎炎、腎盂炎、二日酔い、乗物酔い、悪心、嘔吐、めまい、頭痛、暑気あたり、
日射病、胃下垂、偏頭痛、三叉神経痛、メニエール症候群、てんかん、胆石症、急性・慢性肝炎、結膜炎など。
構成生薬:沢瀉5.0、蒼朮・猪苓・茯苓各3.0、桂枝2.0
本方は表に邪熱があって、裏に停水のあるものを治す効があり、口渇と尿利の減少を目標にして、諸種の疾患に用いられる。
また、水逆の嘔吐も、本方の目標である。水逆の嘔吐は、口渇と尿利の減少があって、水をのむとすぐに吐出し、また水をのみ、また水を吐くというものをいう。
熱のある場合では脈が浮数となり、汗は出ない。五苓散をのむと、尿利がつき、発汗して解熱する。
水逆の嘔吐も、五苓散をのむと嘔吐がやみ、尿が出るようになる。
本方の沢瀉、猪苓、茯苓、朮は何れも体液の調整剤で、胃腸内の停水を去り、尿利をよくして浮腫を去る。
沢瀉、猪苓は口渇を治し、茯苓とともに鎮静の効があり、桂枝は表熱を去り、気の上衝を治し、他薬の尿利の効を助ける。
本方は感冒その他の熱のある病気で、口渇、尿利の減少のあるもの、
ネフローゼ、腎炎、心臓病、急性胃腸炎、陰嚢水腫、クインケの浮腫などに用いられる。

適応症
1)水湿の表証(太陽病蓄水証):悪風・微熱・尿量減少・口渇するが飲むとすぐに嘔吐するなどの症候で、舌苔は白・脈は浮滑。
2)水湿による水様物の嘔吐あるいは浮腫あるいは水様の下痢などで、尿量減少・口渇をともない、
目まい感・腹部の動悸・身体が重いなどの症状がみられることもある。舌苔は白滑あるいは白膩・脈は滑。



中医処方解説
水湿による尿量減少・口渇に対する代表処方である。
利水の茯苓・猪苓・沢瀉・白朮と、通陽の桂枝で構成されている。
「水湿」とは、水分の排泄あるいは吸収の障害による一連の症候である。
嘔吐は、主に胃の吸収障害による溜飲の存在(腹壁をたたくとジャブジャブと音を発することでわかり、
これを「振水音」という)によっておこり、胃内圧が高まると水様物を吐すのであるが、一般に悪心をともなうことが少ない。
これを「水逆」の嘔吐ともいう。水様の下痢は、腸管での吸収障害によって発生し、腹痛・裏急後重などをともなうことは少ない。
浮腫は、腎臓での排泄障害や血液量増大にともなう等張性のもの。
あるいは血管運動神経性と考えられる。この場合には動悸・目まい感・身体が重いなどの症候をともなう。
なお重要なことは口渇と尿量減少で、これは脱水によるものではなく水分の偏在と考えるとよい。
すなわち、口渇と尿量減少があるにかかわらず、胃内に溜飲がみとめられたり腸で水様のグル音が発生したりすることから、
体内には水分が過剰に存在しながら、吸収障害により有効な血中成分として機能系にとりこまれていないものと推定できる。
以上のように、同じ水湿であってもさまざまな病理変化が混在しているのである。
「蓄水証」については、ふだんから水湿の症候をもっているものが感冒に罹患し、発熱反応とともに胃腸の機能失調がおこり、
水湿の症候が表面化するものと考えられる。 淡滲利水の茯苓・白朮・沢瀉・猪苓は、いずれも利尿作用をもち、
猪苓・沢瀉・白朮は水分・Na・K・Cl・尿素などの排出を増し、尿細管の再吸収を抑制するとされている。
茯苓は鎮静作用をもち、正常の状態では余り利尿効果はない。
臨床的な観察から、白朮・茯苓などは浮腫や溜飲をのぞいたり下痢を止める効果があり、結果的に利尿を示すところから、
何らかの作用機序によって消化管や組織の過剰水分を血中にひきこみ、これを腎臓に送ることによって尿量を増大させるものと考えられる。
なお、白朮・茯苓は、栄養分をふくみ消化吸収を高める作用があるため、補脾薬として用いられ、脾虚が原因で生じる水腫・痰飲・下痢などには必ず配合される。
一方、猪苓・沢瀉は、主に尿細管での再吸収を抑制してやや積極的な利尿作用をもつが、正常な水分を排泄するほど強力な利尿剤とは認めがたい面がある。
桂枝には軽度の利尿作用があるが、主に血管を拡張して血行を促進しかつ吸収を高めることによって、利水薬の効果をつよめる(これを「通陽」と呼ぶ)。
また感冒の初期には、体表血管を拡張して発汗させ解熱する。
以上のように、本方は主として消化管や組織の余剰の水分を血中にひきこむことによって利尿し、同時に口渇・下痢・浮腫・溜飲などを緩解するものである。
それゆえ、脱水には用いるべきではない。 ただし、暑中での発汗過多や二日酔いなどでみられる軽度の脱水症状で、
はげしい口渇があり水を多量に飲むにかかわらず腹が脹って口渇が癒えない状況は、やはり吸収障害が関与しており、
本方を服用することにより水分が有効に血中に入って症状の緩解が得られるので応用するとよい。
悪風・微熱などの表証がないときには、桂枝をのぞいてよい(四苓散《明医指掌》)。
表証とともに浮腫がみられる風水証には、麻黄・石膏などを配合するほか越脾湯と併用する。
食欲不振・疲労感・元気がないなどの気虚の症候をともなうときは、白朮を増量し黄耆を加える。
冷え・寒けがつよいときには、桂枝を肉桂にかえ乾姜・附子などを配合する。あるいは真武湯・実脾飲などに変方する。




漢薬の臨床応用
急性胃腸炎・周期性嘔吐症・仮性コレラ・クインケ浮腫・寒冷じんましん・急性腎炎の初期・陰のう水腫などで、水湿を呈するもの。
あるいは肝硬変の腹水・ネフローゼ症候群・慢性腎炎などの水腫に対して補助的に用いる。

服用上の注意
1)本方は脱水には禁忌である
2)熱証を呈するものには適さない。
3)気虚・陽虚による痰飲には適切な配慮が必要である。

出典 『傷寒論』、 『金匱要略』
1)脈浮、小便不利、微熱、消渇の証。(『傷寒論』太陽病中篇)
2)中風、発熱し、解せずして煩し、表裏の証あり、水逆を発する証。(『傷寒論』太陽病中篇
3)霍乱(吐瀉病)、頭痛、発熱し、身疼痛し、熱多くして水を飲まんと欲する証。(霍乱病篇)

気血水:水と気が主体。
六病位:少陽病。
脈・舌・脈、浮、浮滑。下苔は白滑、あるいは白賦。

勿誤薬室方函口訣
五味猪苓散と称す。後世之を省略し、五苓散と呼ぶに至れりという。(奥田謙藏)
五苓散を多数例の頭痛に適用して効果を確認したが、
慢性頭痛ということであれば症例を選ばず用いてよく、
なかでも女性に効きがよいという印象である。(矢数道明)



病名・病態・効能・効果
口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔い、急性胃腸カタル、
下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病。
 
漢方医学的適応病態
1)水湿野表証(太陽病蓄水証)。すなわち、悪風、微熱、尿量減少、口渇するが飲むとすぐに嘔吐するなどの症候。
2)水湿による水様物の嘔吐あるいは浮腫あるいは水様の下痢などで、尿量減少、
口渇を伴い、めまい感、腹部の動悸、身体が重いなどの症状がみられることがある。

構成生薬
沢瀉4、白朮3、茯苓3、桂皮1.5。(単位g)

中医学:利水滲湿・通陽・解表(利水して体内の湿をさばき、温めて、表を発する)。

漢方医薬学湯剤使用経験
瀧野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版
1)感冒・流感・急性腸カタル、消化不良、コレラ・コレラ様吐瀉・小児吐乳等で発熱、下痢、嘔吐、煩渇、利尿減少。
2)胃拡張・胃アトニー・胃下垂・溜飲症・胃液分泌過多症、幽門狭窄等で口渇、嘔吐、胃部振水音、心下部がつかえ小便不利。
3)虚証の黄痘。
4)糖尿病で煩渇小便不利。
5)腎炎・ネフローゼ・膀胱炎・尿毒症・尿閉・心臓不全等で、浮腫、小便不利、煩渇、或いは発熱頭痛、脳症を伴う。
6)てんかん・メニエール氏症候群・日射病・脳水腫等でめまい、昏倒、煩渇小便不利、腹動、口からあぶくを出す等がある。
7)夜尿症で煩渇するもの、咳をすると小便が漏れる。
8)結膜炎・角膜フリクテン・角膜潰瘍・斜視などの眼病で、羞明、充血、閃視飛蚊症等があり、煩渇、小便不利。
9)禿頭・脱毛で肛門また陰部に瘡を生ずる、或いは子宮出血後に起こったもの。

注意)漢方薬「五苓散(ごれいさん)」を2週間服用しても効果に満足できない場合は、大山漢方の調合漢方薬(オーダーメイド)をお勧めします!
大山漢方堂薬局に、一度、お電話ください。0283-22-1574(大山漢方で、イゴ・不安・ナシ)






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<漢方薬のご服用をお考えの皆様へのお願い!>

*漢方薬のご服用に関しましては、
「使用上の注意」をよく読み、「用法・用量」をよく守り、適切にご服用ください。

また、今回、始めて、漢方薬のご服用を希望されるお客様は、
下記、問診表に必要事項を記入して送信するか、

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症状・体質を詳しくお伺いした上で、適切な漢方薬をアドバイスさせて頂きます。

(大山漢方薬局 / 無料漢方相談電話 0283-22-1574 / 9:00〜19:00)

<注意>
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以上、よろしくお願い致します。

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漢方薬:五苓散(ごれいさん) 《傷寒論》
患者のタイプ:中間証(体力中程度の人)
使用目的:口渇、排尿量・回数異常があり、ときに浮腫、悪心、嘔吐、頭痛、めまい、下痢、腹痛、発熱などの症状を伴うもの。
心窩部に振水音を認めることも多い。
適応症:浮腫、ネフローゼ、尿毒症、腎炎、腎盂炎、二日酔い、乗物酔い、悪心、嘔吐、めまい、頭痛、暑気あたり、
日射病、胃下垂、偏頭痛、三叉神経痛、メニエール症候群、てんかん、胆石症、急性・慢性肝炎、結膜炎など。
構成生薬:沢瀉5.0、蒼朮・猪苓・茯苓各3.0、桂枝2.0
本方は表に邪熱があって、裏に停水のあるものを治す効があり、口渇と尿利の減少を目標にして、諸種の疾患に用いられる。
また、水逆の嘔吐も、本方の目標である。水逆の嘔吐は、口渇と尿利の減少があって、水をのむとすぐに吐出し、また水をのみ、また水を吐くというものをいう。
熱のある場合では脈が浮数となり、汗は出ない。五苓散をのむと、尿利がつき、発汗して解熱する。
水逆の嘔吐も、五苓散をのむと嘔吐がやみ、尿が出るようになる。
本方の沢瀉、猪苓、茯苓、朮は何れも体液の調整剤で、胃腸内の停水を去り、尿利をよくして浮腫を去る。
沢瀉、猪苓は口渇を治し、茯苓とともに鎮静の効があり、桂枝は表熱を去り、気の上衝を治し、他薬の尿利の効を助ける。
本方は感冒その他の熱のある病気で、口渇、尿利の減少のあるもの、
ネフローゼ、腎炎、心臓病、急性胃腸炎、陰嚢水腫、クインケの浮腫などに用いられる。

適応症
1)水湿の表証(太陽病蓄水証):悪風・微熱・尿量減少・口渇するが飲むとすぐに嘔吐するなどの症候で、舌苔は白・脈は浮滑。
2)水湿による水様物の嘔吐あるいは浮腫あるいは水様の下痢などで、尿量減少・口渇をともない、
目まい感・腹部の動悸・身体が重いなどの症状がみられることもある。舌苔は白滑あるいは白膩・脈は滑。

中医処方解説
水湿による尿量減少・口渇に対する代表処方である。
利水の茯苓・猪苓・沢瀉・白朮と、通陽の桂枝で構成されている。
「水湿」とは、水分の排泄あるいは吸収の障害による一連の症候である。
嘔吐は、主に胃の吸収障害による溜飲の存在(腹壁をたたくとジャブジャブと音を発することでわかり、
これを「振水音」という)によっておこり、胃内圧が高まると水様物を吐すのであるが、一般に悪心をともなうことが少ない。
これを「水逆」の嘔吐ともいう。水様の下痢は、腸管での吸収障害によって発生し、腹痛・裏急後重などをともなうことは少ない。
浮腫は、腎臓での排泄障害や血液量増大にともなう等張性のもの。
あるいは血管運動神経性と考えられる。この場合には動悸・目まい感・身体が重いなどの症候をともなう。
なお重要なことは口渇と尿量減少で、これは脱水によるものではなく水分の偏在と考えるとよい。
すなわち、口渇と尿量減少があるにかかわらず、胃内に溜飲がみとめられたり腸で水様のグル音が発生したりすることから、
体内には水分が過剰に存在しながら、吸収障害により有効な血中成分として機能系にとりこまれていないものと推定できる。
以上のように、同じ水湿であってもさまざまな病理変化が混在しているのである。
「蓄水証」については、ふだんから水湿の症候をもっているものが感冒に罹患し、発熱反応とともに胃腸の機能失調がおこり、
水湿の症候が表面化するものと考えられる。 淡滲利水の茯苓・白朮・沢瀉・猪苓は、いずれも利尿作用をもち、
猪苓・沢瀉・白朮は水分・Na・K・Cl・尿素などの排出を増し、尿細管の再吸収を抑制するとされている。
茯苓は鎮静作用をもち、正常の状態では余り利尿効果はない。
臨床的な観察から、白朮・茯苓などは浮腫や溜飲をのぞいたり下痢を止める効果があり、結果的に利尿を示すところから、
何らかの作用機序によって消化管や組織の過剰水分を血中にひきこみ、これを腎臓に送ることによって尿量を増大させるものと考えられる。
なお、白朮・茯苓は、栄養分をふくみ消化吸収を高める作用があるため、補脾薬として用いられ、脾虚が原因で生じる水腫・痰飲・下痢などには必ず配合される。
一方、猪苓・沢瀉は、主に尿細管での再吸収を抑制してやや積極的な利尿作用をもつが、正常な水分を排泄するほど強力な利尿剤とは認めがたい面がある。
桂枝には軽度の利尿作用があるが、主に血管を拡張して血行を促進しかつ吸収を高めることによって、利水薬の効果をつよめる(これを「通陽」と呼ぶ)。
また感冒の初期には、体表血管を拡張して発汗させ解熱する。
以上のように、本方は主として消化管や組織の余剰の水分を血中にひきこむことによって利尿し、同時に口渇・下痢・浮腫・溜飲などを緩解するものである。
それゆえ、脱水には用いるべきではない。 ただし、暑中での発汗過多や二日酔いなどでみられる軽度の脱水症状で、
はげしい口渇があり水を多量に飲むにかかわらず腹が脹って口渇が癒えない状況は、やはり吸収障害が関与しており、
本方を服用することにより水分が有効に血中に入って症状の緩解が得られるので応用するとよい。
悪風・微熱などの表証がないときには、桂枝をのぞいてよい(四苓散《明医指掌》)。
表証とともに浮腫がみられる風水証には、麻黄・石膏などを配合するほか越脾湯と併用する。
食欲不振・疲労感・元気がないなどの気虚の症候をともなうときは、白朮を増量し黄耆を加える。
冷え・寒けがつよいときには、桂枝を肉桂にかえ乾姜・附子などを配合する。あるいは真武湯・実脾飲などに変方する。

漢薬の臨床応用
急性胃腸炎・周期性嘔吐症・仮性コレラ・クインケ浮腫・寒冷じんましん・急性腎炎の初期・陰のう水腫などで、水湿を呈するもの。
あるいは肝硬変の腹水・ネフローゼ症候群・慢性腎炎などの水腫に対して補助的に用いる。

服用上の注意
1)本方は脱水には禁忌である
2)熱証を呈するものには適さない。
3)気虚・陽虚による痰飲には適切な配慮が必要である。

出典 『傷寒論』、 『金匱要略』
1)脈浮、小便不利、微熱、消渇の証。(『傷寒論』太陽病中篇)
2)中風、発熱し、解せずして煩し、表裏の証あり、水逆を発する証。(『傷寒論』太陽病中篇
3)霍乱(吐瀉病)、頭痛、発熱し、身疼痛し、熱多くして水を飲まんと欲する証。(霍乱病篇)

気血水:水と気が主体。
六病位:少陽病。
脈・舌・脈、浮、浮滑。下苔は白滑、あるいは白賦。

勿誤薬室方函口訣
五味猪苓散と称す。後世之を省略し、五苓散と呼ぶに至れりという。(奥田謙藏)
五苓散を多数例の頭痛に適用して効果を確認したが、
慢性頭痛ということであれば症例を選ばず用いてよく、
なかでも女性に効きがよいという印象である。(矢数道明)

病名・病態・効能・効果
口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔い、急性胃腸カタル、
下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病。
 
漢方医学的適応病態
1)水湿野表証(太陽病蓄水証)。すなわち、悪風、微熱、尿量減少、口渇するが飲むとすぐに嘔吐するなどの症候。
2)水湿による水様物の嘔吐あるいは浮腫あるいは水様の下痢などで、尿量減少、
口渇を伴い、めまい感、腹部の動悸、身体が重いなどの症状がみられることがある。

構成生薬
沢瀉4、白朮3、茯苓3、桂皮1.5。(単位g)

中医学:利水滲湿・通陽・解表(利水して体内の湿をさばき、温めて、表を発する)。

漢方医薬学湯剤使用経験
瀧野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版
1)感冒・流感・急性腸カタル、消化不良、コレラ・コレラ様吐瀉・小児吐乳等で発熱、下痢、嘔吐、煩渇、利尿減少。
2)胃拡張・胃アトニー・胃下垂・溜飲症・胃液分泌過多症、幽門狭窄等で口渇、嘔吐、胃部振水音、心下部がつかえ小便不利。
3)虚証の黄痘。
4)糖尿病で煩渇小便不利。
5)腎炎・ネフローゼ・膀胱炎・尿毒症・尿閉・心臓不全等で、浮腫、小便不利、煩渇、或いは発熱頭痛、脳症を伴う。
6)てんかん・メニエール氏症候群・日射病・脳水腫等でめまい、昏倒、煩渇小便不利、腹動、口からあぶくを出す等がある。
7)夜尿症で煩渇するもの、咳をすると小便が漏れる。
8)結膜炎・角膜フリクテン・角膜潰瘍・斜視などの眼病で、羞明、充血、閃視飛蚊症等があり、煩渇、小便不利。
9)禿頭・脱毛で肛門また陰部に瘡を生ずる、或いは子宮出血後に起こったもの。

注意)漢方薬「五苓散(ごれいさん)」を2週間服用しても効果に満足できない場合は、大山漢方の調合漢方薬(オーダーメイド)をお勧めします!
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tsumura

漢方薬がわかる本

目次

T ステップ1,2,3で「困った」を解決してみる

かゆい
だるい
食欲がない
眠れない
肩がこる
冷える
咳が長引く
風邪をひきやすい
風邪をひいてしまったら
手足がしびれる
認知症に伴う周辺症状/お年寄りの諸問題

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9 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
10 麦門冬湯(バクモンドウトウ)


22)大建中湯(だいけんちゅうとう)=腸の問題はこれで解決!腹痛、腹部膨満感、術後イレウスによい漢方薬!
出典『金匱要略』
●心胸中大寒痛し、嘔して飲食すること能わず、腹中寒え、上衝し、皮起こり、出で見れ、頭足有りて上下し、痛みて触れ近づくべからざる証。(『金匱要略』腹満寒疝宿食病篇)

腹候
腹力は中等度以下だが、腹力によらずに適用される。軟弱無力で大腸の蠕動がみえるような場合もあり、ガスで張り気味に場合もある。

気血水
気が主体だが気血水いずれとも関わる。

六病位
太陰病。

脈・舌
脾胃虚寒の疝痛であれば、舌質は淡白、あるいは青紫、舌苔は白滑。脈は沈弦あるいは遅。脾胃実寒の疝痛であれば、舌質は青紫、脈は沈弦あるいは遅。

口訣
●本方は、出しぶるような弛緩性下痢にも、兎糞状の硬い便にも有効なことがある。腸の蠕動亢進はていねいに問診すれば必発である。(藤平健)
●下から上へムクムク持ち上がるような腹痛によい。(浅田宗伯)
●本方を服用後、空咳を増したり、浮腫を生ずる場合は用量を減ずるか、半夏厚朴湯、五苓散、真武湯などに転方する。(『現代漢方治療の指針』)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの。
b 漢方的適応病態
1)脾胃虚寒の疝痛。すなわち、平素から元気がない、食欲不振、腹が張る、手足や腹の冷えなどの脾胃虚寒の症候があり、寒冷刺激などに誘発されて激しい腹部疝痛発作が生じ、腹壁が弛緩したものでは腸蠕動が望見できるもので、悪心、嘔吐を伴うこともある。
2)脾胃実寒の疝痛。すなわち、寒冷の環境や飲食物などで急激に発生する腹部疝痛で、普段虚弱症候を伴わないもの。

構成生薬
蜀椒2、乾姜5、人参3、膠飴。(単位g)

TCM(Traditinonal Chinese Medicine) 的解説
温中散寒・解痙止痛・補気健脾。

効果増強の工夫
1)腹痛伴う下部消化管通過障害には小建中湯としばしば合方される。
 処方例) ツムラ大建中湯 10.0g
       ツムラ小建中湯 10.0g 分2食前

2)冷えと痛みが激しいときは附子を加味。
処方例) ツムラ大建中湯        15.0g
      ブシ末(調剤用)「ツムラ」  1.5g  分3食前

3)下痢があれば合人参湯。
処方例) ツムラ大建中湯 10.0g
      ツムラ人参湯    5.0g 分2食前

4)腹満が強ければ半夏厚朴湯を合方。

本方で先人は何を治療したか?
 龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)腸疝痛・蛔虫・条虫・急性慢性虫垂炎・限局性腹膜炎・ダグラス氏窩膿瘍・腸閉塞症・慢性腸狭窄・腎臓結石・胆石症・膵臓炎等で腹痛腸蠕動不安、腹鳴し、或は腹満嘔吐を伴うもの。
2)胃腸無力症・内臓下垂・尿道痛・不眠・前記疾患等で腹壁軟弱、腸の蠕動不安、足冷があるもの。
3)乳不足で、2)の腹証があるのを治した例がある。
4)爪反り腹痛するものを治した例がある。
5)食道狭窄で胃部の重圧膨満感、呑酸、そう囃、●気、悪心、涎沫等のもの、2)の腹証を呈するのを治した例がある。
6)子宮後屈、流産癖で、2)の腹証を呈するものを治した例がある。
7)眩暈、胃部振水音、頭重、悸、呑酸、そう囃等を治した例がある。








23)芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)=足がつるなど、筋肉のけいれんによい漢方薬!
出典『傷寒論』
●傷寒脈浮に、自汗出で、小便数に、心煩し、微悪寒し、脚攣急するに、反つて桂枝を与えて、その表を攻めんと欲するは、これ誤りなり。之を得てすなわち厥し、咽中乾き、煩躁し、吐逆する者は、甘草乾姜湯を作りて之を与え、以てその陽を復す。もし厥いえ、足温まる者は、さらに芍薬甘草湯を作りて之を与うれば、その脚即ち伸ぶ。(太陽病上篇)

腹候
腹力によらず適用可能である。腹直筋の拘攣している場合が多いが、それが無くとも症状のみで適応してよい。

気血水
気血が主に関係する。

六病位
太陰病。

脈・舌
舌候はさまざまで一定せず。脈は、痛みから弦であろう。

口訣
●ありとあらゆる痛みに、一度は適用してみること。(道聴子)

本剤が適応となる病名・病態
a保険適応病名・病態
効能または効果
急激におこる筋肉の痙攣を伴う疼痛。

b漢方的適応病態:平滑筋、骨格筋の痙攣性疼痛に頓服として用いる。末梢性の鎮痙、鎮痛以外に中枢性の鎮静作用も有する。中医学的には筋の痙攣は肝の機能失調によると考えられており、この鎮静、鎮痙、鎮痛作用を「平肝」とよぶ。なお、白芍、炙甘草ともに滋養強壮作用があり、身体を養栄、滋潤する。(『中医処方解説』)

より深い理解のために 横紋筋、平滑筋、いずれも治療可能なところに注目。

構成生薬
甘草6、芍薬6。(単位g)

より深い理解のために 使用上の注意として、7.5gの常用量中に甘草6gを含むことから治療上必要な最短期間の投与にとどめることが大切である。

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
平肝・解痙止痛。

効果増強の工夫
鎮痛効果を増すために、附子を加味する。附子の働きは温裏きょ寒で、血管拡張、血行促進の効能をもち、かつ鎮痛作用がある。芍薬甘草湯証で寒証を呈するものに適用される。
 処方例)ツムラ芍薬甘草湯  7.5g
      ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.5g  分3食間

本方で先人は何を治療したか?
龍の一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)脚気・腓腸筋痙攣・筋肉リュウマチ・眼病・舌強直・寝違え等で痙攣様にすじがつれるもの。
2)胃痙攣・腸疝痛・嵌頓ヘルニヤ・イレウス・胆石発作・膵臓炎等急性腹症と云われる発作性の腹痛で、腹壁が痙攣様につれて堅くなっているもの。
3)小児の夜啼きで腹筋が攣急するもの。
4)下肢無力症、脚弱。
5)咳を発して放屁するものを治した例がある。
6)気管支喘息で、呼吸困難や劇しい咳のために筋肉に力を籠めているもの。
7)歯痛で腹筋ひきつるものを治した例がある。

ヒント
 本方はその成り立ちからも頓用かあるいは短期間の使用にとどめるべき薬方である。理由はいうまでもなく、甘草を1日量として多く含むために、偽アルドステロン症を発症しやすいからである。
 ここに興味深い臨床研究論文がある。熊田卓、熊田博光、与芝真ほか、TJ−68ツムラ芍薬甘草湯の筋痙攣(肝硬変に伴うもの)に対するプラセボ対照二重盲検群間比較試験、臨床医薬 15(3):499−523、1999である。本論文は、肝硬変症例におけるこむら返りに対する芍薬甘草湯の効果をプラセボコントロールで示したものである。このトライアルでは、ツムラ芍薬甘草湯7.5gを分3で連日14日用いているが、実薬65例中5例の為アルドステロン症が発症したと記されている。いずれも服薬中止のみで治癒したとのことであった。
 甘草に由来する為アルドステロン症の発生頻度を知る上で貴重な記録ということができる。



24)葛根湯(かっこんとう)=風邪のひきはじめ、肩こりなどに、すぐ効く漢方薬!
出典 『傷寒論』、『金匱要略』
(1)太陽病、項背こわばることシュシュ、汗なく、悪風する証。(『傷寒論』太陽病中篇)
解説 シュシュを、几几とする見方もあり、その場合はキキと音読する。シュシュは、短羽の鳥の飛び立つときの首を前傾させる様子をいい、几几は硬く強ばる状態を指す。ともに葛根湯の「項背強」の状態を形容したものとみなされる。
(2)太陽と陽明との合病、自下利する証。(同上)
(3)太陽病、汗なく、小便反って少なく、気、胸に上衝し、口噤みて語るを得ざる証。(『金匱要略』しつ湿渇病篇)

腹候
急性病初期では脈が重要とされ、腹候は考慮しない。慢性疾患では、腹力中等度かそれ以上(2−4/5)。葛根湯症は一般に筋緊張の傾向が認められる。

気血水
気が主体の気血水。

六病位
太陽病。

脈・舌
脈浮実数。太陽病では舌候の変化は原則としてない。

口訣
●首から上の症状には葛根湯を考慮。(道聴子)
●急性熱性の首の張る状態に用いるのは誰もが知っているが、古方の常として応用範囲の広いことはいうまでもない。(浅田宗伯)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん。
b 漢方的適応病態
表寒・表実。

構成生薬
葛根4、大棗3、麻黄3、甘草2、桂皮2、芍薬2、生姜2。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
辛温解表・生律・舒筋(辛温解表・舒筋)。

より深い理解のために  本方が日本で広く用いられる理由としては、薬味構成から麻黄湯と桂枝湯の中間の効果とされ第一選択としやすいこと、また、葛根が辛凉解表の効果をもつところから、表熱(悪寒を伴わない急性発熱で温病などが考えられる。すなわち、葛根湯そのままでは辛温解表剤(傷寒、中風に適応)にも、辛凉解表剤にもなる(石膏を加味すればさらによい)という考え方である。

効果増強の工夫
方関節周囲炎などの治療には、附子を加えると一層有効である。
 処方例)ツムラ葛根湯   7.5g
      ブシ末(調剤用)「ツムラ」  分3食前

本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)感冒・流感・肺炎・麻疹・丹毒・猩紅熱・脳膜炎・日本脳炎・リンパ腺炎・扁桃腺炎・中耳炎などで、発熱悪寒頭痛、項背部がこるもの、あるいは軽咳、あるいは軽咽頭痛などを伴ってもよい。
2)肩こり・四十肩・五十肩・高血圧症による肩や首のこり、首が回らぬもの・腰痛・関節リウマチなどで実証で腹部に変化なきもの。
3)破傷風初期・小児ひきつけ・脊髄空洞症などで項背強急するもの。
4)口が開かぬものを痙病と見て治して例がある。
5)トラコーマ・結膜炎・眼瞼炎・網膜炎・虹彩炎・急性球後視神経炎などの眼病で、頭痛項背強ばるもの、ただし下剤の証がないもの。
6)副鼻腔蓄膿症・鼻炎・肥厚性鼻炎などで頭痛項背強ばるもの。
7)気管支喘息で表実頭痛または項背がこるもの。
8)皮膚炎・失神・じん麻疹などで、発赤強く分泌のない表証のもの。
9)フルンケル・カルブンケル・面疔・背癰・皮下膿瘍・筋炎などで発熱頭痛または悪寒などの表証のあるもの。
10)急性腸炎・急性大腸炎で発熱頭痛または悪寒など表証があるもの。
11)夜尿症を治した例がある。
12)乳児の無声を治した例がある。










25)補中益気湯(ほちゅうえっきとう)=低下した気力、体力を補い、免疫能を高める漢方薬!
出典 李東垣著『内外傷弁惑論』
『弁惑論』の記述はやや要領を得ないので、後世の『万病回春』を引用する。
●中気不足し、あるいは誤りて剋伐し(誤って強い薬を服し)、四肢倦怠、口渇き発熱して、飲食味なく、あるいは飲食節を失し、労倦身熱くし、脈洪大にして力なく、あるいは頭痛悪寒自汗し、あるいは気高くして喘し、身熱して煩し、脈微細軟弱、自汗、体倦食少なく。あるいは中気虚弱にして血を摂むること能はず。あるいは飲食労倦して瘧痢等の症を患い、脾胃虚するに因り愈えること能わざる者を治す。(『万病回春』補益門)

腹候
腹力、中等度かそれ以下。ときに胸脇苦満や臍上悸を認める。

気血水
気血水いずれも関わる。

六病位
少陽病。

脈・舌
中気下陥・清陽不升では、脈は虚大。舌質は淡紅〜淡白。気虚の発熱では、脈は洪大で、沈取すると無力。舌質はやや紅、苔は白。

口訣
●小柴胡湯の虚状を帯ぶるものに用ゆべし。(浅田宗伯)
●津田玄仙(1737-1809)は八つの目標を示した。手足倦怠。言語軽微。脈に勢いがない、口中白沫、食味がない、熱物を好む、臍にあたって動悸、脈散大で力なし。(『療治茶談』)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症。

b 漢方的適応病態:脾胃気虚の次の症候
1)中気下陥・清陽不升。すなわち、元気がない、疲れやすい、四肢がだるい、動作がおっくうである、立ちくらみ、頭の鈍痛、眠くなる(特に食後)、頭がボーっとする、汗をかきやすい、息切れ、便秘あるいは泥状〜水様便などの症候、あるいは胃アトニー、遊走腎、脱肛、子宮脱、ヘルニアなど。

2)脾不統血(気不摂血)。すなわち、脾胃気虚の症候とともに生じる少量かつ間欠的に持続する出血で、下半身や皮下の出血が多い。婦人では月経周期の短縮や過多月経が生じ、経血はうすいことが多い。

3)気虚の発熱。すなわち、慢性に繰り返す微熱で精神的、肉体的に労に伴って発生する。頭痛、悪寒、自汗などがみられることもある。

構成生薬
人参4、白朮4、黄耆4、当帰3、陳皮2、大棗2、柴胡2、甘草1.5、生姜0.5、升麻1(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
 補気健脾・升陽拳陥・甘温除熱。

より深い理解のために 補気作用とは抗うつ作用を含むものと考えられる。

効果増強の工夫
人参の増量(2〜3gを加味)、少量の附子を加味するなどがある。
全身倦怠感などの改善に、腎虚があれば六味丸や八味地黄丸とごうほうするのはよい手段である。
 処方例) ツムラ補中益気湯 5.0g
       ツムラ六味丸    5.0g  分2食前

本方で先人は何を治療したか?

●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
結核症・夏やせ、病後の疲労・虚弱体質改善・食欲不振・虚弱者の感冒・痔疾・脱肛・子宮下垂・胃下垂症・陰萎・半身不随・多汗症・風邪ひきやすき者・虚弱児体質改善等。
●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
疲労状態、夏やせ、感冒。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
胃アトニータイプの者のカゼが長引いて微熱や痰や盗汗のとれない場合。同様な体質者の肋・腹膜炎、肺結核、慢性副鼻腔炎。虚弱者の痔核、脱肛。胃腸の弱い虚弱者の病後や術後の体力回復。低血圧症。











26)六君子湯(りっくんしとう)=食欲不振によい漢方薬!

出典 げん廷腎著『万病回春』
●脾胃虚弱、飲食少しく思ひ、或は久しく瘧痢を患ひ、若くは内熱を覚え、或は飲食化し難く、酸を作し、虚火に属するを治す。須らく炮姜を加えて其効甚だ速かなり。(補益門)

腹候
腹力中等度以下(1-3-5)。胃内停水を認める。

気血水
気と水が主体。

六病位
少陽病。

脈・舌
舌質は淡白で胖大、舌苔は白滑、白厚膩。脈は軟滑、滑弱。

より深い理解のために
本方は気の不足を補って、胃腸機能を高め、水滞をさばき、補中益気湯の弟分といった趣の漢方である。元気になるとうつ状態も改善される。

効果増強の工夫
 六君子湯は多くの方剤に含まれ、その薬効の中心部分を構築している。六君子湯を分解すると、四君子湯と二陳湯になる。補気が必要であれば、少量(たとえば2,5gほど)の四君子湯を合わせることもあり得る。胃内の水のさばきを重視すれば、少量の二陳湯を追加する場合もあるであろう。そのようにして患者の病態に合わせていくのである。

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
慢性胃炎・胃下垂症・胃アトニー症等に用いられ、また慢性腹膜炎・胃癌・胃潰瘍・消化不良症・自家中毒症・食欲不振・虚弱者の胃腸型感冒・嘔吐・悪阻・神経衰弱症・肩こり・虚弱者や老人、脳溢血患者の養生薬に応用される。

●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
四君子湯の証で胃液分泌過多あるもの、胃弱、胃液分泌過多、胃下垂。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
胃アトニー、胃下垂、慢性胃炎。慢性下痢のある場合には四君子湯がよい。

ヒント
 六君子湯は補気利水の代表薬である。癌の術後などに十全大補湯が用いられるが、地黄の味が口につき、胃もたれして服用しにくくなったと訴える患者も少なくない。そのようなときには、百々漢陰のいうように六君子湯に換えることがある。これは今風にいえば、患者のQOLを重視した治療である。
 百々漢陰のような先人があったことを、われわれは誇りにしてよいことである。









27)抑肝散(よくかんさん)=イライラ、怒りやすい、不眠によい漢方薬!
18)抑肝散(よくかんさん)=認知症の患者さんによい漢方薬!

出典 薛鎧・薛己(父子でセツガイ・セツキと読む)著『保嬰撮要』
 ●肝経の虚熱、ちくを発し、あるいは発熱咬牙、あるいは驚悸寒熱、あるいは木土に乗じて嘔吐痰涎、腹脹食少なく、睡臥不安なるものを治す。(急驚風門)

腹候
 腹力中等度以下。腹直筋の拘攣を認める。

気血水
 気血水いずれにも関わる。

六病位
 少陽病。

脈舌
 原則的に、舌質はやや紅、舌苔は白、脈は弦細軟。

口訣
 ●(本方を用いる時は)怒りはなしやと問うべし。(目黒道琢)。
 ●この方を大人の半身不随に用いるのは和田東郭の経験である。(浅田宗伯)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症。

b 漢方的適応病態
気血両虚の肝陽化風。すなわち、いらいら、怒りっぽい、頭痛、めまい感、眠りが浅い、頭のふらつき筋肉の痙攣やひきつけ、手足のふるえなどの肝陽化風の症候に、元気がない、疲れやすい、食が細い、皮膚につやがない、動悸、しびれ感などの気血両虚の症候を伴うもの。(『中医処方解説』)

より深い理解のために
五臓の肝と胆の機能を考えよう。肝胆の機能は、「情報の処理と決断」である。

構成生薬
 蒼朮4、茯苓4、川きゅう3、釣藤鈎3、当帰4、柴胡2、甘草1.5。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
 平肝熄風・補気血(平肝鎮驚・理気和胃)。

効果増強の工夫
 1)ふるえ、ふらつきなど風動の症候が強ければ、
 処方例)ツムラ抑肝散  7.5g
      ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯 5.0g(1-0-1) 分3食前

2)いらいら、のぼせ、ほてりなど肝火の症候が強ければ牡丹皮、山梔子などを加える目的で、
 処方例)ツムラ抑肝散  5.0g
      ツムラ加味逍遥散 5.0g 分2朝夕食前

3)悪心、嘔吐、腹分膨満感などの症状と、舌苔が白膩で、痰湿の症候を伴う時は、陳皮、半夏を配した抑肝散加陳皮半夏とする。
   処方例)ツムラ抑肝散加陳皮半夏  7.5g 分3食前

本方で先人は何を治療したか?

 ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
 癇症・神経症・神経衰弱・ヒステリー等に用いられ、また夜啼・不眠症・癇癪持ち・夜の歯ぎしり・癲癇・不明の発熱・更年期障害・血の道症で神経過敏・四肢衰弱症・陰萎症・悪阻・佝僂病・チック病・脳腫瘍症状・脳出血後遺症・神経性斜頸等に応用される。
 ●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
 痙攣、動悸、或は発熱、或は寒熱、或は嘔吐痰涎、腹脹、食欲不振、不眠のもの、或は左直腹筋緊張、心下部つかえ、四肢拘攣、或は麻痺、不眠、腹動、怒気あるもの。
 ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
 パーキンソン病、脳出血後のふるえ、乳幼児のひきつけ、夜驚症、眼瞼痙攣、神経性斜頸、歯ぎしりなど。

ヒント
 怒りを外に表す患者への適応は容易だが、現代の日本人は怒りを内に秘めており、そのあまり自分が怒っていることすら自覚しない例がある。「怒り」の有無を丁寧に問うことが本方を活用する鍵であり、症例は以外に多い。メンタルヘルス外来管理の要薬の1つといってよい。










28)牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)=お年寄りの頻尿改善によく効きます!下半身のしびれや痛みにもよいです!

出典 厳用和著『済生方』
●腎虚、腰重く、脚腫れ、小便不利するを治す。

腹候
腹力中等度前後。臍下不仁あり、ときに腹直筋の緊張を認める。

気血水
水主体の気血水。

六病位
太陰病。

脈・舌
脈は沈、尺脈が弱。舌質は、淡白、湿潤。(八味丸に準ずる)

口訣
●この方は、八味丸の証にして、腰重脚腫あるいは、痿弱するものを治す。(浅田宗伯)
●この方は金匱の腎気丸とあれども、即ち、今言うところの牛車腎気なり。目的とするところは、脾腎二蔵の虚にして、小水の通じ悪しく、腹は脹り、腰より下にも水気あるものなり。(浅井貞庵)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
つかれやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少、または多尿で時に口渇のある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、むくみ。

b 漢方的適応病態
腎陽虚の水腫。すなわち、八味地黄丸の症候に、下半身の水腫を伴うもの。

構成生薬
地黄5、牛膝3、山茱萸3、山薬3、車前子3、沢瀉3、茯苓3、牡丹皮3、桂皮1、附子1。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
 温補腎陽・利水。

効果増強の工夫
食欲不振、疲れやすい、泥状から水様便など脾胃気虚の症候がみられるときには、六君子湯を合方する。

処方例) ツムラ牛車腎気丸 5.0g
      ツムラ六君子湯   5.0g  分2食前

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
八味地黄丸の作用をさらに増強させてもの。腰痛著しく小便不利のもの。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
八味丸を用いた場合で、尿量減少や浮腫のあるもの。老人性腰痛や糖尿病生神経障害にはことに適している。

ヒント
 牛車腎気丸は『金匱要略』の八味地黄丸に牛膝と車前子を加えたものであるので、八味地黄丸とその効能はほぼ重なると考えてよいであろう。ここに著者の師匠である藤平健先生の八味地黄丸による白内障治療の論稿を、部分的に引用することをお許しいただきたい。八味地黄丸というと、どうしても藤平先生の御功績を語らないわけにはいかないのである。
 せんせいは老人性白内障に八味地黄丸を病名投与した284例の結果をまとめて、視力の上昇が54.6%、不変26.8%、低下18.6%であったことを日本東洋医学会誌上で明らかにされた。半数を超える眼で視力が改善し、1/4以上で進行が停止するという結果であった。
 著者が大変興味深く拝読したのは、それに続く先生の文章である。
 『さて「証に随わずに」老人性白内障という病名だけによって八味丸を投与した私の成績が、「証に随って」漢方(もっともその大部分は八味丸なのであるが)を投与した小倉氏の例と、さほど大きな差がないということは、老人性白内障の場合は、その診断がついただけで、ほとんど証を考慮することなく、一律に八味丸を投与しても大過がないのだということを物語っているのではないであろうか。これを逆に言うと、八味丸の証を構成する一要因に老人性白内障という一項目を加えても、必ずしも悪くはないのではなかろうか。このことはまた、漢方の証を構成する要因の中に、西洋医学的な病名、検査成績などが、今後、次ぎ次ぎと組み入れられる余地のあることを示唆するものであると思う。』
 今日の洋漢渾然となった医療状況を見越したような言葉である。随証施治をあれほど心がけられた藤平健先生の言葉であるからこそ、発せられて30数年度の今日もなお千金の重みを持って感ぜられるのである。





29)加味逍遥散(かみしょうようさん)=更年期の女性、いつも不安や不満があり、焦りを感じているタイプによいです!

出典 『和剤局方』
血虚労倦、五心煩熱、肢体疼痛、頭目昏重、心松煩赤、口燥咽乾、発熱盗汗、減食嗜臥、及び血熱あい打ち、経水調わず、臍腹脹痛、寒熱痛の如くなるを治す。また室女血弱、陰虚して栄衛和せず、痰嗽潮熱、肌体●痩、漸く骨蒸と成を治す。(和剤局方、婦人諸疾門逍遥散条)
(貧血倦怠、あちこちの熱感、身体疼痛、頭重めまい、頬赤くのぼせ、口のど乾き、発熱ねあせ、食思不振で臥せがち、月経が不順、腹痛したりする、のぼせたり冷えたりを治す。 また未婚の女子、婦人科の不調により体調わるく、痰あり、咳あり、やせ細り、次第に慢性の熱病となるを治す。)

腹候
腹力中等度かそれ以下(2−3/5)。胸脇苦満を認めることがある。

気血水
気血水いずれにも関わる。

六病位
小陽病。

脈・舌
舌質は紅、舌苔は黄。脈は弦細数。

口訣
●老医の伝に、大便秘結して朝夕快く通せざると云ふもの。何病に限らずこの方を用いれば、大便快通して諸病も治すと云う。(浅田宗伯)
●婦人いっさいの申し分に用いてよくきく。いまより十数年前は、世間の医者は、婦人の病というとほとんどこの方を用いた。男子でも癇癪持ちに適する。(百々漢陰)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症(一般的に男性にも保険上の適用が認められている。病名は不定愁訴などで可である)。
b 漢方的適応病態
逍遥散は肝気鬱結・血虚・脾虚に適応される。加味逍遥散は、これに牡丹皮、山梔子の適応状態が加わったもの。

より深い理解のために  肝気鬱結とは、ゆううつ感、いらいら、怒りっぽい、頭痛、胸脇部が張って苦しい、脇の痛み、腹痛などをいう。血虚の症候とは、頭がふらつく、頭がボーッとする、目が疲れる、四肢がしびれる、皮膚につやがない、動悸、眠りが浅い、多夢などをいう。脾虚とは、食欲がない、疲れやすい、倦怠感、浮腫、下痢傾向、あるいは下痢便秘の交代などの症候をいう。月経については、不定な周期、過少月経、無月経など。

構成生薬
柴胡3、芍薬3、蒼朮3、当帰3、茯苓3、山梔子2、牡丹皮2、甘草1.5、生姜1、薄荷1.(単位g)

TCM(Traditinonal Chinese Medicine) 的解説
疏肝解欝・健脾補血・瀉火・調経(逍遥散に熱証を伴うもの)。

効果増強の工夫
服後の状態からの判断により、瀉肝、清熱、補血のいずれに重点を置くかでさまざまな兼用方、合方がありうる。
例として瀉肝には竜胆瀉肝湯、清熱には黄連解毒湯、補気には四君子湯、補血には四物湯などが考えられる。

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
更年期障害(血の道症)・月経不順・流産や中絶および卵管結紮後に起こる諸神経症状に用いられ、また不妊症・結核初期症候・尿道炎・膀胱炎・帯下・産後口内炎・湿疹・手掌角皮症・肝斑・肝硬変症・慢性肝炎・癇癪持ち・便秘症等に応用される。
●龍野一雄『改訂新版漢方処方集』より
月経不順、血の道症、帯下、ノイローゼ、不眠症、心悸亢進症、気鬱症。以上の状態で熱候または上部に充血症状あるもの。
●桑木崇秀『漢方診療ハンドブック』より
虚証の冷えのぼせ(上熱下寒)、更年期障害、月経不順、指掌角皮症。









30)小青竜湯(しょうせいりゅうとう)=さらさら鼻汁、鼻カゼ、花粉症によいです!眠くならないので安心です!

出典 『傷寒論』
 ●傷寒、表解せず、心下に水け(停水)あり、乾嘔し、発熱して咳し、或は渇し、或は利し、或は噎(むせること)し、或は小便利せず、少腹満し、或は喘す。(『傷寒論』太陽病中篇)

腹候
 腹力中等度よりやや軟。胃内停水を認める。

気血水
 水と気が主体。

六病位
 太陽病。

脈・舌
 脈は、浮緊あるいは滑。舌苔は白潤、あるいは白滑。

口訣
 ●気管支炎にして微熱あり、背部に悪寒を感ずる証。(奥田謙藏)
 ●心下に水飲があって、しかも表の邪が解せず、この水飲動揺によって、諸症状を現わすものである。(矢数道明)

本剤が適応となる病名・病態
a保険適応病名・病態
効能または効果
1)下記疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙。気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒。
2)気管支炎。

b漢方的適応病態
1)表寒による寒痰の喘咳。
2)風水。すなわち、突然発生する全身浮腫と尿量減少で、表証を伴うことがある。

構成生薬
半夏6、甘草3、桂皮3、五味子3、細辛3、芍薬3、麻黄3、乾姜3。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
(別名、温肺化痰湯)辛温解表・温肺化痰・平喘止咳・利水。

効果増強の工夫
 鎮咳作用を強めるために、麻杏甘石湯を合方するという方法がある。
 処方例)ツムラ小青竜湯  6g
      ツムラ麻杏甘石湯  5g 分2食前

本方は、森道伯氏がスペイン風邪(H5NIインフルエンザ)に用いた方剤の1つである。
1)附子末を加味して作用増強。
 処方例)ツムラ小青竜湯  9.0g
       ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.5g 分3食前

2)冷えが強い方のアレルギー性鼻炎や喘息に。
 処方例)ツムラ小青竜湯  9g
      ツムラ二陳湯   7.5g 分3食前

本方で先人は何を治療したか?
 龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
 1)感冒・流感・気管支炎・肺炎等で、発熱咳嗽、或は悪寒頭痛するもの。
 2)気管支喘息・風邪に伴う化関し喘息で、脈浮、喘咳するもの。
 3)気管支拡張症・肺気腫等で、脈浮喘鳴を帯びた咳をするもの。
 4)肺結核で風邪を引き、喘鳴を帯びた咳が多いもの。
 5)急性慢性腎臓炎・妊娠腎・ネフローゼ等で浮腫し、或は発熱、頭痛、悪寒、或は咳するもの。
 6)結膜炎・涙嚢炎その他の眼病で、充血と涙が多いもの。
 7)湿疹・水泡等の皮膚病で、浮腫等の表証があって、或は浮腫状或は分泌が出そうで出ず、掻けば水が出る或は薄い分泌が多いもの。
 8)神経痛・筋肉リウマチ等で脈浮、或は他の表証があり、身体疼重するもの。
 9)老人が咳をしてむせぶもの、百日咳などでむせぶもの。
 10)湿性肋膜炎・肋間神経痛で咳して胸痛し、特に鎖骨上窩にひびくもの。
 11)腹水、小便不利のもの。
 12)膀胱炎で、小便不利、下腹膨満するもの。
 13)胃散過多症・胃液分泌過多症・留飲症・婦人神経症等で、生唾また胃液が口に出てくるもの。
 14)人事不省になり、いびきをかき、口からよだれを流すものを治した例がある。
 15)肛門そう痒で患部が乾燥するものを治した例がある。
 16)副鼻腔蓄膿症・肥厚性鼻炎・慢性アレルギー性鼻炎等で、くしゃみが多いもの、或は鼻塞、眼鼻のあたり浮腫状のもの。







31)麦門冬湯(ばくもんどうとう)=空咳が続いて困っている人に最適の漢方薬です!

出典 『金匱要略』
●大逆、上気、咽喉不利、逆を止め気を下す者、麦門冬湯を主る。(『金匱要略 肺痿肺癰がい嗽上気病篇』)

腹候
腹力は中等度前後(2-4/5)。心下痞ごうをみとめることがある。

気血水
気水が主体の気血水。

六病位
少陽病。

脈舌
肺気陰両虚の場合、舌質は紅で乾燥、舌苔は少ない、脈細数。胃気陰両虚の場合、舌質は紅で乾燥。舌苔は少ないあるいは半載剥苔。脈細数。

口訣
●この方は肺痿、咳唾、涎沫止まず、咽燥した渇する者に用いるが適切である。(浅田宗伯)
●痰の多い患者が服用すると痰は増加する危険あり。歴史的に妊娠咳嗽にもちいられた。(道聴子)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能又は効果
痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支喘息。
b 漢方的適応病態
1)肺気陰両虚。すなわち慢性の咳嗽(咳き込んでなかなか止まず顔が紅潮することが多い)、咽喉の乾燥感と刺激感、少量の粘痰、あるいは無痰、口渇などの肺陰虚の症候と、息切れ、疲れやすいなどの気虚の症候がみられる。
2)胃気陰両虚。すなわち、口渇、咽の乾燥感、乾嘔、吃逆、あい気、食欲不振、便が硬いなどの胃陰虚の症候に、元気がない、疲れやすい、息切れ、などの気虚を伴う。

構成生薬
麦門冬10、半夏5、粳米5、大棗3、人参2、甘草2。(単位g)
より深い理解のために 気の上逆による咽喉不利、のぼせ、顔面紅潮、咽喉の乾燥感、刺激感、連発する積、痰は少なく切れにくい、声が嗄れる。半夏が燥性である以外はすべて滋潤性である。

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
滋陰益気・補気肺胃・降気。

効果増強の工夫
1)血虚を伴う場合に、四物湯合方。
 処方例)ツムラ 麦門冬湯 9.0g
      ツムラ 四物湯   5.0g(1−0−1) 分3食前

2)口腔内乾燥などで腎虚を伴う場合に、八味地黄丸合方。
 処方例)ツムラ 麦門冬湯 9.0g
      ツムラ 八味地黄丸 5.0g(1−0−1) 分3食前

本方で先人は何を治療したか?
 龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
 1)咽頭炎・喉頭炎・肺炎・肺結核・百日咳などで、乾性の咳が赤くなるほど立続けに激しく出て、咽に乾燥感、刺戟感等があり、或は略血することもある。
 2)高血圧症・動脈硬化症・脳出血等でのぼせ感が強く、或は言語渋り或は咽喉不利感を訴えるもの。
 3)咽をつぶし声がかれ、咽に乾燥異常感があるもの、或は老人で食物が咽につまり通りにくいもの。
 4)腎臓結石のようで下腹から腰にかけて不快感があり、劇しく咳するものを治した例がある。
 5)慢性の下利で癇によるものを治した例がある。
 6)産後の喘息で、大便秘結するものに使った例がある。





1)「二日酔い」にすぐ効く漢方薬は、「五苓散」です。
出典 『傷寒論』、 『金匱要略』
1)脈浮、小便不利、微熱、消渇の証。(『傷寒論』太陽病中篇)
2)中風、発熱し、解せずして煩し、表裏の証あり、水逆を発する証。(同上)
3)霍乱(吐瀉病)、頭痛、発熱し、身疼痛し、熱多くして水を飲まんと欲する証。(霍乱病篇)

気血水
 水と気が主体。

六病位
 少陽病。

脈・舌
 脈、浮、浮滑。下苔は白滑、あるいは白賦。

口訣
 ●この方は、もと五味猪苓散と称す。後世之を省略し、五苓散と呼ぶに至れりという。(奥田謙藏)
 ●ご苓散を多数例の頭痛に適用して効果を確認したが、慢性頭痛ということであれば症例を選ばず用いてよく、なかでも女性に効きがよいという印象である。(矢数道明)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
 口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔い、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病。
 
b 漢方的適応病態
 1)水湿野表証(太陽病蓄水証)。すなわち、悪風、微熱、尿量減少、口渇するが飲むとすぐに嘔吐するなどの症候。
 2)水湿による水様物の嘔吐あるいは浮腫あるいは水様の下痢などで、尿量減少、口渇を伴い、めまい感、腹部の動悸、身体が重いなどの症状がみられることがある。

構成生薬
 沢瀉4、白朮3、茯苓3、桂皮1.5。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
利水滲湿・通陽・解表(利水して体内の湿をさばき、温めて、表を発する)。

効果増強の工夫
 附子を加えて利尿効果を増強する
   処方例)ツムラ五苓散  7.5g
        ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.5g
          分3食前

本方で先人は何を治療したか?
 瀧野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
 1)感冒・流感・急性腸カタル、消化不良、コレラ・コレラ様吐瀉・小児吐乳等で発熱、下痢、嘔吐、煩渇、利尿減少するもの。
 2)胃拡張・胃アトニー・胃下垂・溜飲症・胃液分泌過多症、幽門狭窄等で口渇、嘔吐、胃部振水音、心下部がつかえ小便不利するもの。
 3)虚証の黄痘に使った例がある。
 4)糖尿病で煩渇小便不利するもの。
 5)腎炎・ネフローゼ・膀胱炎・尿毒症・尿閉・心臓不全等で、浮腫、小便不利、煩渇、或いは発熱頭痛、脳症を伴うもの。
 6)てんかん・メニエール氏症候群・日射病・脳水腫等でめまい、昏倒、煩渇小便不利、腹動、口からあぶくを出す等があるもの。
 7)夜尿症で煩渇するもの、咳をすると小便が漏れるものに使った例がある。
 8)結膜炎・角膜フリクテン・角膜潰瘍・斜視などの眼病で、羞明、充血、閃視飛蚊症等があり、煩渇、小便不利等のもの。
 9)禿頭・脱毛で肛門また陰部に瘡を生ずるもの、或いは子宮出血後に起こったものに使った例がある。




 2)「便秘」にすぐ効く漢方薬は、@大黄甘草湯 A桃核承気湯です。
@大黄甘草湯

出典 『金匱要略』
●食しおわりて、すなわち吐するものは、大黄甘草湯これを主る。(嘔吐エツ下痢病篇)

腹候
腹力中等度前後(2−4/5)で、幅広く用いうる。

気血水
気と血に関わる。

六病位
太陰病。

脈・舌
脈沈数、または沈遅。舌候、乾燥。

口訣
●便秘以外にこれという症状のない場合に用いてよい。(藤平健)
●いわゆる南薫を求めんと欲せば必ず先づ北ゆうを開くの意にて、胃中の壅閉を大使に導きて上逆の嘔吐を止めるなり。(浅田宗伯)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
便秘症。
b 漢方的適応病態
便秘。

構成生薬
大黄4、甘草2、(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
通便。

効果増強の工夫
腹部膨満感が強いときは、枳実、厚朴などを配する意味で大承気湯を合わせる。
 処方例) ツムラ大黄甘草湯 5.0g 分2食前
       ツムラ大承気湯   2.5g 分1眠前
        (大承気湯は瀉下効果が強いので少量ずつ適量をさぐるのがよい)

本方で先人は何を治療したか?
瀧野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)食道癌・胃痛・幽門狭窄等の類似疾患・心胸通・悪阻等で嘔吐便秘するものに使った例がある。
2)常習便秘。
3)カルブンケル等の化膿症の初起、腫痛、コン熱するものに使った例がある。
4)黄疸、浮腫状にして面目ともに青く、狂言妄語し、声が出ぬものに使った例がある。

ヒント
 大黄甘草湯というと多くの人は緩下痢と思うだろう。しかし、出典の『金匱要略』では食べ終わったときに食べたものを吐く時に用いるとなっており、通常の緩下剤とは異る文脈で語られている。つまり、食べたものが胃に納まるようにする目的で本来用いられたものである。
 浅田宗伯の口訣もそのような考え方に沿って理解しなければ到底わからないことになる。
 宗伯は本方の効能を説くのに「南薫を求めんと欲すれば、必ず先づ北陽(ホクユウ)を開く」というよく知られた古訓を引用した。春まだ浅い頃に暖かな南風を室内にいれようとすれば、南向きの窓をいっぱいに開いても十分であるわけでなく、むしろ北ユウという明かり取りの小窓を開けるとは便通であり、本方の役割は北の小窓を開くことと同じということがわかろう。漢方が生体機能をどのように観ているかを直感させる口訣である。
 本方に芒消を加味すると調胃承気湯、さらに桂枝、桃仁を加えて桃核承気湯となるなど多くの攻下の方剤が派生する。




 A桃核承気湯

出典 『傷寒論』
●太陽病、解せず、熱膀胱に結ぼれ、その人狂の如く、血自づから下る。下る者は愈ゆ。その外解せざる者は、尚ほ未だ攻む可からず。まさに先づ外を解すべし。外解しおわって、但だ少腹急結する者は、乃ち之を攻む可し。桃核承気湯に宜し。(太陽病中篇)

腹候
腹力中等度以上(3−5/5)。お血圧痛(特に左下腹)あり、ときに腹直筋の拘攣を認める。

気血水
気血が主体の気血水。

六病位
陽明病。

脈・舌
脈は渋。舌質は紅〜紫。舌苔は黄。

口訣
●この方、傷寒蓄血小腹急結を治するは勿論にして諸血症に運用すべし、お血の目的はかならず昼軽くして夜重き者なり。(浅田宗伯)
●陰股部を打撲して尿閉となったものは導尿管を用いるか、本方を与えるかしなければ治すことができない。(尾台榕堂)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
比較的体力があり、のぼせて便秘しがちなものの次の諸症:月経不順、月経困難症、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)。

b 漢方的適応病態
1)下焦の血お。すなわち、下腹部の痛みや圧痛あるいは抵抗、不正性器出血、月経困難、便秘などの症状があり、下肢の冷え、下腿部静脈怒張、外痔核など、あるいはのぼせ、頭痛、肩こり、鼻出血、不眠、動悸などを伴うこともある。
2)太陽病蓄血症。すなわち、発熱性疾患の経過にみられる、下腹部がかたく張って痛む、圧痛、抵抗、便秘あるいはタール便、尿は正常か血尿、不正性器出血などの症候で熱は夜間に高くなり、甚だしい場合には意識障害や狂躁状態を呈する。(『中医処方解説』より)

構成生薬
桃仁5、桂皮4、大黄3、甘草1.5、芒硝0.9。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
清熱瀉下・活血逐お。

効果増強の工夫
本方を用いてまだ薬が不足するという場合には、通導散に転方するのも一法である。

本方で先人は何を治療したか?
瀧野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
 1)頭痛、めまい、耳鳴、肩こり、のぼせ、口燥、動悸、下腹痛、便秘、煩熱、足冷等の自律神経症状、興奮、不眠、健忘、狂状、譫妄等の精神症状、鬱血、充血、出血等の循環障害、下腹膨満、少腹急結、   総腸骨動脈圧痛等の腹証などを呈する実証のもの。
 2)月経不順・月経困難・無月経・帯下・子宮内膜炎・附属器炎・更年期障害・メトロパチー・流産・流産癖・不妊・人工流産後・産後悪露残留・交接後腹痛・陰門腫痛・バルトリン氏腺炎で1)の症状があるもの。
 3)ヒステリー・血の道症・ノイローゼ・神経衰弱・発狂・てんかん・狂躁病・脳充血・脳出血・動脈硬化症・高血圧症・脳膜炎後・狐つき等で1)の症状があるもの。
 4)痔・下肢静脈瘤・肛囲炎等で、顔面に充血、或は鬱血斑、頭痛肩こり等があり、或は少腹急結、或は便秘するもの。
 5)気管支喘息・心臓喘息で1)の症状があるもの。
 6)急性大腸炎・直腸炎・赤痢等で、下痢、血便、腹痛し実証のもの。
 7)お血性の黄疸に使った例がある。
 8)かく噎即ち食道狭窄症状に使った例がある。
 9)心胸卒痛・胸腹で1)の症状を伴うものに使った例がある。
10)腹部腫瘍・鼓脹の実証、お血性のものに使った例がある。
11)蟯虫が出た例がある。
12)膀胱炎・膀胱結石・腎臓結石・尿道炎・前立腺肥大等で疼痛、排尿困難、排尿痛、尿意頻数、或は血尿等のある実証のもの。
13)チフス・脳炎・脳膜炎・丹毒・猩紅熱その他の急性伝染病で、高熱、譫妄等の脳症を発し1)の症状を伴うもの。
14)吐血・喀血・鼻血・結膜出血・眼底出血・歯齦出血・舌出血・脹出血・肛門出血・子宮出血・血尿・皮下出血等で1)の症状を伴うもの。
15)歯痛・むし歯・歯槽膿漏で、実証、のぼせ、顔面、歯齦、鬱血斑、便秘するもの。
16)蓄膿症で15)のごときもの。(17以下を略)



3)「乗物酔い」にすぐ効く漢方薬は、@乾姜人参半夏丸 A小半夏加茯苓湯です。

 @乾姜人参半夏丸


 A小半夏加茯苓湯

出典 『金匱要略』
●にわかに嘔吐、心下痞し、膈間に水有り、眩悸す。(痰飲咳嗽篇)
●まず渇し、後に嘔す。(同)

腹候
腹力中等度よりやや軟(2−4/5)。胃内停水を認める場合がある。

気血水
水と気が主体。

六病位
少陽病

脈・舌
脈は滑。舌苔は白滑。

口訣
●日を経て食すすまざるもの、この方に生姜を倍加して能く効を奏す。(浅田宗伯)
●痰飲の発生する根本原因を除くものでははなく、対症的に頓服すべきもの。(『中医処方解説』)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
体力中等度の次の諸症:妊娠嘔吐(つわり)、そのほかの諸病の嘔吐(急性胃腸炎、湿性胸膜炎、水腫性脚気、蓄膿症)。

b漢方的適応病態
痰飲による胃気上逆。すなわち悪心、嘔吐、吃逆、口渇がない或はやや口渇して飲むとすぐ吐くなどの症候で、上腹部のつかえ、めまい、動悸を伴うことがある。咳嗽、喀痰に用いてもよい。

構成生薬
半夏6、茯苓5、生姜1.5。(単位g)

TCM((Traditional Chinese Medicine)的解説
和胃降逆・化痰利水。

より深い理解のために 類似した構成と薬効の二陳湯は、燥湿化痰・理気和中の薬能である。

効果増強の工夫
鎮吐作用の増強には陳皮を加味する意味で二陳湯を合方する。
処方例) ツムラ小半夏加茯苓湯 5.0g
      ツムラ二陳湯       5.0g   分2食前
(生のヒネショウガを小指の先ほどすり下ろして薬液に混ぜるとさらに鎮吐作用が強まる)

本方で先人は何を治療したか?
瀧野一雄著『新撰類聚方』より
1)嘔吐で或は心下部がつかえ眩悸し、或は渇して水を飲むと嘔くもの、或は汗や頭汗があり、小便不利するもの。
2)全身浮腫、陰嚢に及び、嘔逆、気息急迫、小便不利するものを治した例がある。
3)眩暈を発し、手足微厥、脈細、嘔、悸、心下痞満するものを治した例がある。

ヒント
 つわりにかつて用いられた処方は、本方と乾姜人参半夏丸とがある。本方で無効なときには試みるとよい。しかし近年では、妊娠中の服薬に対してひどく神経質になる妊婦およびその家族も少なくないので、実際に服薬を勧めることには慎重になったほうがよい。残念なことに、現代は専門家としての医師の意見が患者側の思い込みでいかようにも扱われる時代である。よかれとしたことが、思いもよらぬ非難の矛先を向けられかねない社会情勢下では、情けないが医師は自己防衛に努めるほかはないようである。
 本方は必ずしもつわりの専門薬ではない。胃腸炎などで嘔吐が続くときや、嘔吐があるために本来の治療薬が服用できないときに、本方をまず服用させで鎮吐し、しかるのちに目的の治療薬を飲ませるなども行われる。そのような保険診療上の適応も当然認められている



 4)「こむら返り」にすぐ効く漢方薬は、「芍薬甘草湯」です。

芍薬甘草湯
出典 『傷寒論』
●傷寒脈浮に、自汗出で、小便数に、心煩し、微悪寒し、脚攣急するに、反って桂枝を与えて、その表を攻めんと欲するは、これ誤りなり。之を得てすなわち厥し、咽中乾き、煩躁し、吐逆する者は、甘草乾姜湯を作りて之を与え、以てその陽を復す。もし厥いえ、足温まる者は、さらに芍薬甘草湯を作りて之を与うれば、その脚即ち伸ぶ。(太陽病上篇)

腹候
腹力によらず適用可能である。腹直筋の拘攣している場合が多いが、それが無くとも症状のみで適応してよい。

気血水
気血が主に関係する。

六病位
太陰病。

脈・舌
舌候はさまざまで一定せず。脈は、痛みから弦であろう。

口訣
●ありとあらゆる痛みに、一度は適用してみること。

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛。
b 漢方的適応病態:平滑筋、骨格筋の痙攣性疼痛に頓服として用いる。末梢性の鎮痙、鎮痛以外に中枢性の鎮静作用も有する。中医学的には筋の痙攣は肝の機能失調によると考えられており、この鎮静、鎮痙、鎮痛作用を「平肝」とよぶ。なお、白芍、炙甘草ともに滋養強壮作用があり、身体を栄養、滋潤する。(『中医処方解説』)

より深い理解のために 横紋筋、平滑筋、いずれも治療可能なところに注目。

構成生薬
甘草6、芍薬6。(単位g)

より深い理解のために 使用上の注意として、7.5gの常用量中に甘草6gを含むことから治療上必要な最短期間の投与にとどめることが大切である。
TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
平肝・解痙止痛。

効果増強の工夫
鎮痛効果を増すために、附子を加味する。附子の働きは温裏きょ寒で、血管拡張、血行促進の効能をもち、かつ鎮痛作用がある。芍薬甘草湯証で寒証を呈するものに適用される。

処方例)ツムラ芍薬甘草湯 7.5g
     ブシ末(調剤用)「ツムラ}1.5g   分3食間

本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)脚気・腓腸筋痙攣・筋肉リユウマチ・眼病・舌強直・寝違え等で痙攣様にすじがつれるもの。

2)胃痙攣・腸疝痛・嵌頓ヘルニヤ・イレウス・胆石発作・膵臓炎等急性腹症と云われる発作性の腹痛で、腹壁が痙攣様につれて堅くなっているもの。
3)小児の夜啼きで腹筋が攣急するもの。
4)下肢無力症、脚弱。
5)咳を発して放屁するものを治した例がある。
6)気管支喘息で、呼吸困難や劇しい咳のために筋肉に力を籠めているもの。
7)歯痛で腹筋ひきつるものを治した例がある。

ヒント
 本方はその成り立ちからも頓用かあるいは短期間の使用にとどめるべき薬方である。理由はいうまでもなく、甘草を1日量として多く含むために、偽アルデステロン症を発症しやすいからである。
 ここに興味深い臨床研究論文がある。熊田卓、熊田博光、与芝真ほか:TJ−68ツムラ芍薬甘草湯の筋痙攣(肝硬変に伴うもの)に対するプラセボ対照二重盲検群間比較試験.臨床医薬 15(3):499-523、1999である。本論文は、肝硬変症例におけるこむら返りに対する芍薬甘草湯の効果をプラセボコントロールで示したものである。このトライアルでは、ツムラ芍薬甘草湯7.5を分3で連日14日用いているが、実薬65例中5例の偽アルデステロン症が発症したと記されている。いずれも服薬中止のみで治癒したとのことであった。
 甘草に由来する偽アルデステロン症の発症頻度を知る上で貴重な記録ということができる。





 5)「かゆい人」には、@黄連解毒湯 

出典 王Z著『外台秘要』
時疾、煩悶に苦しみ、乾嘔、口燥、呷吟、錯語して臥すを得ざるを治す。
より深い理解のために 
時疾は時病、時令病ともいい、その季節に多発する病を指す。伝染性、流行性のものが少なくない。

腹候
腹力中等度前後(2-4/5)。心下痞ごうをみとめることがある。

気血水
気水主体の気血水。

六病位
少陽病。

脈・舌
脈は数で有力。舌質は紅、黄苔。

口訣
●のぼせて胃部がつかえるもの、あるいは軟便で便秘したり、目が充血するもの。(『現代漢方治療の指針』)
●本方は充血を去り、精神不安をのぞくから、喀血、吐血には止血と同時に精神症状も消散させる。(同)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
比較的体力があり、のぼせ気味で、いらいらする傾向のあるものの次の諸症:喀血、吐血、下血、脳溢血、高血圧、心悸亢進、ノイローゼ、皮膚そう痒症、胃炎。

b 漢方的適応病態
1)熱盛。すなわち高熱、顔面紅潮、目の充血、熱感、口や咽のかわき、口が苦い、いらいら、転々反側、不眠などで、甚だしければ意識障害、狂躁状態を呈する。

2)血熱妄行。すなわち、熱盛に伴う各種の出血あるいは発疹。
3)肝胆湿熱・脾胃湿熱・膀胱湿熱。すなわち、口がねばる、口が苦い、口臭、歯痛、悪心、嘔吐、胸脇部や腹部の膨満感、腹痛などがあり、黄疸、あるいは膿血性の下痢、裏急後重あるいは頻尿、排尿痛などが生じる。発熱を伴うことが多い。
4)心火旺・肝胆火旺・胃熱。いらいら、のぼせ、顔面紅潮、目の充血、口臭、口が苦い、口渇、口内炎、動悸、頭がさえて眠れない。気分が落ち着かない、胸脇部が脹って苦しい、上腹部痛、悪心などの症候。

より深い理解のために
「熱盛(実熱、実火)」とは炎症症状をいい、「三焦の実火」とは全身の炎症を意味する。また、これに伴う脳の充血や自律神経系興奮による血管透過性増大に伴う出血や発疹のことである。
 「湿熱」とは、炎症とともに炎症性滲出や水分の吸収、排泄の障害がみられるもので、消化器系、泌尿器系の炎症で生じる。
 「心火旺・肝胆火旺・胃熱」は、主に脳の興奮性増大、脳の充血、自律神経系の興奮などによる症候で、軽度の炎症も介在する。不眠、動悸、落ち着きがないなどの大脳皮質や心臓の駆血能に関連した症候を「心火旺」、いらいら、胸脇部の脹った痛み、怒りっぽいなど自律神経系の失調に関連した症候を「肝胆火旺」、悪心、上腹部痛、歯痛など上部消化器系に関連した症候を「胃熱」という。

構成生薬
黄ごん3、黄連2、山梔子2、黄柏1.5。(単位g)
より深い理解のために 本方は三焦の実火(実熱・熱盛)に対する基本処方。

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
清熱瀉火・解毒・清熱化湿・止血。

効果増強の工夫
効果を増強する目的で、大黄を加味。東洞は、去黄柏加大黄として好んで用いたという。東洞の治験を追試するには、三黄瀉心湯を合方すればよさそうである。
 処方例)ツムラ黄連解毒湯 5.0g
      ツムラ三黄瀉心湯 5.0g  分2朝夕食前

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
吐血・喀血・衂血・下血・血尿・麻疹・痘瘡・皮膚病・皮膚掻痒症。蕁麻疹・諸熱性病の残余余熱・狂躁症(喜笑やまざる症)・血の道症・めまい・心悸亢進症・ノイローゼ・精神病・脳溢血・高血圧症・酒渣鼻・黒皮症など。
●龍野一雄著『改訂新版漢方処方集』より
(吉益南涯の黄解散として)喀血、吐血、鼻血。
●桑木崇秀
脳充血または高血圧、脳梗塞による精神不安や不眠、喀血、吐血、衂血、眼出血(球結膜下出血、網膜出血)、過飲による心煩、急性胃炎、火傷後の興奮、皮膚掻痒症で赤みが強く痒さのひどいもの。





A消風散 
出典『外科正宗』
●風湿血脈に浸淫し、瘡疥を生ずるを致し、掻痒絶えざるを治す。および大人小児、風熱いん疹身に遍く、雲片斑点、たちまち有り、たちまち無きに並び効あり。(『外科正宗』瘡疥門)

腹候
腹力中等度前後(2−4/5)。腹部皮膚に肌膚甲錯を認める。

気血水
血水が主体の気血水。

六病位
小陽病。

脈・舌
脈は数。舌質は紅、舌苔は微黄。

口訣
●慢性の皮膚疾患にバランスのよい漢方である。(道聴子)
●急性症状には無効で、この場合は越婢加朮湯が適する。(『現代漢方治療の指針』)
●本方は、湿疹群、蕁麻疹群、痒疹群に対する代表処方である。(『中医処方解説』)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
分泌物が多く、かゆみの強い慢性の皮膚病(湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚そう痒症)。
b 漢方薬適応病態
風湿熱の皮疹。すなわち、かゆみが強い(夜間に増悪する傾向がある)、局所の発赤と熱感、滲出液が多いあるいは水泡形成、体のほてりや熱感、口渇などがみられる。

構成生薬
石膏3、地黄3、当帰3、牛蒡子2、蒼朮2、防風2、木通2、知母1.5、甘草1、苦参1、荊芥1、胡麻1.5、蝉退1。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
疏風・清熱化湿・養血潤燥。

より深い理解のために
「疏風」とは、きょ風解表薬を用いて、風邪を疏散する治法。風寒表証には防風、桂枝、藁本などを用い、風熱表証には薄荷、牛蒡子などを用い、風湿表証には羌活、白しなどを用いる。

効果増強の工夫
1)十味敗毒湯を合方してきょ風化湿・清熱解毒作用を増強する。
処方例)ツムラ消風散 7.5g
      ツムラ十味敗毒湯 5.0g(1-0-1) 分3食前

2)黄連解毒湯を合方して清熱作用を増強する。
処方例)ツムラ消風散 7.5g
     ツムラ黄連解毒湯 5.0g(1-0-1) 分3食前

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
すべて頑固な皮膚病、湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚掻痒症、夏期に悪化する皮膚病など。
●龍野一雄著『改訂新版漢方処方集』より
頑固乾燥性で、夏期また温暖時に増悪する皮膚病、蕁麻疹。

ヒント
 消風散はバランスのよい薬ということができる。皮膚炎は悪化して外来を訪れる例が大半であるから、その時点では患部は炎症し赤く発赤腫脹している場合が多い。そのときの治療には、まず熱を冷ますことが必要である。
 消風散はその構成生薬が、大寒の石膏を始めとして六種の寒涼薬(地黄は議論が分かれるところから、数に含めないでおく)と四種の温薬、二種の平薬(温めも冷しもしない)である。全体としては、寒涼薬がやや勝った構成となっている。すなわち、皮膚炎初診時には適した適した薬味構成である。
 ただし皮膚炎だからといって、すべて消風散でよいというわけにはいかないのはもちろんである。かぶれなど接触皮膚炎の急性症状には本方は無効で、この場合は越婢加朮湯が適する(『現代漢方治療の方針』)、という口訣もある。






B当帰飲子が、すぐ効く漢方薬です。
出典 厳用和著『済生方』
●心血凝滞し、風熱を内蘊し、発して皮膚に見われ、遍身瘡疥のものを治す。(『済生方』)

腹候
腹力中等度よりやや軟(1-3/5)。皮膚乾燥あり。

気血水
血、水が主体である。

六病位
太陰病。

脈・舌
原則的に、舌質は暗紅、舌苔は薄く、脈は細。

口訣
●この方は老人が血燥して、瘡疥を生ずるのに良い。さらに熱が加わって血熱となったものが温清飲である。(浅田宗伯)
●炎症、浮腫の介在するものには不適。(『中医処方解説』)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
冷え症のものの次の諸症:慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ。

b漢方的適応病態
血虚生風。すなわち、皮膚がかさかさしてつやがない。粃糠様の落屑、小さな皸裂、遊走性のかゆみ、かきむしって少量の出血や血痂がみられる。発赤や滲出物はみられないなどの症候。
 より深い理解のために
 藤平健先生は当帰飲子を老人性の乾燥性皮膚掻痒症にしばしばもちいられた。

構成生薬
当帰5、地黄4、しつ藜子3、芍薬3、川きゅう3、防風3、何首烏2、黄耆1.5、荊芥1.5、甘草1。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
 養血潤燥・きょ風(補血潤燥・止痒)。

効果増強の工夫
しつ藜子、何首烏などの生薬の入った薬方は少ないので、高齢疾患の治療目的に積極的に他薬と合方されてよい薬方である。
高齢者の皮膚掻痒症で一時的に悪化したものに、(熱を抑えつつ、潤す作用を期待して)
 処方例)ツムラ当帰飲子 7.5g
       ツムラ黄連解毒湯 5.0g(1-0-1) 分3食前、または食後

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
皮膚掻痒症・痒疹・瘡疥(ひぜん)・その他乾燥性皮膚疾患、慢性湿疹など。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
貧血で冷え症の、皮膚がかさかさした皮膚掻痒症。

ヒント
 ここで著者が留意する皮膚疾患漢方治療のポイントを述べてみよう。便宜的に患者の状態を三段階に分けてそれぞれを論じてみる。
 第一段階は、増悪期で、激しい掻痒、皮膚の発赤、腫脹、皮膚糜爛が特徴である。この時期に大切なことは迷わず強力な発表剤、抗炎症剤だけを投入して炎症の鎮静化を図ることで、具体的には越婢加朮湯や黄連解毒湯などである。間違えても四物湯などの補剤を用いてはいけない。火に油を注ぐという言葉通りになってしまう。桃核承気湯や通導散などの攻下の剤は時に用いる場合がある。
 第二段階は安定期で、皮膚は腫脹せずあってもわずかな部分のみであり、発赤も掻痒も軽度である場合である。著者は消風散、十味敗毒湯、温清飲などを中心に考えるが、白虎加人参湯、苓桂朮甘湯、十全大補湯、補中益気湯など広範な選択がありうる。
 第三段階は枯燥期で、肌は腫脹も発赤もなく、枯れた状態である。皮膚は乾燥し、皮膚の落屑が粉をまき散らしたようである。この場合は四物湯を中心に補血し、当帰飲子など、補血に若干の清熱剤を混じたものなどを用いる。安定期同様に薬方選択の幅は広い。
要するに治療法は清熱と補血を意識して、メリハリのついた治療方針を立てて、腫れとかゆみに対して的確に対処することに尽きる。
 なお、当帰飲子は疾?子、何首烏が配剤されている数少ない医療用漢方製剤である。















 6)「だるい人」には、@十全大補湯

1 十全大補湯 体力・気力の低下に加えて、貧血気味でお肌もカサカサという体全体の衰えのある場合はこの処方も適しています。

   1 出典 陳師文ほか編『和剤局方』
   ●男子婦人、諸虚不足、五労七傷、飲食進まず、久病虚損、時に潮熱を発し、気骨脊を攻め、拘急疼痛、夜夢遺精、面色痿黄、脚膝力なく、一切病後、気旧のごとからず、憂愁思慮、気血を傷動し、喘嗽中満、脾胃の気弱く、五心煩悶するを治す。(補虚損附骨蒸門)

   2 腹候
    腹力中等度前後。悪性腫瘍治療の補助療法の際には脾胃への納まりがよければ、腹力や腹候にはこだわらずに用いてよい。これはその他の気血双補薬についても当てはまる。

   3 気血水
    気血水のいずれとも関わる。

   4 六病位
    太陰病。

   5 脈・舌
    脈は沈細弱。舌質は淡白で胖大。

   6 口訣
   ●この方、局方の主治によれば、気血虚するというが八珍湯の目的にて、寒というが黄耆、肉桂(桂皮)の目的なり。また、黄耆を用うるは人参に力を併せて自汗、盗汗を止め、表気を固むるの意なり(固表)。(浅田宗伯)
   ●この方は、気血、陰陽、表裏、内外、皆虚したものを大いに補う、という意味で十全大補湯と名付けられた。(矢数道明)

   7 本剤が適応となる病名・病態
   a 保険適応病名・病態
   効能または効果
   病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血。
 
   b 漢方的適応病態
   気血両虚。すなわち、元気がない、気力がない、疲れやすい、倦怠無力感、食欲不振、軟便〜泥状便などの気虚の症候と、顔色が悪い、皮膚につやがない、頭がふらつく、目がかすむ、四肢のしびれ感、筋肉のひきつりなどの血虚の症候がみられるもの。

   8 構成生薬
   黄耆3、 桂皮3、地黄3、芍薬3、川きゅう3、蒼朮3、当帰3、人参3、ぶくりょう、甘草1.5。(四君子湯+四物湯+桂皮、黄耆)(単位g)

   9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
    温補気血(あるいは、気血双補・温陽きょ寒)。

   より深い理解のために
   本方は気血両虚に対して全面的な効能をもつが、構成薬物が多いので急性の失血や極度の衰弱の改善には無理があり、他の適切な手段を講じる必要がある。

   10 効果増強の工夫
    1)最初は、内容生薬の増強を図る。
      処方例) ツムラ十全大補湯 7.5g
            ツムラ紅参末    3.0g  分3食前

    2)内容に含まれない生薬を加味する。
     処方例) ツムラ十全大補湯  7.5g 
           ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.5g ぶん3食前

    11 本方で先人は何を治療したか?
    ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
    諸貧血症・産後・手術後の衰弱・諸熱性病後の衰弱・癰疽の後・痔瘻・カリエス・腎臓結核・瘰癧・白血病・諸出血の後・視力減退・脱肛・子宮癌・乳癌等。
    ●瀧野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
    疲労、衰弱、貧血、失血、産後、手術後、カリエス、痔瘻、るいれき、白血病、脱肛、神経衰弱、遺精、視力減退。或は男子婦人諸虚不足、一切病後に気もとの如く回復せざるもの。

    ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
    大病後や手術後などの全身衰弱、貧血。カリエス、寒性膿瘍。その他、貧血性で、気力・体力ともに衰えた場合(食欲不振・下痢のある場合を除く)。








 A補中益気湯 


2 補中益気湯 体力・気力が低下して、目尻や口角が下がり、肩もがっくり落ちていて時に寝汗をかくような人に。気力を充実させてだるさをとる処方です。

   1 出典 李東垣著『内外傷弁惑論』
   『弁惑論』の記述はやや要領を得ないので、後世の『万病回春』を引用する。
  ●中気不足し、あるいは誤りて剋伐し(誤って強い薬を服し)、四肢倦怠、口渇き発熱して、飲食味なく、あるいは飲食節を失し、労倦身熱し、脈洪大にして煩し、脈微細軟弱、自汗、体倦食少なく。あるいは中気虚弱にして血を摂むること能はず。あるいは飲食労倦して瘧痢等の症を患い、脾胃虚するに因りて愈えること能わざる者を治す。(『万病回春』補益門)

   2 腹候
   腹力、中等度かそれ以下。ときに胸脇苦満や臍上悸を認める。

   3 気血水
   気血水いずれも関わる。

   4 六病位
   少陽病。

   5 脈・舌
   中気下陥・清陽不升では、脈は虚大。舌質は淡紅〜淡白。気虚の発熱では、脈は洪大で、沈取すると無力。舌質はやや紅、苔は白。

   6 口訣
   ●小柴胡湯の虚状を帯ぶるものに用ゆべし。(浅田宗伯)
   ●津田玄仙(1737-1809)は八つの目標を示した。手足倦怠、言語軽微、眼に勢いがない、口中白沫、食味がない、熱物を好む、臍にあたって動悸、脈散大で力なし。(『療治茶談』)

   7 本剤が適応となる病名・病態
   a 保険適応となる病名・病態 
   効能または効果
   消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症。

   b 漢方的適応病態:脾胃気虚の次の症候
    1)中気下陥・清陽不升。すなわち、元気がない、疲れやすい、四肢がだるい、動作がおっくうである、立ちくらみ、頭の鈍痛、眠くなる(特に食後)、頭がボーっとする、汗をかきやすい、息ぎれ、便秘あるいは泥状〜水様便などの症候、あるいは胃アトニー、遊走腎、脱肛、子宮脱、ヘルニアなど。
    2)脾不統血(気不摂血)。すなわち、脾胃気虚の症候とともに生じる少量かつ間欠的に持続する出血で、下半身や皮下の出血が多い。婦人では月経周期の短縮や過多月経が生じ、経血はうすいことが多い。
    3)気虚の発熱。すなわち、慢性に繰り返す微熱で精神的、肉体的疲労に伴って発生する。頭痛、悪寒、自汗などがみられることもある。

   8 構成生薬
   人参4、白朮4、黄耆4、当帰3、陳皮2、大棗2、柴胡2、甘草1.5、生姜0.5、升麻1。 (単位g)

   9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
   補気健脾・升陽挙陥・甘温除熱。

  より深い理解のために
   補気作用とは抗うつ作用を含むものと考えられる。

    10 効果増強の工夫
    人参の増量(2〜3gを加味)、少量の附子を加味するなどがある。
    全身倦怠感などの改善に、腎虚があれば六味丸や八味丸を合方するのはよい手段である。
       処方例) ツムラ補中益気湯 5.0g
             ツムラ六味丸    5.0g  分2毎食前

    11 本方で先人は何を治療したか?
     ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
     結核症・夏痩せ・病後の疲労・虚弱体質改善・食欲不振・虚弱者の感冒・痔疾・脱肛・子宮下垂・胃下垂症・陰痿・半身不随・多汗症・風邪ひきやすき者・虚弱児体質改善等。
     ●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
     疲労状態、夏やせ、感冒。
     ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
     胃アトニータイプの者のカゼが長引いて微熱や痰や盗汗のとれない場合。同様な体質者の肋・腹膜炎、肺結核、慢性副鼻腔炎。虚弱者の痔核、脱肛。胃腸の弱い虚弱者の病後や術後の体力回復。低血圧症。






B人参養栄湯3 人参養栄湯 病後や術後のだるさにはこの処方も考えます。冷えや貧血がある場合に使ってみたい漢方薬です。呼吸器系の症状があるときに使用します。

   1 出典 『和剤局方』
   ●積労虚損にて四肢沈滞、骨肉酸疼、呼吸として気少なく、行動喘啜(あえぎすすりなく)、小腹拘急、腰背強痛、心虚驚悸、咽乾き唇燥き、飲食味無く、陰陽衰弱、悲憂惨戚、多臥少起、久しきものは積年、急なるものは百日、漸く痩削に至り、五臓の気竭て、振復すべきこと難きを治す。また、肺と大腸がともに虚し、咳嗽下利、喘乏少気、痰涎を嘔吐するを治す。

   2 腹候
   腹力中等度前後。悪性腫瘍治療の補助療法の際には胃腸への納まりがよければ、腹力や腹候にはこだわらずに用いてよい。これはその他の気血双補薬についても当てはまる。心下痞ごうを認める。

   3 気血水
   気血主体の気血水。

   4 六病位
   太陰病。

   5 脈・舌
   舌質は淡白。脈は沈細弱。

   6 口訣
   ●頑固な咳嗽が続き、衰弱のために麻黄剤が使えないが、麦門冬湯、半夏厚朴湯、柴胡剤などでも効果がない場合に本方を試みるとよい。(『現代漢方治療の方針』)
   ●この方は、気血両虚を主とすれども、十補湯(十全大補湯)に比すれば、遠志、橘皮、五味子ありて脾肺を維持するの力優なり。(浅田宗伯)

   7 本剤が適応となる病名・病態
   a 保険適応病名・病態
    効能または効果
    病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振・ねあせ、手足の冷え、貧血。

   b 漢方的適応病態
    気血両虚・虚寒。すなわち、健忘、眠りが浅い、動悸などの心血虚の症候や、自汗、息切れ、咳嗽、喀痰などの肺気虚の症候に、寒気、四肢の冷えなどの虚寒の症候を伴うもの。

   8 構成生薬
    地黄、当帰4、白朮4、茯苓、人参3、桂皮2.5、遠志2、芍薬2、陳皮2、黄耆1.5、甘草1、五味子1。(単位g)

  より深い理解のために
  本方は十全大補湯の川きゅうを除き、五味子、遠志、陳皮を加えたものに相当する。

    TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
    気血双補・安神・きょ寒・止咳。

   10 効果増強の工夫
    不眠が強ければ、酸棗仁湯を合方する場合がある。
    処方例)  ツムラ人参養栄湯  6.0g
           ツムラ酸棗仁湯   5.0g  分2食前

   11 本方で先人は何を治療したか?
    ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
   病後衰弱、産後衰弱症、結核症の衰弱。毛髪脱落、顔色光沢なく枯燥、心悸亢進、不眠、健忘症などのあるもの。
    ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
   大病後や手術後などの全身衰弱・貧血、呼吸器疾患の回復期で、咳・盗汗などの残るもの、その他、貧血性で、気力、体力ともに衰え、健忘・不眠・乾咳などのあるもの。



 C当帰芍薬散 

出典 『金匱要略』
1)婦人懐妊し、腹中こう痛する証。(『金匱要略』婦人妊娠病篇)
2)婦人、腹中諸疾痛の証。(婦人雑病篇)

腹候
腹力中等度よりやや軟(2-3/5)。お血の圧痛を認める。胃部振水音を聞く場合がある。

気血水
血水主体の気血

六病位
太陰病。

脈・舌
脈は軟滑、あるいは細。舌は淡紅、胖大、舌苔は白。

口訣:
●其の人、心下に支飲ありて小便少なく、或は冒する者は、当帰芍薬散之を主る。(能条保庵著『医聖方格』)
●和血に利水を兼ねたる方ゆえ、建中湯の症に水気を兼るものか、逍遙散の症に痛みを帯ぶるものかいずれにも広く用うべし。(浅田宗伯)
●顔にはけして熱色を帯びず。(道聴子)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいものの次の諸症:貧血、倦怠感、更年期障害(頭痛、頭重、めまい、肩こり等)、月経障害、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病(浮腫、習慣性流産、痔、腹痛)、脚気、半身不随、心臓弁膜症。

b 漢方的適応病態
血虚・脾虚湿盛。すなわち、皮膚につやがない、頭がボーっとする、頭痛、手足のしびれ感、筋の痙攣、月経量が少ない、月経が遅れる、月経痛などの血虚の症候に、食欲不振、疲れやすい、顔や手足のむくみ、頭が重い、腰や四肢の冷え、腹痛、泥状〜水様便、白色帯下、尿量減少などの脾虚湿盛の症候を伴うもの。

構成生薬
芍薬4、蒼朮4、沢瀉4、茯苓4、川きゅう3、当帰3。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
補血活血・健脾利水・調経止痛。

より深い理解のために
上記の病態を目標に男性に適用できる。また半夏厚朴湯や香蘇散を合方すると理気剤が加味されることになり応用が拡大する。

効果増強の工夫
1)単独では冷えや痛みに効果不十分なときには附子を加味する。
処方例) ツムラ当帰芍薬散   5.0g
      ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.0g  分2食前

2)自律神経の不安定な例に理気剤を加える。
処方例) ツムラ当帰芍薬散 5.0g
      ツムラ半夏厚朴湯 5.0g 分2食前

本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)疲労性、冷え性、貧血性、脈沈弱、無気力、消極的気質等の体質、眩暈、耳鳴り、心悸亢進、冷感等の血管運動神経障碍、便秘、下痢、浮腫、胃部振水音等の新陳代謝及び胃腸障碍、気鬱引込み思案、記憶力減退、頭痛頭重、肩こり、四肢倦怠、腰痛、背痛、しびれ感、不眠、嗜眠等の精神及び神経障碍、月経不順、帯下等の婦人科的症状などが組合わさって起る。
2)神経質・ノイローゼ・神経衰弱・ヒステリー・精神分裂症等で1)の症状があるもの。
3)肺結核・肋膜炎・気管支喘息等で、虚証、疲れやすく、貧血し、肩こり、背痛、頭重、息切れなどするが、咳や呼吸困難は殆どないもの。
4)胃アトニー・胃下垂・胃液分泌過多症・胃酸過多症・胃痛・十二指腸潰瘍などで疲れやすく、頭重、めまい、胃部振水音などするもの。
5)腹水・鼓脹で、虚証体質と、食欲不振、腹痛、浮腫、眩、小便不利などを兼ねているもの。
6)慢性下痢・赤痢・肝硬変症・虫垂炎などに使った例がある。
7)高血圧症・低血圧症・メニエール氏症候群・甲状腺腫・バセドゥ氏病等の虚証で、動悸めまいなどしやすいもの。
8)心臓弁膜症・心臓不全・期外収縮・心臓性喘息などで動悸、浮腫、貧血、足冷えなどするもの。
9)腎炎・ネフローゼ・萎縮腎等で8)の如悸症状を呈するもの。
10)夜尿症・前立腺肥大症で、貧血、冷え性、胃部振水音などあるもの。
11)結核性腹膜炎で硬結、或は鈍痛、或は腹水を伴い、貧血冷え性のもの。
12)神経痛・リュウマチ・座骨神経痛・膝関節痛・足痛等で木方証の体質的特徴、或は腹中攣急等の腹証があるもの。
13)下肢麻痺・跛・半身不随を治した例がある。
14)走馬牙疳、即ち水癌の類に使った例がある。
15)乳腺炎に使った例がある。
16)鼻癌・乳癌に使った例がある。
17)痔核・痔出血・脱肛で1)の体質的その他の症状を伴うもの。
18)凍傷で虚証、冷え性、貧血性のもの。
19)ひび・あかぎれ・じん麻疹・にきび・そばかす・湿疹・いぼ等で、1)の体質的特徴その他を伴うもの。
20)蓄膿症・肥厚性鼻炎・削痩性鼻炎・耳漏・歯槽膿漏等で、1)の全身的特徴があるもの。
21)月経不順・月経過多・月経寡少・無月経・経閉・月経困難・子宮出血・帯下・子宮後屈・子宮内膜炎・頸管カタル・附属器炎・メトロパチー・子宮筋腫・卵巣嚢腫・骨盤腹膜炎・更年期障碍・血の道症・子宮脱・;流産・流産癖・人工流産後・不妊症・妊娠中の下痢・或は腹痛、或は咳、或は腹部打撲・早期破水等で月経障碍、下腹膨満痛、腰痛、頭痛、肩こり、眩暈、足冷等、1)の症状を伴うもの。

婦人科処方と総称される当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散の比較を試みよう。

婦人科関連三処方徹底比較
方剤名 当帰芍薬散                         
出典  金匱要略                            
     ●婦人が懐妊して、腹中がきりきり痛むときに適用。     
     ●ご婦人の、さまざまの腹痛に適用。
腹候  腹力:中等度より軟。五段階表示で1-2/5.ときに振水音、お血圧痛陽性。
気・血・水 ●顔色不良
       ●水滞の微候あり
       ●易疲労
       ●のぼせ無く、ひえのみ。
口訣    ●妊娠中使える薬
       ●顔色はけして熱色を帯びない
漢方の適用病態・効能  ●血虚・脾虚湿盛。すなわち、皮膚につやがない、頭がボーッツとする、頭痛、手足の痺れ感、筋の痙攣、月経量が少ない、月経が遅れる、月経痛などの血虚の症候に、食欲不振、                 疲れやすい、顔や手足のむくみ、頭が重い、腰や四肢の冷え、腹痛、泥状〜水様便、白色帯下、尿量減少などの脾虚湿盛の症候を伴うもの。
                ●補血活血・健脾利水・調経止痛。

構成生薬  芍薬、蒼朮、沢瀉、茯苓、川きゅう、当帰


方剤名 桂枝茯苓丸
出典  金匱要略
     ●月経に変調があったり、妊娠中に胎が動き、腹が痛んで上につき上げ、心下に動悸がしたりするものを治す。(『方極』)
腹候  腹力:中等度かそれ以上。3-5/5。臍傍お血圧痛所見陽性。
気・血・水 ●顔色紅潮
       ●動悸などの水滞徴候がある
       ●易疲労は少ない
       ●のぼせが主、冷少

口訣  ●お血より生ずる諸症に活用すべし。桃核承気湯は如狂少腹急結あり、この方は、腹部のしこり(ちょう)を目的とする。温経湯のような上熱下寒はない。(浅田宗伯)
漢方の適応病態・効能
     ●下焦の血お。すなわち、下腹部の痛みや圧痛抵抗、あるいは腫瘤、月経不順、月経困難、不正性器出血などに、下肢の冷えや静脈のうっ滞あるいはのぼせ、頭痛、肩こりなどの症候を伴うもので、     舌質は紫あるいはお斑がみられることが多い。脈は渋、あるいは細、あるいは弦。一般的な血おに用いてもよい。
     ●活血化お・消ちょう

構成生薬 桂皮、芍薬、桃仁、茯苓、牡丹皮


加味逍遥散
出典  和剤局方
     ●貧血倦怠、精神不安、身体疼痛、頭重めまい、頬赤くのぼせ、口のど乾き、発熱ねあせ、食思不振でふせがち、月経が不順、腹痛したりする、のぼせたり冷えたりを治す。

腹候  腹力:中等度前後。2-4/5.胸脇苦満やお血圧痛があってもよい。

気・血・水 ●顔色はさまざま、発作性ののぼせあり
       ●のぼせ冷えあり
       ●精神症状つよし
       ●肩こりあり

口訣    ●婦人いっさいの申し分に用いてよくきく。いまより十数年前は、世間の医者は、婦人の病というとほとんどこの方を用いた。(江戸、百々漢陰)

漢方の適用病態・効能
       ●逍遥散は肝気鬱結・血虚・脾虚に適応される。加味逍遥散は、これに牡丹皮、山梔子の適応状態が加わったもの。肝気鬱結とは、ゆううつ感、いらいら、怒りっぽい、頭痛、胸脇部が張って苦しい       、脇の痛み、腹痛などをいう。血虚の症候とは、頭がふらつく、頭がボーッとする、目が疲れる、四肢がしびれる、皮膚につやがない、動悸、眠りが浅い、多夢などをいう。脾虚とは、食欲がない、疲         れやすい、倦怠感、浮腫、下痢傾向、あるいは下痢便秘の交代などの症候をいう。
       ●疏肝解欝・健脾補血・瀉火・調経

構成生薬 柴胡、芍薬、蒼朮、当帰、茯苓、山梔子、牡丹皮、甘草、生姜、薄荷


             
                          







D清暑益気湯が、すぐ効く漢方薬です。
出典  張三錫著『医学六要』
●長夏、湿熱大勝、人これに感じ、四肢困倦、身熱心煩、小便少なく、大便溏し、あるは渇し、あるいは渇せず。飲食を思わず、自汗するを治す。(これは『内外傷弁惑論』の清暑益気湯条)

腹候
腹力中等度かやや軟(2-3/5)

気血水
気血が主体の気血水。

六病位
少陽病。

脈・舌
脈は弱、数の傾向。舌候は、紅舌やや乾燥、薄い黄苔。

口訣
●李東垣の『脾胃論』に同名方(15味あり)があるが、本方は(近製と称され)より簡潔な内容で、夏負けには速効がある。(浅田宗伯)

本剤は適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
暑気あたり、暑さによる食欲不振、下痢、全身倦怠、夏やせ。

b 漢方的適応病態
気津両傷。すなわち、疲労感、無力感、息切れ、食欲減退などの気虚の症候と、口渇、咽の渇き、尿量減少などの津虚の症候があるもの。発熱、腹痛、下痢などの湿熱の症候を伴うこともある。

構成生薬
蒼朮3.5、 人参3.5、 麦門冬3.5、 黄耆3、 陳皮3、 当帰3、 黄柏1、甘草1、五味子1。 (単位g)

より深い理解のために 本方も、四君子湯や生脈散(人参、五味子、麦門冬)などが入る。生脈散の主治は気津両傷である。夏負け(注夏病)の専用薬、のような趣の薬だが通年の服用を希望される方もいる。

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
益気生律・清熱化湿。

効果増強の工夫
倦怠感が強い場合には少量の附子を加えて用いる。
処方例)ツムラ清暑益気湯 7.5g
     ブシ末(調剤用) 1.5g  分3食前

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
 注夏病(夏やせ、夏まけ)の専剤。
●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
夏まけ。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
虚弱者で汗かきの者の、夏やせ、夏まけ。

ヒント
 清暑益気湯についての諸家の説。大塚敬節氏は、『證候による漢方治療の実際』に、この方は俗にいう“夏やみ”の薬で夏になると食が減じ、水っぽいものをほしがり、手足がだるく、足のうらがほてり、時に下痢したり、大便がゆるくなったりするものを目標として用いる。氏は、急性肝炎で、倦怠感が甚だしく、食のすすまない者に、この方を用いて著効を得たことがある、としている。
 『医方口訣集』で長沢道寿は、『弁惑論』の中の清暑益気湯について(本方は『医学六要』)のそれに比して、神麹、沢瀉、升麻、青皮、葛根などが加わっている)、長夏の湿熱のために四肢が困倦し、精神短少し、動作にものうくなるなどの弁惑論の条文を述べ、自分がこれを用いる口訣に2つあるとして、気弱な人が暑湿にあって熱証を現わして虚熱を兼ねる場合と、老人や虚人が長夏で養生の薬を要するときに試みに用い経過がよい場合であると述べている。
 ともに参考になる説である。













 7)「食欲がない人」には、@六君子湯

出典 げん廷腎著『万病回春』
●脾胃虚弱、飲食少しく思ひ、或は久しく瘧痢を患ひ、若くは内熱を覚え、或は飲食化し難く、酸を作し、虚火に属するを治す。須らく炮姜を加えて其効甚だ速かなり。(補益門)

腹候
腹力中等度以下(1-3-5)。胃内停水を認める。

気血水
気と水が主体。

六病位
少陽病。

脈・舌
舌質は淡白で胖大、舌苔は白滑、白厚膩。脈は軟滑、滑弱。

より深い理解のために
本方は気の不足を補って、胃腸機能を高め、水滞をさばき、補中益気湯の弟分といった趣の漢方である。元気になるとうつ状態も改善される。

効果増強の工夫
 六君子湯は多くの方剤に含まれ、その薬効の中心部分を構築している。六君子湯を分解すると、四君子湯と二陳湯になる。補気が必要であれば、少量(たとえば2,5gほど)の四君子湯を合わせることもあり得る。胃内の水のさばきを重視すれば、少量の二陳湯を追加する場合もあるであろう。そのようにして患者の病態に合わせていくのである。

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
慢性胃炎・胃下垂症・胃アトニー症等に用いられ、また慢性腹膜炎・胃癌・胃潰瘍・消化不良症・自家中毒症・食欲不振・虚弱者の胃腸型感冒・嘔吐・悪阻・神経衰弱症・肩こり・虚弱者や老人、脳溢血患者の養生薬に応用される。

●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
四君子湯の証で胃液分泌過多あるもの、胃弱、胃液分泌過多、胃下垂。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
胃アトニー、胃下垂、慢性胃炎。慢性下痢のある場合には四君子湯がよい。

ヒント
 六君子湯は補気利水の代表薬である。癌の術後などに十全大補湯が用いられるが、地黄の味が口につき、胃もたれして服用しにくくなったと訴える患者も少なくない。そのようなときには、百々漢陰のいうように六君子湯に換えることがある。これは今風にいえば、患者のQOLを重視した治療である。
 百々漢陰のような先人があったことを、われわれは誇りにしてよいことである。








 A半夏瀉心湯
2 半夏瀉心湯 みぞおちがつかえ、げっぷが出ているような人に。暴飲暴食で胃が疲れているようなとき、二日酔いで食欲がないとき、また口内炎にもよく用いられます。

 出典
 『傷寒論』、『金匱要略』
    1)心下満ちて痛まざる証。(『傷寒論』太陽病下篇)
    2)嘔して腸鳴り、心下痞する証。(『金匱要略』嘔吐えつ下利病篇)

腹候
腹力中等度よりやや軟(2-3/5)。軽度の心下痞ごうを認める。

気血水
気水中心の気血水

六病位
少陽病。

脈・舌
舌苔は白から微黄。脈は滑。

口訣
●これは邪気が水邪を挟んで心下に結ばれ、痞ごうを起こして升降の気を阻み、あるいは水邪が上下に動いて時に嘔吐、腹中雷鳴、下痢を発する等の証に対する薬方である。(奥田謙藏)
●心下部の痞塞感が第一で、悪心、嘔吐、食欲不振を訴え、他覚的には心下部に抵抗をみとめ、しばしば胃内停水、腹中雷鳴、下痢を伴い、舌白苔を生じることが多い。(矢数道明)

本剤が適応となる病名・病態
a 保健適応病名・病態
効能または効果
みぞおちがつかえ、ときに悪心、嘔吐があり、食欲不振で腹が鳴って軟便または下痢の傾向のあるものの次の諸症:急・慢性胃腸カタル、発酵性下痢、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔い、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症。

b 漢方的適応病態
脾胃不和。すなわち悪心、嘔吐、吃逆、上腹部の膨満感とつかえなどの胃気上逆の症候に、腹鳴、下痢などを伴うもの。

構成生薬
半夏5、黄ごん2.5、人参2.5、甘草2.5、大棗2.5、乾姜2.5、黄連1.0、(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
和胃降逆・消痞・止瀉・清熱・調和調胃。

より深い理解のために
北京中医薬大学の劉渡舟教授によれば、「別な言い方では、清上温下(上部の熱を冷まし下部の寒を温める)・苦降辛開(黄連黄ごんの苦味で胃気を降下させ、乾姜の辛で脾気を開く)・けん痰消痞(半夏により痰飲を取り除き、心下痞満を消失させる)」という。教授は、心下痞満に痰飲の症候を伴ったものとして、痰飲の存在を重視している(劉渡舟著、『中国傷寒論』)。この見解は口訣の引用した奥田謙藏の解釈とも共通する。

効果増強の工夫
急性の胃腸炎などに五苓散と併用する。
 処方例)ツムラ半夏瀉心湯 5.0g
      ツムラ五苓散     5.0g 分2食前

慢性炎症性疾患などに四君子湯併用し下痢改善と補気作用を期待する。
 処方例)ツムラ半夏瀉心湯 5.0g
      ツムラ五苓散    5.0g 分2食前

本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)胃炎・胃散過多症・胃拡張消・胃下垂・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・悪阻・胃腸カタル・薬物副作用・神経性嘔吐等で心下部がつかえ、嘔吐下痢、胸やけ、食欲不振腹鳴、の内の一つ或は二つ以上あるもの。
2)口中糜爛・便秘・吃逆・食道痛・胃痛・腹満痛等で心下がつかえるもの。
3)肺結核で心下部硬く腹鳴するものに使った例がある。
4)蓄膿症で心下痞ごうするを治した例がある。
5)視力障害で心下痞するを治した例がある。
6)喘息で心下痞するもの。
7)心中煩悸・悲傷・癇・精神分裂症等で心下痞するもの。
8)月経不順・経閉で心下痞するものを治した例がある。
9)鼠毒で心下痞するものを治した例がある。
10)浮腫で心下痞するもの。









 B補中益気湯が、すぐ効く漢方薬です。
25)補中益気湯(ほちゅうえっきとう)=低下した気力、体力を補い、免疫能を高める漢方薬!
出典 李東垣著『内外傷弁惑論』
『弁惑論』の記述はやや要領を得ないので、後世の『万病回春』を引用する。
●中気不足し、あるいは誤りて剋伐し(誤って強い薬を服し)、四肢倦怠、口渇き発熱して、飲食味なく、あるいは飲食節を失し、労倦身熱くし、脈洪大にして力なく、あるいは頭痛悪寒自汗し、あるいは気高くして喘し、身熱して煩し、脈微細軟弱、自汗、体倦食少なく。あるいは中気虚弱にして血を摂むること能はず。あるいは飲食労倦して瘧痢等の症を患い、脾胃虚するに因り愈えること能わざる者を治す。(『万病回春』補益門)

腹候
腹力、中等度かそれ以下。ときに胸脇苦満や臍上悸を認める。

気血水
気血水いずれも関わる。

六病位
少陽病。

脈・舌
中気下陥・清陽不升では、脈は虚大。舌質は淡紅〜淡白。気虚の発熱では、脈は洪大で、沈取すると無力。舌質はやや紅、苔は白。

口訣
●小柴胡湯の虚状を帯ぶるものに用ゆべし。(浅田宗伯)
●津田玄仙(1737-1809)は八つの目標を示した。手足倦怠。言語軽微。脈に勢いがない、口中白沫、食味がない、熱物を好む、臍にあたって動悸、脈散大で力なし。(『療治茶談』)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症。

b 漢方的適応病態:脾胃気虚の次の症候
1)中気下陥・清陽不升。すなわち、元気がない、疲れやすい、四肢がだるい、動作がおっくうである、立ちくらみ、頭の鈍痛、眠くなる(特に食後)、頭がボーっとする、汗をかきやすい、息切れ、便秘あるいは泥状〜水様便などの症候、あるいは胃アトニー、遊走腎、脱肛、子宮脱、ヘルニアなど。

2)脾不統血(気不摂血)。すなわち、脾胃気虚の症候とともに生じる少量かつ間欠的に持続する出血で、下半身や皮下の出血が多い。婦人では月経周期の短縮や過多月経が生じ、経血はうすいことが多い。

3)気虚の発熱。すなわち、慢性に繰り返す微熱で精神的、肉体的に労に伴って発生する。頭痛、悪寒、自汗などがみられることもある。

構成生薬
人参4、白朮4、黄耆4、当帰3、陳皮2、大棗2、柴胡2、甘草1.5、生姜0.5、升麻1(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
 補気健脾・升陽拳陥・甘温除熱。

より深い理解のために 補気作用とは抗うつ作用を含むものと考えられる。

効果増強の工夫
人参の増量(2〜3gを加味)、少量の附子を加味するなどがある。
全身倦怠感などの改善に、腎虚があれば六味丸や八味地黄丸とごうほうするのはよい手段である。
 処方例) ツムラ補中益気湯 5.0g
       ツムラ六味丸    5.0g  分2食前

本方で先人は何を治療したか?

●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
結核症・夏やせ、病後の疲労・虚弱体質改善・食欲不振・虚弱者の感冒・痔疾・脱肛・子宮下垂・胃下垂症・陰萎・半身不随・多汗症・風邪ひきやすき者・虚弱児体質改善等。
●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
疲労状態、夏やせ、感冒。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
胃アトニータイプの者のカゼが長引いて微熱や痰や盗汗のとれない場合。同様な体質者の肋・腹膜炎、肺結核、慢性副鼻腔炎。虚弱者の痔核、脱肛。胃腸の弱い虚弱者の病後や術後の体力回復。低血圧症。









 8)「眠れない人」には、@加味帰脾湯 
出典 襲廷賢著『済生全書』
●思慮して脾をやぶり、血を摂すること能わず、血妄行をいたし、或は下り、或は健忘、



A抑肝散 B酸棗仁湯が、すぐ効く漢方薬です。

 9)「肩がこる人」には、@葛根湯 A二朮湯 B加味逍遥散が、すぐ効く漢方薬です。

10)「冷える人」には、@当帰四逆加呉茱萸生姜湯 A人参養栄湯 B八味地黄丸 C温経湯 D当帰芍薬散 E人参湯が、すぐ効く漢方薬です。

11)「咳が長引く人」には、@麦門冬湯 A清肺湯 B柴朴湯 C半夏厚朴湯 D参蘇飲 E柴陥湯 F五虎湯が、すぐ効く漢方薬です。

12)「風邪をひきやすい人」には、@補中益気湯 A十全大補湯 B柴胡桂枝湯が、すぐ効く漢方薬です。

13)「風邪をひいてしまった人」には、@葛根湯 A麻黄附子細辛湯 B麻黄湯 C小青竜湯 D葛根湯加川弓辛夷が、すぐ効く漢方薬です。

14)「手足がしびれる人」には、@牛車腎気丸 A真武湯 B八味地黄丸が、すぐ効く漢方薬です。

15)「認知症に伴う周辺症状」には、@抑肝散 A釣籐散が、すぐ効く漢方薬です。

16)「お年寄りの諸問題」には、@牛車腎気丸 A八味地黄丸が、すぐ効く漢方薬です。





V すぐに効く漢方薬を試してみる
二日酔い
便秘
乗物酔い
こむら返り

W 漢方医学を勉強してみる
「寒」と「熱」
「不足」と「過剰」

X 漢方薬の飲み方を工夫してみる

Y よくある患者さんの質問とベストアンサー

服用のタイミング Q1,Q2,Q3
漢方薬の効果・服用期間 Q4,Q5
併用について Q6,Q7
副作用と安全性 Q8,Q9
漢方薬と医療経済 Q10,Q11



ステップ1,2,3で「困った」を解決してみる

医学がどんなに進歩しても治しにくい症状があります。命に関わるものではないけれどじわじわと患者さんを苦しめる、そんな症状は漢方薬が得意とする分野です。ここではそれぞれの症状に3つの漢方薬を提案します。体格や体質により効果のある漢方薬は違ってきます。1,2,3はいずれも各症状に使われる代表的な漢方薬で、患者さんに合わせて使い分けられています。

■かゆい

1 黄連解毒湯 「かゆい」にはまずこの漢方薬。特にアトピー性皮膚炎に多く使われます。体を冷やす黄連を含んでいます。苦いので飲みにくい場合はオブラートに包むなどのひと工夫を。
   1 出典 王Z著『外台秘要』
  ●時疾、煩悶に苦しみ、乾嘔、口燥、呻吟、錯語して臥すを得ざるを治す。
 より深い理解のために 時疾は時病時令病ともいい、その季節に多発する病を指す。伝染性、流行性のものが少なくない。

   2 腹候
   腹力中等度前後。心下痞鞭を認めることがある。

   3 気血水
    気水主体の気血水。

   4 六病位
   少陽病。

   5 脈・舌
   脈は数で有力。舌質は紅、黄苔。

   6 口訣
  ●のぼせて胃部がつかえるもの、あるいは軟便で便秘したり、目が充血するもの。(『現代漢方治療の方針』)
  ●本方は充血を去り、精神不安をのぞくから、喀血、吐血には止血と同時に精神症状も消散させる。

   7 本剤が適応となる病名・病態
 a 保険適応病名・病態
  効能または効果
  比較的体力があり、のぼせ気味で、いらいらする傾向のあるものの次の諸症:喀血、吐血、下血、脳溢血、高血圧、心悸亢進、ノイローゼ、皮膚そう痒症、胃炎。
 b 漢方的適応病態
 1)熱盛。すなわち高熱、顔面紅潮、目の充血、熱感、口や咽のかわき、口が苦い、いらいら、転々反側、不眠などで、甚だしければ意識障害、狂躁状態を呈する。
 2)血熱妄行。すなわち、熱盛に伴う各種の出血あるいは発疹。
 3)肝胆湿熱・脾胃湿熱・膀胱湿熱。すなわち、くちがねばる、口が苦い、口臭、歯痛、悪心、嘔吐、胸脇部や腹部の膨満感、腹痛などがあり、黄疸、あるいは膿血性の下痢、裏急後重あるいは頻尿、排尿痛などが生じる。発熱を伴うことが多い。
 4)心火旺・肝胆火旺・胃熱。いらいら、のぼせ、顔面紅潮、目の充血、口臭、口が苦い、口渇、口内炎、動悸、頭がさえて眠れない、気分が落ち着かない、胸脇部が張って苦しい、上腹部痛、悪心などの症候。
  
 より深い理解のために
 「熱盛(実熱、実火)」とは炎症症状をいい、「三焦の実火」とは全身の炎症を意味する。また、これに伴う脳の充血や自律神経系興奮による血管透過性増大に伴う出血や発疹のことである。
 「湿熱」とは、炎症とともに炎症性滲出や水分の吸収、排泄の障害がみられるもので、消化器系、泌尿器系の炎症で生じる。
 「心火旺・肝胆火旺・胃熱」は、主に脳の興奮性増大、脳の充血、自律神経系の興奮などによる症候で、軽度の炎症も介在する。不眠、動悸、落ち着きがないなどの大脳皮質や心臓の駆血能に関連した症候を「心火旺」、いらいら、胸脇部の張った痛み、怒りっぽいなど自律神経系の失調に関連した症候を「肝胆火旺」、悪心、上腹部痛、歯痛など丈夫消化器系に関連した症候を「胃熱」という。

   8 構成生薬
  黄ごん3、黄連2、山梔子2、黄柏1.5。(単位g)
 より深い理解のために 本方は三焦の実火(実熱・熱盛)に対する基本処方。

   9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
 清熱瀉火・解毒・清熱化湿・止血。

  10 効果増強の工夫
 効果を増強する目的で、大黄を加味。東洞は、去黄柏加大黄として好んで用いたという。東洞の治験を追試するには、三黄瀉心湯を合方すればよさそうである。
   処方例) ツムラ黄連解毒湯 5.0g
         ツムラ三黄瀉心湯 5.0g  分2朝夕食前

  11 本方で先人は何を治療したか?
 ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
 吐血・喀血・衂血・下血・血尿・麻疹・痘瘡・皮膚病・皮膚そ痒症、蕁麻疹・諸熱性病の残余余熱・狂躁症(喜笑やまざる症)・血の道症・めまい・心悸亢進症・ノイローゼ・精神病・脳溢血・高血圧症・酒渣症・黒皮症など。

 ●瀧野一雄著『改訂新版漢方処方集』より
 (吉益南涯の黄解散として)喀血、吐血、鼻血。

 ●桑木崇秀
 脳充血または高血圧、脳梗塞による精神不安や不眠、喀血、吐血、衂血、眼出血(球結膜下出血、網膜出血)、過飲による心煩・急性胃炎、火傷後の興奮、皮膚掻痒症で赤みが強く痒さのひどいもの。




2 消風散 分泌物が多い湿疹でかゆみが強いものにはこの処方も使われます。

  1 出典 『外科正宗』 
  ●風湿血脈に浸淫し、瘡疥を生ずるを致し、掻痒絶えざるを治す。および大人小児、風熱いん疹身に遍く、雲片斑点、たちまち有り、たちまち無きに、並び効あり。(『外科正宗」瘡疥門)

  2 腹候
  腹力中等度前後。腹部皮膚に肌膚甲錯を認める。

  3 気血水
  血水が主体の気血水。

  4 六病位
  少陽病。

  5 脈・舌
  脈は数。舌質は紅、舌苔は微黄。

  6 口訣
  ●慢性の皮膚疾患にバランスのよい薬方である。(道聴子)
  ●急性症状には無効で、この場合は越婢加朮湯が適する。(『現代漢方治療の指針』)
  ●本方は、湿疹群、蕁麻疹群、痒疹群に対する代表処方である。(『中医処方解説』)

  7 本剤が適応となる病名・病態
  a 保険適応病名・病態
  効能または効果
  分泌物が多く、かゆみの強い慢性の皮膚病(湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚そう痒症)。

  b 漢方的適応病態
  風湿熱の皮疹。すなわち、かゆみが強い(夜間に増悪する傾向がある)、局所の発赤と熱感、滲出液が多いあるいは水泡形成、体のほてりや熱感、口渇などがみられる。

  8 構成生薬
  石膏3、地黄3、当帰3、牛蒡子2、蒼朮2、防風2、木通2、知母1.5、甘草1、苦参1、荊芥1、胡麻1.5、蝉退1。(単位g)

  9 TCM(Traditional Chinese Medicine)、的解説
  疏風・清熱化湿・養血潤燥。

  より深い理解のために
  「疎風」とは、きょ風解表薬を用いて、風邪を疏散する治方。風寒表証には防風、桂枝、藁本などを用い、風熱表証には薄荷、牛蒡子などを用い、風湿表証には羌活、白しなどを用いる。

  10 効果増強の工夫
   1)十味敗毒湯を合方してきょ風化湿・清熱解毒作用を増強する。
   処方例) ツムラ消風散 7.5g
         ツムラ十味敗毒湯 5.0g(1-0-1)  分3食前
 
   2)黄連解毒湯を合方して清熱作用を増強する
   処方例) ツムラ消風散 7.5g
         ツムラ黄連解毒湯 5.0g(1-0-1)  分3食前

   11 本方で先人は何を治療したか?
   ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
  すべて頑固な皮膚病、湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚掻痒症、夏季に悪化する皮膚病など。
   ●瀧野一雄著『改訂新版漢方処方解説』より
   頑固乾燥性で、夏季また温暖時に増悪する皮膚病、蕁麻疹。




3 当帰飲子 入院中やお年寄りの患者さんで体力が低下した人のかゆみの訴えに処方されることが多い漢方薬です。皮膚がカサカサして乾いた感じの湿疹に。

   1 出典 厳用和著『済生方』
   ●心血凝滞し、風熱を内蘊※し、発して皮膚に現れ、遍身瘡疥のものを治す。(つつむ)(『済生方』)

   2 腹候
    腹力中等度よりやや軟。皮膚乾燥あり。

   3 気血水
    血、水が主体である。

   4 六病位
    太陰病。

   5 脈・舌
    原則的に、舌質は暗紅、舌苔は薄く、脈は細。

   6 口訣
   ●この方は老人が血燥して、瘡疥を生ずるのに良い。さらに熱が加わって血熱となったものが温清飲である(浅田宗伯)
   ●炎症、浮腫の介在するものには不適。(『中医処方解説』)

   7 本剤が適応となる病名・病態
    a 保険適応病名・病態
   効能又は効果
   冷え症のものの次の諸症:慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ。
    b 漢方的適応病態
    血虚生風。すなわち、皮膚がかさかさしてつやがない。粃糠様の落屑、小さな皸裂、遊走性のかゆみ、かきむしって少量の出血や血痂がみられる、発赤や滲出物はみられないなどの症候。

  より深い理解のために 藤平健先生は当帰飲子を老人性の乾燥性皮膚掻痒症にしばしば用いられた。

   8 構成生薬
    当帰5、地黄4、しつ藜子3、芍薬3、川きゅう3、防風3、何首烏2、黄耆1.5、荊芥1.5、甘草1。

   9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
    養血潤燥・きょ風(補血潤燥・止痒)。

   10 効果増強の工夫
    しつ藜子、何首烏などの生薬の入った漢方は少ないので、高齢者疾患の治療目的に積極的に他薬と合方されてよい漢方である。
    高齢者の皮膚掻痒症で一時的に悪化したものに、(熱を抑えつつ、潤す作用を期待して)
     処方例) ツムラ当帰飲子  7.5g 
           ツムラ黄連解毒湯 5.0g(1-0-1)  分3食前、または食後

   11 本方で先人は何を治療したか?
    ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
     皮膚掻痒症・痒疹・瘡疥(ひぜん)・そのた乾燥性皮膚疾患、慢性湿疹など。
    ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
     貧血で冷え症の、皮膚がかさかさした皮膚掻痒症











「かゆみ」の種類で漢方薬を使い分ける
 「かゆみ」の性格は多様です。漢方薬はそうしたかゆみの種類に合わせて処方されます。アトピー性皮膚炎のような熱のあるかゆみには冷やす薬を、冷えのある人には温める漢方薬が使われます。

蝉の抜け殻がかゆみ止めに!
消風散は13種もの生薬で構成されています。このなかにはゼンタイ(蝉退)という蝉の抜け殻の成分も含まれています。蝉の抜け殻はかゆみ止めや解熱作用があることが知られています。

■だるい

1 十全大補湯 体力・気力の低下に加えて、貧血気味でお肌もカサカサという体全体の衰えのある場合はこの処方も適しています。

   1 出典 陳師文ほか編『和剤局方』
   ●男子婦人、諸虚不足、五労七傷、飲食進まず、久病虚損、時に潮熱を発し、気骨脊を攻め、拘急疼痛、夜夢遺精、面色痿黄、脚膝力なく、一切病後、気旧のごとからず、憂愁思慮、気血を傷動し、喘嗽中満、脾胃の気弱く、五心煩悶するを治す。(補虚損附骨蒸門)

   2 腹候
    腹力中等度前後。悪性腫瘍治療の補助療法の際には脾胃への納まりがよければ、腹力や腹候にはこだわらずに用いてよい。これはその他の気血双補薬についても当てはまる。

   3 気血水
    気血水のいずれとも関わる。

   4 六病位
    太陰病。

   5 脈・舌
    脈は沈細弱。舌質は淡白で胖大。

   6 口訣
   ●この方、局方の主治によれば、気血虚するというが八珍湯の目的にて、寒というが黄耆、肉桂(桂皮)の目的なり。また、黄耆を用うるは人参に力を併せて自汗、盗汗を止め、表気を固むるの意なり(固表)。(浅田宗伯)
   ●この方は、気血、陰陽、表裏、内外、皆虚したものを大いに補う、という意味で十全大補湯と名付けられた。(矢数道明)

   7 本剤が適応となる病名・病態
   a 保険適応病名・病態
   効能または効果
   病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血。
 
   b 漢方的適応病態
   気血両虚。すなわち、元気がない、気力がない、疲れやすい、倦怠無力感、食欲不振、軟便〜泥状便などの気虚の症候と、顔色が悪い、皮膚につやがない、頭がふらつく、目がかすむ、四肢のしびれ感、筋肉のひきつりなどの血虚の症候がみられるもの。

   8 構成生薬
   黄耆3、 桂皮3、地黄3、芍薬3、川きゅう3、蒼朮3、当帰3、人参3、ぶくりょう、甘草1.5。(四君子湯+四物湯+桂皮、黄耆)(単位g)

   9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
    温補気血(あるいは、気血双補・温陽きょ寒)。

   より深い理解のために
   本方は気血両虚に対して全面的な効能をもつが、構成薬物が多いので急性の失血や極度の衰弱の改善には無理があり、他の適切な手段を講じる必要がある。

   10 効果増強の工夫
    1)最初は、内容生薬の増強を図る。
      処方例) ツムラ十全大補湯 7.5g
            ツムラ紅参末    3.0g  分3食前

    2)内容に含まれない生薬を加味する。
     処方例) ツムラ十全大補湯  7.5g 
           ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.5g ぶん3食前

    11 本方で先人は何を治療したか?
    ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
    諸貧血症・産後・手術後の衰弱・諸熱性病後の衰弱・癰疽の後・痔瘻・カリエス・腎臓結核・瘰癧・白血病・諸出血の後・視力減退・脱肛・子宮癌・乳癌等。
    ●瀧野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
    疲労、衰弱、貧血、失血、産後、手術後、カリエス、痔瘻、るいれき、白血病、脱肛、神経衰弱、遺精、視力減退。或は男子婦人諸虚不足、一切病後に気もとの如く回復せざるもの。

    ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
    大病後や手術後などの全身衰弱、貧血。カリエス、寒性膿瘍。その他、貧血性で、気力・体力ともに衰えた場合(食欲不振・下痢のある場合を除く)。





2 補中益気湯 体力・気力が低下して、目尻や口角が下がり、肩もがっくり落ちていて時に寝汗をかくような人に。気力を充実させてだるさをとる処方です。

   1 出典 李東垣著『内外傷弁惑論』
   『弁惑論』の記述はやや要領を得ないので、後世の『万病回春』を引用する。
  ●中気不足し、あるいは誤りて剋伐し(誤って強い薬を服し)、四肢倦怠、口渇き発熱して、飲食味なく、あるいは飲食節を失し、労倦身熱し、脈洪大にして煩し、脈微細軟弱、自汗、体倦食少なく。あるいは中気虚弱にして血を摂むること能はず。あるいは飲食労倦して瘧痢等の症を患い、脾胃虚するに因りて愈えること能わざる者を治す。(『万病回春』補益門)

   2 腹候
   腹力、中等度かそれ以下。ときに胸脇苦満や臍上悸を認める。

   3 気血水
   気血水いずれも関わる。

   4 六病位
   少陽病。

   5 脈・舌
   中気下陥・清陽不升では、脈は虚大。舌質は淡紅〜淡白。気虚の発熱では、脈は洪大で、沈取すると無力。舌質はやや紅、苔は白。

   6 口訣
   ●小柴胡湯の虚状を帯ぶるものに用ゆべし。(浅田宗伯)
   ●津田玄仙(1737-1809)は八つの目標を示した。手足倦怠、言語軽微、眼に勢いがない、口中白沫、食味がない、熱物を好む、臍にあたって動悸、脈散大で力なし。(『療治茶談』)

   7 本剤が適応となる病名・病態
   a 保険適応となる病名・病態 
   効能または効果
   消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症。

   b 漢方的適応病態:脾胃気虚の次の症候
    1)中気下陥・清陽不升。すなわち、元気がない、疲れやすい、四肢がだるい、動作がおっくうである、立ちくらみ、頭の鈍痛、眠くなる(特に食後)、頭がボーっとする、汗をかきやすい、息ぎれ、便秘あるいは泥状〜水様便などの症候、あるいは胃アトニー、遊走腎、脱肛、子宮脱、ヘルニアなど。
    2)脾不統血(気不摂血)。すなわち、脾胃気虚の症候とともに生じる少量かつ間欠的に持続する出血で、下半身や皮下の出血が多い。婦人では月経周期の短縮や過多月経が生じ、経血はうすいことが多い。
    3)気虚の発熱。すなわち、慢性に繰り返す微熱で精神的、肉体的疲労に伴って発生する。頭痛、悪寒、自汗などがみられることもある。

   8 構成生薬
   人参4、白朮4、黄耆4、当帰3、陳皮2、大棗2、柴胡2、甘草1.5、生姜0.5、升麻1。 (単位g)

   9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
   補気健脾・升陽挙陥・甘温除熱。

  より深い理解のために
   補気作用とは抗うつ作用を含むものと考えられる。

    10 効果増強の工夫
    人参の増量(2〜3gを加味)、少量の附子を加味するなどがある。
    全身倦怠感などの改善に、腎虚があれば六味丸や八味丸を合方するのはよい手段である。
       処方例) ツムラ補中益気湯 5.0g
             ツムラ六味丸    5.0g  分2毎食前

    11 本方で先人は何を治療したか?
     ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
     結核症・夏痩せ・病後の疲労・虚弱体質改善・食欲不振・虚弱者の感冒・痔疾・脱肛・子宮下垂・胃下垂症・陰痿・半身不随・多汗症・風邪ひきやすき者・虚弱児体質改善等。
     ●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
     疲労状態、夏やせ、感冒。
     ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
     胃アトニータイプの者のカゼが長引いて微熱や痰や盗汗のとれない場合。同様な体質者の肋・腹膜炎、肺結核、慢性副鼻腔炎。虚弱者の痔核、脱肛。胃腸の弱い虚弱者の病後や術後の体力回復。低血圧症。




3 人参養栄湯 病後や術後のだるさにはこの処方も考えます。冷えや貧血がある場合に使ってみたい漢方薬です。呼吸器系の症状があるときに使用します。

   1 出典 『和剤局方』
   ●積労虚損にて四肢沈滞、骨肉酸疼、呼吸として気少なく、行動喘啜(あえぎすすりなく)、小腹拘急、腰背強痛、心虚驚悸、咽乾き唇燥き、飲食味無く、陰陽衰弱、悲憂惨戚、多臥少起、久しきものは積年、急なるものは百日、漸く痩削に至り、五臓の気竭て、振復すべきこと難きを治す。また、肺と大腸がともに虚し、咳嗽下利、喘乏少気、痰涎を嘔吐するを治す。

   2 腹候
   腹力中等度前後。悪性腫瘍治療の補助療法の際には胃腸への納まりがよければ、腹力や腹候にはこだわらずに用いてよい。これはその他の気血双補薬についても当てはまる。心下痞ごうを認める。

   3 気血水
   気血主体の気血水。

   4 六病位
   太陰病。

   5 脈・舌
   舌質は淡白。脈は沈細弱。

   6 口訣
   ●頑固な咳嗽が続き、衰弱のために麻黄剤が使えないが、麦門冬湯、半夏厚朴湯、柴胡剤などでも効果がない場合に本方を試みるとよい。(『現代漢方治療の方針』)
   ●この方は、気血両虚を主とすれども、十補湯(十全大補湯)に比すれば、遠志、橘皮、五味子ありて脾肺を維持するの力優なり。(浅田宗伯)

   7 本剤が適応となる病名・病態
   a 保険適応病名・病態
    効能または効果
    病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振・ねあせ、手足の冷え、貧血。

   b 漢方的適応病態
    気血両虚・虚寒。すなわち、健忘、眠りが浅い、動悸などの心血虚の症候や、自汗、息切れ、咳嗽、喀痰などの肺気虚の症候に、寒気、四肢の冷えなどの虚寒の症候を伴うもの。

   8 構成生薬
    地黄、当帰4、白朮4、茯苓、人参3、桂皮2.5、遠志2、芍薬2、陳皮2、黄耆1.5、甘草1、五味子1。(単位g)

  より深い理解のために
  本方は十全大補湯の川きゅうを除き、五味子、遠志、陳皮を加えたものに相当する。

    TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
    気血双補・安神・きょ寒・止咳。

   10 効果増強の工夫
    不眠が強ければ、酸棗仁湯を合方する場合がある。
    処方例)  ツムラ人参養栄湯  6.0g
           ツムラ酸棗仁湯   5.0g  分2食前

   11 本方で先人は何を治療したか?
    ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
   病後衰弱、産後衰弱症、結核症の衰弱。毛髪脱落、顔色光沢なく枯燥、心悸亢進、不眠、健忘症などのあるもの。
    ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
   大病後や手術後などの全身衰弱・貧血、呼吸器疾患の回復期で、咳・盗汗などの残るもの、その他、貧血性で、気力、体力ともに衰え、健忘・不眠・乾咳などのあるもの。



だるさに使われるその他の漢方薬
 他にも、冷え・貧血がある女性には当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、夏ばてには清暑益気湯(セイショエッキトウ)なども使われます。

「補剤」で気力・体力の底上げを

上の3つの処方は補剤の代表格です。補剤とは不足したものを補う漢方薬の総称です。低下している体の機能を回復させて気力・体力を補うことを目的に使います。「だるい」という訴えの背景には体の機能が低下して気力・体力が不足した状態があるので、補剤の効果が期待できるのです。




■食欲がない

1 六君子湯 食欲不振にはまずこの漢方薬をためしてください。機能性ディスペプシアから抗がん剤などの副作用による食欲不振まで、幅広く解決してくれる頼もしい漢方薬です。

   1 出典 りゅう延賢著『万病回春』
   ●脾胃虚弱、飲食少しく思ひ、或は久しく瘧痢を患ひ、若くは内熱を覚え、或は飲食化し難く、酸を作し、虚火に属するを治す。須らく炮姜を加えて其効甚だ速やかなり。(補益門)

   2 腹候
   腹力中等度以下。胃内停水を認める。

   3 気血水
   気と水が主体。

   4 六病位
   少陽病

   5 脈・舌
   舌質は淡白で胖大、舌苔は白滑、白厚膩。脈は軟滑、滑弱。

  より深い理解のために
  白膩厚苔は水分の吸収、排泄障害を示すとされる。

   6、口訣
  ●この方は理中湯の変方にて、中気をたすけ、胃を開くの効あり。ゆえに老人、脾胃虚弱にして、痰あり、飲食を思わず、あるいは大病後、脾胃虚し、食味無きものに用う。(浅田宗伯)
  ●畢竟、脾胃虚弱、水湿を帯びるものを治す。死が近くなった病人に、(末期だからといって)附子剤を与えるのはいだずらに苦しめるだけになりかねない。その時に六君子湯を与えれば元気も引き立ちて至って楽になるものだ。(『梧竹樓方函口訣、脾胃門』百々漢陰、百々鳩窓著)

   7.本剤が適応となる病名・病態
   a 保険適応となる病名・病態
   効能または効果
   胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐。
   b 漢方的適応病態
   脾胃気虚の痰湿(脾虚生痰)。すなわち、元気がない、疲れやすい、、食欲がない、食べると腹が脹るなどの脾胃気虚の症候に、悪心、嘔吐、呑酸、上腹部のつかえ、水様便、胸苦しい、咳嗽、痰が多い、あるいは浮腫などの痰湿の症候を伴うもの。

   8.構成生薬
   人参4、白朮4、茯苓4、陳皮2、大棗2、甘草1、生姜0.5。(単位g)

   9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
   補気健脾・理気化痰・利水消腫(気を増して胃腸を調え、気をめぐらせて消化管の水を除く)。

   より深い理解のために
   本方は気の不足を補って、胃腸機能を高め、水滞をさばき、補中益気湯の弟分といった趣の漢方である。元気になるとうつ状態も改善される。

   10 効果増強の工夫
    六君子湯は多くの方剤に含まれ、その薬効の中心部分を構築している。六君子湯を分解すると、四君子湯と二陳湯になる。補気が必要であれば、少量(たとえば2.5gほど)の四君子湯を合わせることもあり得る。胃内の水のさばきを重視すれば、少量の二陳湯を追加する場合もあるであろう。そのようにして患者の病態に合わせていくのである。

   11 本方で先人は何を治療したか?
   ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
  慢性胃炎・胃下垂症・胃アトニー症等に用いられ、また慢性腹膜炎・胃癌・胃潰瘍・消化不良症・自家中毒症・食欲不振・虚弱者の胃腸型感冒・嘔吐・悪阻・神経衰弱症・肩こり・虚弱者や老人、脳溢血患者の養生薬に応用される。
   ●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
  四君子湯の症で胃液分泌過多のあるもの、胃弱、胃液分泌過多、胃下垂。
   ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
  胃アトニー、胃下垂、慢性胃炎。慢性下痢のある場合には四君子湯がよい。



 



2 半夏瀉心湯 みぞおちがつかえ、げっぷが出ているような人に。暴飲暴食で胃が疲れているようなとき、二日酔いで食欲がないとき、また口内炎にもよく用いられます。

 出典
 『傷寒論』、『金匱要略』
    1)心下満ちて痛まざる証。(『傷寒論』太陽病下篇)
    2)嘔して腸鳴り、心下痞する証。(『金匱要略』嘔吐えつ下利病篇)

腹候
腹力中等度よりやや軟(2-3/5)。軽度の心下痞ごうを認める。

気血水
気水中心の気血水

六病位
少陽病。

脈・舌
舌苔は白から微黄。脈は滑。

口訣
●これは邪気が水邪を挟んで心下に結ばれ、痞ごうを起こして升降の気を阻み、あるいは水邪が上下に動いて時に嘔吐、腹中雷鳴、下痢を発する等の証に対する薬方である。(奥田謙藏)
●心下部の痞塞感が第一で、悪心、嘔吐、食欲不振を訴え、他覚的には心下部に抵抗をみとめ、しばしば胃内停水、腹中雷鳴、下痢を伴い、舌白苔を生じることが多い。(矢数道明)

本剤が適応となる病名・病態
a 保健適応病名・病態
効能または効果
みぞおちがつかえ、ときに悪心、嘔吐があり、食欲不振で腹が鳴って軟便または下痢の傾向のあるものの次の諸症:急・慢性胃腸カタル、発酵性下痢、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔い、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症。

b 漢方的適応病態
脾胃不和。すなわち悪心、嘔吐、吃逆、上腹部の膨満感とつかえなどの胃気上逆の症候に、腹鳴、下痢などを伴うもの。

構成生薬
半夏5、黄ごん2.5、人参2.5、甘草2.5、大棗2.5、乾姜2.5、黄連1.0、(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
和胃降逆・消痞・止瀉・清熱・調和調胃。

より深い理解のために
北京中医薬大学の劉渡舟教授によれば、「別な言い方では、清上温下(上部の熱を冷まし下部の寒を温める)・苦降辛開(黄連黄ごんの苦味で胃気を降下させ、乾姜の辛で脾気を開く)・けん痰消痞(半夏により痰飲を取り除き、心下痞満を消失させる)」という。教授は、心下痞満に痰飲の症候を伴ったものとして、痰飲の存在を重視している(劉渡舟著、『中国傷寒論』)。この見解は口訣の引用した奥田謙藏の解釈とも共通する。

効果増強の工夫
急性の胃腸炎などに五苓散と併用する。
 処方例)ツムラ半夏瀉心湯 5.0g
      ツムラ五苓散     5.0g 分2食前

慢性炎症性疾患などに四君子湯併用し下痢改善と補気作用を期待する。
 処方例)ツムラ半夏瀉心湯 5.0g
      ツムラ五苓散    5.0g 分2食前

本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)胃炎・胃散過多症・胃拡張消・胃下垂・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・悪阻・胃腸カタル・薬物副作用・神経性嘔吐等で心下部がつかえ、嘔吐下痢、胸やけ、食欲不振腹鳴、の内の一つ或は二つ以上あるもの。
2)口中糜爛・便秘・吃逆・食道痛・胃痛・腹満痛等で心下がつかえるもの。
3)肺結核で心下部硬く腹鳴するものに使った例がある。
4)蓄膿症で心下痞ごうするを治した例がある。
5)視力障害で心下痞するを治した例がある。
6)喘息で心下痞するもの。
7)心中煩悸・悲傷・癇・精神分裂症等で心下痞するもの。
8)月経不順・経閉で心下痞するものを治した例がある。
9)鼠毒で心下痞するものを治した例がある。
10)浮腫で心下痞するもの。







3 補中益気湯 補剤には食欲不振を改善する働きもあります。気力の低下がいちじるしい場合には、こうした補剤もためしてください。
  1 出典 李東垣著『内外傷弁惑論』
   『弁惑論』の記述はやや要領を得ないので、後世の『万病回春』を引用する。
  ●中気不足し、あるいは誤りて剋伐し(誤って強い薬を服し)、四肢倦怠、口渇き発熱して、飲食味なく、あるいは飲食節を失し、労倦身熱し、脈洪大にして煩し、脈微細軟弱、自汗、体倦食少なく。あるいは中気虚弱にして血を摂むること能はず。あるいは飲食労倦して瘧痢等の症を患い、脾胃虚するに因りて愈えること能わざる者を治す。(『万病回春』補益門)

   2 腹候
   腹力、中等度かそれ以下。ときに胸脇苦満や臍上悸を認める。

   3 気血水
   気血水いずれも関わる。

   4 六病位
   少陽病。

   5 脈・舌
   中気下陥・清陽不升では、脈は虚大。舌質は淡紅〜淡白。気虚の発熱では、脈は洪大で、沈取すると無力。舌質はやや紅、苔は白。

   6 口訣
   ●小柴胡湯の虚状を帯ぶるものに用ゆべし。(浅田宗伯)
   ●津田玄仙(1737-1809)は八つの目標を示した。手足倦怠、言語軽微、眼に勢いがない、口中白沫、食味がない、熱物を好む、臍にあたって動悸、脈散大で力なし。(『療治茶談』)

   7 本剤が適応となる病名・病態
   a 保険適応となる病名・病態 
   効能または効果
   消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症。

   b 漢方的適応病態:脾胃気虚の次の症候
    1)中気下陥・清陽不升。すなわち、元気がない、疲れやすい、四肢がだるい、動作がおっくうである、立ちくらみ、頭の鈍痛、眠くなる(特に食後)、頭がボーっとする、汗をかきやすい、息ぎれ、便秘あるいは泥状〜水様便などの症候、あるいは胃アトニー、遊走腎、脱肛、子宮脱、ヘルニアなど。
    2)脾不統血(気不摂血)。すなわち、脾胃気虚の症候とともに生じる少量かつ間欠的に持続する出血で、下半身や皮下の出血が多い。婦人では月経周期の短縮や過多月経が生じ、経血はうすいことが多い。
    3)気虚の発熱。すなわち、慢性に繰り返す微熱で精神的、肉体的疲労に伴って発生する。頭痛、悪寒、自汗などがみられることもある。

   8 構成生薬
   人参4、白朮4、黄耆4、当帰3、陳皮2、大棗2、柴胡2、甘草1.5、生姜0.5、升麻1。 (単位g)

   9 TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
   補気健脾・升陽挙陥・甘温除熱。

  より深い理解のために
   補気作用とは抗うつ作用を含むものと考えられる。

    10 効果増強の工夫
    人参の増量(2〜3gを加味)、少量の附子を加味するなどがある。
    全身倦怠感などの改善に、腎虚があれば六味丸や八味丸を合方するのはよい手段である。
       処方例) ツムラ補中益気湯 5.0g
             ツムラ六味丸    5.0g  分2毎食前

    11 本方で先人は何を治療したか?
     ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
     結核症・夏痩せ・病後の疲労・虚弱体質改善・食欲不振・虚弱者の感冒・痔疾・脱肛・子宮下垂・胃下垂症・陰痿・半身不随・多汗症・風邪ひきやすき者・虚弱児体質改善等。
     ●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
     疲労状態、夏やせ、感冒。
     ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
     胃アトニータイプの者のカゼが長引いて微熱や痰や盗汗のとれない場合。同様な体質者の肋・腹膜炎、肺結核、慢性副鼻腔炎。虚弱者の痔核、脱肛。胃腸の弱い虚弱者の病後や術後の体力回復。低血圧症。



食欲不振と漢方薬
 食欲不振は広い領域でみられる訴えで、長く続く場合は患者さんの全身状態と左右しかねません。漢方薬には食欲不振に効果が期待されるものが数多くあります。六君子湯など食欲改善作用の機序が科学的に解明されている漢方薬もあり、西洋医学の臨床でも高い評価を受けています。

六君子湯と食欲亢進ホルモン「グレリン」
六君子湯の作用は科学的にも研究が進み、胃の運動促進、胃げきを弛緩させて食欲を受け入れやすい状態にする、グレリンの分泌亢進など、多彩な作用が解明されています。グレリンとは胃から分泌される食欲亢進作用を持つホルモンです。六君子湯とグレリンの関係には国内外からの関心が集まっています。

■眠れない

1 加味帰脾湯 入院患者さんなどで体力が落ち、顔色が悪いような人に。不眠だけでなく不安などを訴えるタイプによく使われます。

出典 げん廷賢著『済世全書』
●思慮して脾をやぶり、血を摂するこを能わず、血妄行をいたし、あるいは下り、あるいは健忘、せいちゅう、驚悸して寐られず、発熱盗汗し、あるいは心脾傷り痛み、嗜臥少食、大便不調、あるいは血虚発熱し、あるいは肢体重く痛むを治す。婦人月経不調、赤白帯下下し、あるいはほ熱内熱、あるいは瘰癧流注して消散潰斂する能わず、あるいは思慮脾を傷りて瘧痢をなすには、柴胡、梔子を加えて加味帰脾湯と名づく。

腹候
腹力は中等度前後(2-4/5)。臍上悸あるいは臍下悸を認めることがある。

気血水
気血水いずれも関わる。

六病位
少陽病。

脈・舌
舌質は淡白。脈は細弱、無力。

口訣
●帰脾湯の証に熱を兼ねるものに用う。

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症。

b 漢方的適応病態
心脾両虚の肝火旺。すなわち、疲れやすい、倦怠無力感、元気がない、息切れ、食欲不振、腹が張る、軟便や水様便などの脾気虚の症候と、健忘、頭がふらつく、ボーッツとする、めまい感、動悸、眠りが浅い、多夢などの心血虚の症候がみられるもので、さらにイライラ、のぼせ、ほてり、胸苦しいなどの肝火旺の症候を伴うもの。(『中医処方解説』より)

構成生薬
黄耆3、柴胡3、酸棗仁3、蒼朮3、人参3、茯苓3、遠志2、山梔子2、大棗2、当帰2、甘草1、生姜1、木香1、竜眼肉3。(単位g)

より深い理解のために
帰脾湯に柴胡、山梔子が加わり、精神症状や肩こり、身体上部の熱感など疏肝清熱作用を期待したもの。
TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
気血双補・補脾・養心安心・疏肝清熱。

効果増強の工夫
酸棗仁湯を合方して、不眠などに効果増強を期待することがかのうである。
 処方例)ツムラ加味帰脾湯 7.5g
      ツムラ酸棗仁湯 5.0g(1-0-1) 分3食前

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
以下の帰脾湯の証に、やや熱状の加わったもの。すなわち、腸出血・子宮出血・胃潰瘍・血尿などによる貧血と衰弱・白血病・バンチ病・健忘症・嚢腫腎・不眠症等に用いられ、また神経性心悸亢進症・食欲不振・月経不順・ヒステリー・神経衰弱・遺精・慢性淋疾・瘰癧の潰瘍等。

●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
神経衰弱、不眠症、盗汗、健忘症、神経性心悸亢進症・胃弱、熱病回復期、月経不順、血の道症。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
 帰脾湯を使うべき状態で、のぼせ、イライラの強い場合。

ヒント
大塚敬節氏の『症候による漢方治療の実際』には、加味帰脾湯の症例が紹介されている。

加味帰脾湯は帰脾湯に梔子と柴胡を加えた方で、帰脾湯の証で熱状のあるものに用いる。

つまり本方は貧血、健忘、動悸、神経過敏、不眠などのあるものに用いる方で、老人などで、物忘れをして困るというものによく、この症状があって、眠れないものに用いる。老人でなくとも、虚弱な人を目標にする。また軽い中風で、物忘れをし、言語のもつれるものに用いる。
 43歳の男子、腹膜炎にかかったことがある。元来、平素から虚弱な体質であるが、4,5年前より朝、夕に頭痛があり、そのとき悪心を訴える。疲れると背がいたむ。甘い菓子を好む。脈は弱く、腹力もなく、腹部で振水音をきく。
 私はこれに半夏白朮天麻湯を与えた。これで、やや睡眠状態はよいようであったが、3週間ほどのむと、また逆転してねむれなく、背がはるという。
 そこで枳縮二陳湯にしてみたが、これも効果がない。桂氏加竜骨牡蛎湯、甘草瀉心湯、神効湯など次々と用いたが、どれもあまりきかない。
 そこで加味帰脾湯とした。のぼせ、頭痛、不眠、疲労感と胃腸虚弱な点を考慮して、この処方を選んだのである。これをのみ始めてから、2週間ほどたつと安眠できるようになり、血色もよくなった。しかしまだ時々頭痛がある。








2 抑肝散 イライラが強く興奮気味で眠れないときはこの漢方薬をためしてください。子どもの夜泣き、認知症の周辺症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)にもよく使用されます。


出典 薛鎧・薛己(父子でセツガイ・セツキと読む)著『保嬰撮要』
 ●肝経の虚熱、ちくを発し、あるいは発熱咬牙、あるいは驚悸寒熱、あるいは木土に乗じて嘔吐痰涎、腹脹食少なく、睡臥不安なるものを治す。(急驚風門)

腹候
 腹力中等度以下。腹直筋の拘攣を認める。

気血水
 気血水いずれにも関わる。

六病位
 少陽病。

脈舌
 原則的に、舌質はやや紅、舌苔は白、脈は弦細軟。

口訣
 ●(本方を用いる時は)怒りはなしやと問うべし。(目黒道琢)。
 ●この方を大人の半身不随に用いるのは和田東郭の経験である。(浅田宗伯)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症。

b 漢方的適応病態
気血両虚の肝陽化風。すなわち、いらいら、怒りっぽい、頭痛、めまい感、眠りが浅い、頭のふらつき筋肉の痙攣やひきつけ、手足のふるえなどの肝陽化風の症候に、元気がない、疲れやすい、食が細い、皮膚につやがない、動悸、しびれ感などの気血両虚の症候を伴うもの。(『中医処方解説』)

より深い理解のために
五臓の肝と胆の機能を考えよう。肝胆の機能は、「情報の処理と決断」である。

構成生薬
 蒼朮4、茯苓4、川きゅう3、釣藤鈎3、当帰4、柴胡2、甘草1.5。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
 平肝熄風・補気血(平肝鎮驚・理気和胃)。

効果増強の工夫
 1)ふるえ、ふらつきなど風動の症候が強ければ、
 処方例)ツムラ抑肝散  7.5g
      ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯 5.0g(1-0-1) 分3食前

2)いらいら、のぼせ、ほてりなど肝火の症候が強ければ牡丹皮、山梔子などを加える目的で、
 処方例)ツムラ抑肝散  5.0g
      ツムラ加味逍遥散 5.0g 分2朝夕食前

3)悪心、嘔吐、腹分膨満感などの症状と、舌苔が白膩で、痰湿の症候を伴う時は、陳皮、半夏を配した抑肝散加陳皮半夏とする。
   処方例)ツムラ抑肝散加陳皮半夏  7.5g 分3食前

本方で先人は何を治療したか?

 ●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
 癇症・神経症・神経衰弱・ヒステリー等に用いられ、また夜啼・不眠症・癇癪持ち・夜の歯ぎしり・癲癇・不明の発熱・更年期障害・血の道症で神経過敏・四肢衰弱症・陰萎症・悪阻・佝僂病・チック病・脳腫瘍症状・脳出血後遺症・神経性斜頸等に応用される。
 ●龍野一雄編著『改訂新版漢方処方集』より
 痙攣、動悸、或は発熱、或は寒熱、或は嘔吐痰涎、腹脹、食欲不振、不眠のもの、或は左直腹筋緊張、心下部つかえ、四肢拘攣、或は麻痺、不眠、腹動、怒気あるもの。
 ●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
 パーキンソン病、脳出血後のふるえ、乳幼児のひきつけ、夜驚症、眼瞼痙攣、神経性斜頸、歯ぎしりなど。

ヒント
 怒りを外に表す患者への適応は容易だが、現代の日本人は怒りを内に秘めており、そのあまり自分が怒っていることすら自覚しない例がある。「怒り」の有無を丁寧に問うことが本方を活用する鍵であり、症例は以外に多い。メンタルヘルス外来管理の要薬の1つといってよい。





3 酸棗仁湯 心が疲れ弱って眠れないときに使われることの多い漢方薬です。不安があり神経過敏の人に向いています。

出典『金匱要略』
●虚労、虚煩して眠ることを得ざる証。(『金匱要略』血痺虚労病篇)

腹候
腹力は中等度以下で幅広い(1-4/5)

気血水
血主体の気血水。

六病位
太陰病。

脈・舌
脈は弦細数。舌質は紅。

口訣
●血気虚燥、心火たかぶりて不得眠者はこの方の主なり。済世の帰脾湯はこの方に胚胎するなり(浅田宗伯)
●不眠にも嗜眠のものにも適用する。(吉益東洞)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
心身がつかれ弱って眠れないもの。

b 漢方的適応病態
心血虚・心肝火旺。すなわち、寝つきが悪い、眠りが浅い、多夢、動悸、健忘、頭のふらつきなどの心血虚の症候に、いらいら、焦燥感、のどや口の渇き、のぼせ、ほてり、などの心肝火旺の熱証をともなうもの。

構成生薬
酸棗仁10、茯苓5、川きゅう3、知母3、甘草1。(単位g)

TCM (Traditional Chinese Medicine)的解説
養心安神・清熱除煩。

効果増強の工夫
尾台榕堂は『類聚方広義』で、脱血過多でぼうっとし、めまい、不眠、煩熱、盗汗、浮腫あるものには当帰芍薬散と合方するとよいと述べている。
処方例)ツムラ酸棗仁湯 5.0g
     ツムラ当帰芍薬散 5.0g  分2食前

本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)疲労性の不眠症。
2)疲労困憊、身熱盗汗、動悸口乾、喘嗽、小便渋、或は煩驚健忘、心神恍惚、眩暈、脱血などにも使う。(類聚方広義)

ヒント
 江戸時代の吉益東洞に嗜眠に対する酸棗仁湯の治験例があり、尾台榕堂により紹介されている。5〜6日の間こんこんと眠り、死んだようになって目覚めないものにこの方を用いて速やかに奏効したという。
 尾台榕堂は、健忘がちであったり、驚いて動悸しやすかったり、胸苦しかったりするものにこの方でよくなる場合があり、黄連や辰砂を適宜加えて用いるという。
 大塚敬節氏の症例に次のようなものがある。
「患者は62歳の男子で、数年来、不眠、頭重、耳鳴、肩こりを訴え、疲れやすく、食もまたすすまないという。
 いままでいろいろの睡眠薬を用い、また2年間、医師の治療をうけているが、よくならないという。
 患者はやせ型の体格で、腹部に力がなく、臍部で動悸がやや進行している。私はこれに酸棗仁湯を与えたが、1カ月あまりの服薬で、耳鳴、肩こり、頭重がとれ、5,6時間の睡眠ができるようになり、記憶力を増進した。そこで小柴胡湯に転じたところ、食欲が出て、体重も増加した。
 ある日、患者が云うのに、この頃は性欲が旺盛になって10数年前の若さにかえったと。そこでますますころを続服したところ、10数年前から痼疾であった痔核もまったく全治した。」
 酸棗仁湯は、不眠に用いる方剤であるが、これで盗汗がやんだり、便通がついたりする。








心身の状態を整えて眠りを誘う漢方薬
 不眠の背景には多くの場合、不安や興奮、冷えなどがあるのですが、漢方薬で心身の状態を改善すれば、睡眠のマネージメントが楽になります。
 また、漢方薬には日中の眠気やふらつきなどの心配がほとんどありません。これはお年寄りにも使いやすい特徴といえます。

眠れるようになると心も落ち着いて全身状態も良くなるね!

■肩がこる

1 葛根湯 肩こりにはまず葛根湯をためしてください。風邪のときに飲むというイメージが強いのですが、肩こりや頭が重いときに服用すると即効性が期待できます。

出典『傷寒論』、『金匱要略』
(1)太陽病、項こわばることしゅしゅ、汗なく、悪風する証。(『傷寒論』太陽病中篇)
解説 しゅしゅを、几几とする見方もあり、その場合はキキと音読する。しゅしゅは、短羽の鳥の飛び立つときの首を前傾させる様子をいい、几几は硬く強ばる状態を指す。ともに葛根湯の「項背強」の状態を形容したものとみなされる。
(2)太陽と陽明との合病、自下利する証。(同上)
(3)太陽病、汗なく、小便反って少なく、気、胸に上衝し、口噤みて語るを得ざる証。(『金匱要略』し湿喝病篇)

腹候
急性病初期では脈が重要とされ、腹候は考慮しない。慢性疾患では、腹力中等度かそれ以上(2-4/5)。葛根湯証は一般に筋緊張の傾向が認められる。

気血水
気が主体の気血水。

六病位
太陽病。

脈・舌
脈浮実数。太陽病では舌候の変化は原則としてない。

口訣
●首から上の症状には葛根湯を考慮。(道聴子)
●急性熱性の首の張る状態に用いるのは誰もが知っているが、古方の常として応用範囲の広いことはいうまでもない。(浅田宗伯)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん。

b 漢方的適応病態
表寒・表実。

構成生薬
葛根4、大棗3、麻黄3、甘草2、芍薬2、生姜2。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
辛温解表・生津・舒筋)。

より深い理解のために 
本方が日本で広く用いられる理由としては、薬味構成から麻黄湯と桂枝湯の中間の効果とされ第一選択としやすいこと、また、葛根が辛凉解表の効果をもつところから、表熱(悪寒を伴わない急性発熱で温病などが考えられ銀翹散などが適応される)にもある程度対応できたことなどが考えられる。すなわち、葛根湯そのままでは辛温解表剤(傷寒、中風に適応)にも、辛凉解表剤にもなる(石膏を加味すればさらによい)という考え方である。

効果増強の工夫
肩関節周囲炎などの治療には、附子を加えると一層有効である。
 処方例)ツムラ葛根湯 7.5g
      ブシ末(調剤用)「ツムラ」 分3食前

本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)感冒・流感・肺炎・麻疹・丹毒・猩紅熱・脳膜炎・日本脳炎・リンパ腺炎・扁桃腺炎・中耳炎などで、発熱悪寒頭痛、項背部がこるもの、あるいは軽咳、あるいは軽咽頭痛などを伴ってもよい。
2)肩こり・四十肩・五十肩・高血圧症による肩や首のこり、首が回らぬもの、腰痛・関節リウマチなどで実証で腹部に変化なきもの。
3)破傷風初期・小児ひきつけ・脊髄空洞症などで項背強急するもの。
4)口がひらかぬものを痙病と見て治した例がある。
5)トラコーマ・結膜炎・眼瞼炎・網膜炎・虹彩炎・急性球後視神経炎などの眼病で、頭痛項背強ばるもの、ただし下剤の証がないもの。
6)副鼻腔蓄膿症・鼻炎・肥厚性鼻炎などで頭痛項背強ばるもの。
7)気管支喘息で表実頭痛または項背がこるもの。
8)皮膚炎・失神・じん麻疹などで、発赤強く分泌のない表証のもの。
9)フルンケル・カルブンケル・面疔・背癰・皮下膿瘍・筋炎などで発熱頭痛または悪寒などの表証のあるもの。
10)急性腸炎・急性大腸炎で発熱頭痛または悪寒など表証があるもの。
11)夜尿症を治した例がある。
12)乳児の無声を治した例がある。








2 二朮湯 四重肩、五十肩に使われる漢方薬です。体力が衰えていない患者さんが肩や上腕に鈍い痛みを訴えたらためしてください。
出典 げん延賢著『万病回春』
●痰飲雙臂痛むものを治す。又手臂痛むを治す。これ上焦の湿痰経路中を横行して痛みを作すなり。(『万病回春』臂痛門)

腹候
腹力中等度よりやや軟(2-4/5)

気血水
水が主体の気血水。

六病位
少陽病。

脈・舌
舌苔は白膩、脈は滑が原則である。

構成生薬
半夏4、蒼朮3、威霊仙2.5、黄ごん2.5、香附子2・5、陳皮2・5、白朮2・5、茯苓2.5、甘草1、生姜1、天南星2.5、和羌活2.5。(単位g)

TCM (Traditional Chinese Medicine)的解説
きょ風湿・化痰利水。

効果増強の工夫
痛みが強ければ、活血化お薬を配する目的で、疎経活血湯を合する。
 処方例)ツムラ二朮湯 5.0g
      ツムラ疎経活血湯 5.0g  分2食前

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
 五十肩・四十肩・上膊神経痛など。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
胃アトニー傾向のある寒虚湿証者、ことに湿の著しいものの五十肩、頸腕症。

ヒント
山田光胤氏はご自身に本方を用いた経験を著書、『漢方処方応用の実際』に述べている。

〔症例〕 著者自身の経験。満40歳の冬、肩から腕にかけて、なんとなく痛みを感じることが数日あった。気にもとめないでいたところ、痛みが漸次増強し、腕を後ろへ廻せなくなり、電車のつり革につかまるのがつらくなった。
 夜ねていると、夜中になって、腕がぬけるような痛さを感じて何回も目が覚めた。実に不快な痛みである。気をつけていると、就寝中腕をなげ出して動かさないでいると、いっそう痛みが強まることに気づいた。
葛根湯を飲んでも、いっこう効き目がない、。そうこうするうち、これは四十肩というやつかなと考えついた。一週間も苦しんだあとである。
 そこで二朮湯を煎じてのんだ。するとその夜は、腕の痛みが軽くなったらしく、夜中に目が覚めたのは一回だけだった。翌日の晩は1回も目が覚めなかった。昼間の痛みも軽くなり、5,6日間の服用で、すっかり痛みがなくなった。
 その後、2年ばかりして、痛みが再発したがその時は直ぐに二朮湯を飲み、2,3日で治った。
 これほど顕著に効いた例は、患者ではまだない。それは、患者の場合は何カ月も何年もたってから来るからではないかと考えている。四十肩の治療も、早ければ早いほど、治りも速いのであろう。

〈二朮湯の注意〉著者は高齢婦人に用いた二朮湯が、肝障害の原因として疑われたケースを経験したことがある。他の方剤の経験から方中の黄ごんによる肝障害が疑われるので、連用する場合には最初の一ヵ月が経過した時点でAST,ALTなどをチェックした方がよい。一ヵ月が無事に過ぎれば、それ以後に生じた肝障害は経験していない。












3 加味逍遥散 女性で肩こり、更年期障害など不満や不安が強い場合によく使われる漢方薬です。

出典『和剤局方』
血虚労倦、五心煩熱、肢体疼痛、頭目、昏重、心松頬赤、口燥咽乾、発熱盗汗、減食嗜臥、及び血熱あい打ち、経水調わず、臍腹脹痛、寒熱瘧の如くなるを治す。また室女血弱、陰虚した栄衛和せず、痰嗽潮熱、肌体羸痩、漸く骨蒸と成を治す。(和剤局方、婦人諸疾門逍陽遙散条)

出典 『和剤局方』
血虚労倦、五心煩熱、肢体疼痛、頭目昏重、心松煩赤、口燥咽乾、発熱盗汗、減食嗜臥、及び血熱あい打ち、経水調わず、臍腹脹痛、寒熱瘧の如くなるを治す。また室女血弱、陰虚して栄衛和せず、痰嗽潮熱、肌体羸痩、漸く骨蒸と成を治す。(和剤局方、婦人諸疾門逍遙散条)
(貧血倦怠、あちこちの熱感、身体疼痛、頭重めまい、煩赤くのぼせ、口のど乾き、発熱ねあせ、食思不振で臥せがち、月経が不順腹痛したりする、のぼせたり冷えたりを治す。また未婚の女子、婦人科の不調により体調わるく、痰あり、咳あり、やせ細り、次第に慢性の熱病となるを治す。)

腹候
腹力中等度かそれ以下(2-3/5)。胸脇苦満を認めることがある。

気血水
気血水いずれにも関わる。

六病位
少陽病。

脈・舌
舌質は紅、舌苔は黄。脈は弦細数。

口訣
●老医の伝に、大便秘結して朝夕快く通せざると云ふもの、何病に限らずこの方を用れば、大便快通して諸病も治すと云う。(浅田宗伯)
●婦人いっさいの申し分に用いてよくきく。いまより十数年前は、世間の医者は、婦人の病というとほとんどこの方を用いた。男子でも癇癪もちに適する。(百々漢陰)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症(一般的に男性にも保険上の適用が認められている。病名は不定愁訴などで可である。)
b 漢方的適応病態
逍遥散は肝気鬱結・血虚・脾虚に適応される。加味逍遥散は、これに牡丹皮、山梔子の適応状態が加わったもの。

より深い理解のために
肝気鬱結とは、ゆううつ感、いらいら、怒りっぽい、頭痛、胸脇部が張って苦しい、脇の痛み、腹痛などをいう。血虚の症候とは、頭がふらつく、頭がボーッツとする、目が疲れる、四肢がしびれる、皮膚につやがない、動悸、眠りが浅い、多夢などをいう。脾虚とは、食欲がない、疲れやすい、倦怠感、浮腫、下痢傾向、あるいは下痢便秘の交代などの症候をいう。月経については、不定な周期、過少月経、無月経など。

構成生薬
柴胡3、芍薬3、蒼朮3、当帰3、茯苓3、山梔子2、牡丹皮2、甘草1.5、生姜1、薄荷1。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
疏肝解鬱・健脾補血・瀉火・調経(逍遙散に熱証を伴うもの)。

効果増強の工夫
服後の状態からの判断により、瀉肝、清熱、補気、補血のいずれに重点を置くかでさまざまな兼用方、合方がありうる。
例として瀉肝には竜胆瀉肝湯、清熱には黄連解毒湯、補気には四君子湯、補血には四物湯などが考えられる。

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
更年期障害(血の道症)・月経不順・流産や中絶および卵管結紮後に起こる諸神経症状に用いられ、また不妊症・結核初期症候・尿道炎・膀胱炎・帯下・産後口内炎・湿疹・手掌角皮症・肝斑・肝硬変症・慢性肝炎・疳癪持ち・便秘症等に応用される。
●龍野一雄『改訂新版漢方処方集』より
月経不順、血の道症、帯下、ノイローゼ、不眠症、心悸亢進症、気鬱症。以上の状態で熱候または上部に充血症状あるもの。
●桑木崇秀『漢方診療ハンドブック』より
虚証の冷えのぼせ(上熱下寒)、更年期障害、月経不順、指掌角皮症。










「肩こりくらい」、「五十肩くらい」と軽視しないで
 漢方薬を使うときに大切なのは、西洋医学的治療をまず検討し、それで十分な効果が得られなかったときに漢方薬を考えるという姿勢です。肩こりや五十肩は『この程度は西洋薬のお世話になるほどでない」と判断してしまいがちですが、背景にどんな疾患が潜んでいるかわかりません。長引く症状には、まず西洋医学的な検査で原疾患がないか確認しま





肩こりと風邪
葛根湯は風邪だけでなく肩こりや頭痛にも効果を発揮します。一見意外な組み合わせですが、風邪のときでも肩こりのときでもこわばった筋肉をほぐして血の巡りをよくするという作用が有効性につながるのです。

■冷える

1 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 どんな冷え性にも幅広く処方される漢方薬です。体力のない人にも使いやすい漢方薬で、慢性的に冷えの訴えがある人によく使われます。

出典『傷寒論』
●手足厥寒、脈細にして絶せんと欲し、内に久寒有る証。(『傷寒論』厥陰病篇)

腹候
腹力は中等度よりやや軟(2-3/5)

気血水
気が主体の気血水。

六病位
太陰病。

脈舌
脈は沈細、あるいは細弱。舌質は淡白、舌苔は白。

口訣
●桂枝湯の加味方というより桂枝加芍薬湯の加味方と考えれば、主として下焦に効く理由が分かりやすい。(桑木崇秀)
●本方は当帰四逆湯合呉茱萸湯(腹痛、嘔吐が加わる)とかんがえてもよい。(『中医処方解説』)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
手足の冷えを感じ、下肢が冷えると下肢または下腹部が痛くなりやすいものの次の諸症:しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛。
b 漢方的適応病態
血虚受寒。すなわち、寒冷によって生じる、四肢や下腹部の冷えと痛み、しびれ、あるいは凍瘡などで、舌質は淡白、舌苔は白。脈は沈細、あるいは細弱(以上は当帰四逆湯と共通。本方はさらに寒冷がはげしいもの)。

より深い理解のために
本方の特徴は、1.シモヤケ、2.腰・腹部に寒冷により増悪する痛みがあるなどで、いずれかがあれば本方の適用。四逆とは、四肢が厥逆(冷える)すること。

構成生薬
大棗5、桂皮3、芍薬3、当帰3、木通3、甘草2、呉茱萸2、細辛2、生姜1、(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
温経散寒・養血痛脈。

効果増強の工夫
冷えには水の過剰がついて回るので、温めて水をさばく当帰芍薬散とはよい相性である。
処方例)ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯 5.0g
     ツムラ当帰芍薬散          5.0g 分2食前

冷えの強い例では附子を加味することもある。
処方例)ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯 7.5g
     ブシ末(調剤用)「ツムラ」      1.5g 分3食前

腰痛や腹痛などの痛みが激しい例には、芍薬甘草湯を兼用、あるいは頓用する。

処方例) 1)ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯 7.5g 分3食前
      2)ツムラ芍薬甘草湯          2.5g 分1眠前

(7.5gの芍薬甘草湯には甘草が6.0g含まれている。偽アルドステロン症予防のために連用する場合は1日量の制限が必要である。

本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より
1)流感・チフス等で、脈微細、四肢冷え、或は頭痛悪寒し、或は胸痛咳痰、或は喘急冷汗、或は譫妄煩躁、或は腹がつれて痛むもの。
2)凍傷・脱疽・皮膚病・水虫・ひょう疽等でチアノーゼを呈するもの。
3)神経痛・腰痛・座骨神経痛・手足が冷水につけられぬもので脈微、冷え性だが附子剤の応じぬもの。
4)所謂疝気・ヘルニヤ・脹疝痛・蛔虫・慢性虫垂炎等で下腹から腰にかけて痛み冷えるもの。
5)婦人病・婦人の骨盤腹膜炎等で、下腹痛み、腰脚つれ、或は帯下、或は微浮腫するもの。
6)胃酸過多症で、脈微、脚が冷えるもの。
7)下痢、冷え性で、腹鳴するもの。
8)血尿で、冷え性、或は下腹腰部が痛むもの。
9)頭痛で、頭も手足も冷え、脈沈弦細のもの。
10)にきび、眼精疲労で、腹鳴、脈沈弱、冬は手先が甚だしく冷えるものを治した例がある。














2 人参養栄湯 入院中の患者さんなどで体力がなく、手足が冷えて食欲もないような場合は人参養栄湯で元気になってもらいましょう。
出典『和剤局方』
●積労虚損にて四肢沈滞、骨肉酸疼、呼吸として気少なく、行動喘啜(あえぎすすりなく)、小腹拘急、腰背強痛、心虚驚悸、咽乾き唇燥き、飲食味無く、陰陽衰弱、悲憂惨威、多臥少起、久しきものは積年、急なるものは百日、漸く痩削に至り、五臓の気竭て、振復すべきこと難きを治す。また、肺と大腸がともに虚し、咳嗽下利、喘乏少気、痰涎を嘔吐するを治す。

腹候
腹力中等度前後(2-4/5)。悪性腫瘍治療の補助療法の際には胃腸への納まりがよければ、腹力や腹候にはこだわらずに用いてよい。これはその他の気血双補薬についても当てはまる。心下痞ごうを認める。

気血水
気血主体の気血水。

六病位
太陰病。

脈・舌
舌質は淡白。脈は沈細弱。

口訣
●頑固な咳嗽が続き、衰弱のために麻黄剤が使えないが、麦門冬湯、半夏厚朴湯、柴胡剤などでも効果がない場合本方を試みるとよい。(『現代漢方治療の指針』)
●この方は、気血両虚を主とすれども、十補湯(十全大補湯)に比すれば、遠志、橘皮、五味子ありて脾肺を維持するの力優なり。(浅田宗伯)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血。

b 漢方的適応病態
気血両虚・虚寒。すなわち、健忘、眠りが浅い、動悸などの心血虚の症候や、自汗、息切れ、咳嗽、喀痰などの肺気虚の症候に、寒け、四肢の冷えなどの虚寒の症候を伴うもの。

地黄4、当帰4、白朮4、茯苓4、人参3、桂皮2.5、遠志2、芍薬2、陳皮2、黄耆1.5、甘草1、五味子1。(単位g)

より深い理解のために
本方は十全大補湯の川きゅうを除きm、五味子、遠志、陳皮を加えたものに相当する

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
気血双補・安神・きょ寒・止咳。

効果増強の工夫
不眠が強ければ、酸棗仁湯を合方する場合がある。
処方例)ツムラ人参養栄湯 6.0g
     ツムラ酸棗仁湯  5.0g 分2食前

本方で先人は何を治療したか?
●矢数道明著『臨床応用漢方処方解説』より
病後衰弱、産後衰弱症、結核症の衰弱。毛髪脱落、顔色光沢なく枯燥、心悸亢進、不眠、健忘症などあるもの。
●桑木崇秀著『新版漢方診療ハンドブック』より
大病後や手術後などの全身衰弱・貧血・呼吸器疾患の回復期で、咳・盗汗などの残るもの、その他、貧血性で、気力、体力ともに衰え、健忘・不眠・乾咳などのあるもの。

ヒント
江戸時代の百々漢陰・鳩窓の『梧竹樓方函口訣』には、本方のことを次のように記している。
「この薬は肺痿(慢性肺疾患、結核など)の衰弱をともなう咳嗽の主な治療薬である。午後になると発熱し、まぶたや顔面に熱色が出て、脈は細数である。だれもが肺痿虚労とわかるほどになるとしょせん治療は期しがたいが、初期にはやく予後を察してこの方を用いると、咳を止める効能は他の薬よりひときわ優れているものである。しかし、声が出なくなったようなものにはもはや効果はない。この方は福井楓亭の常用薬であって、本方の名前が世の中に広まったのは全く楓亭の力によるのだ。」
 之を読むと、慢性気管支炎や気管支拡張症に本方を適応してみたくなる。










3 八味地黄丸 高齢で新陳代謝が低下して冷えやしびれを感じている患者さんには八味地黄丸を。

出典『金匱要略』
1)脚気上り入り、少腹不仁なる証。(『金匱要略』中風歴節病篇、附方)
2)虚労、腰痛し、少腹拘急し、小便不利の証。(血痺虚労病篇)
3)短気(呼吸促迫)して微飲(停水)ある証。(痰飲咳嗽病篇)
4)消渇、小便すること反つて多き証。(消渇小便利淋病篇)
5)胞系了戻(輪尿系捻戻の謂)するがゆえに溺するを得ざる証。(婦人雑病篇)

腹候
腹力によらずに適用される(2-4/5)。臍下の不仁と、ときに腹直筋の攣急を認める。

気血水
水気主体の気血水。

六病位
太陰病。

脈・舌
脈、沈、尺脈が弱。舌質、淡白、湿潤、舌苔は白滑。

口訣
●これはもっぱら下焦を治す。虚腫あるいは腰痛などに用いて効有り。(浅田宗伯)
●40歳以上は八味丸を服用してよい。(藤平健)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
疲労、倦怠感著しく、尿利減少または頻数、口渇し、手足に交互に冷感と熱感のあるものの次の諸症:腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧。

b漢方的適応病態:以下の状態に適用する。
1)腎陽虚。すなわち、腰や膝がだるく力がない、知力減退、動作緩慢、ふらつき、耳鳴、下半身や四肢の冷え、寒がり、嗜眠傾向、インポテンツ、尿量が少なく頻回あるいは尿量過多、排尿に時間がかかる、排尿困難あるいは失禁、夜間多尿、遺尿など。多痰、水様便、浮腫を伴うこともある。

2)腎咽陰陽両虚。すなわち上気の腎陽虚の症状に、ほてり、口渇、いらいらなどの陰虚の症候もときにみられるもの。
腎虚:腎は五臓の1つで、人体の成長、発育、生殖を司り、体内の水分を正常に代謝する。このような生理機能は腎の有する精気が担うとされている。腎の生気が不足した状態を腎虚と呼び、成長障害やむくみ、耳鳴りや聴力低下などを来す。

構成生薬
地黄6、山茱萸3、山薬3、沢瀉3、茯苓3、牡丹皮2.5、桂皮1、附子0.5。(単位g)

TCM(Traditional Chinese Medicine)的解説
温補腎陽(不足した腎の陽気を温めて補うこと。)

効果増強の工夫
1.方中の附子を増やすのが一般的。ブシ末(調剤用)「ツムラ」0.5〜1.5g/日を加える。
処方例)ツムラ八味地黄丸  5.0〜7.5g
     ブシ末(調剤用)「ツムラ」 1.0〜1.5g 分2または分3食前

2.胃弱の人には次のような合方も勧められる。
処方例)ツムラ八味地黄丸 5.0g
     ツムラ人参湯    5.0g  分2食前


本方で先人は何を治療したか?
龍野一雄著『新撰類聚方』増補改訂版より。病名のみ引用。
1)腎炎・ネフローゼ・腎臓結石・腎臓結核・萎縮腎・腎盂炎・蛋白尿。
2)膀胱炎・老人性膀胱萎縮・膀胱結核・膀胱結石・膀胱括約筋麻痺・膀胱直腸障害・前立腺肥大症・尿閉・尿失禁・夜尿症など。








「冷え」と漢方薬
 「冷え」は西洋医学では診断しにくい症状です。解熱剤はありますが、冷えを治す薬はすぐには思い浮かびませんよね。漢方薬は、冷えたものは暖める、熱いものは冷ます、という考えで体の環境を一定の好ましい状態に保つことを目的とします。ですから、「冷え」の改善は漢方薬の得意分野なのです。

その他の冷えに効く漢方薬
 この他にも手足の冷えには温経湯(ウンケイトウ)や当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)下痢や食欲不振がみられたら人参湯(ニンジントウ)などもよく使われます。八味地黄丸にゴシツ(牛膝)とシャゼンシ(車前子)を加えた五車腎気丸も高齢の患者さん二使いやすい漢方薬です。

■咳が長引く

1 麦門冬湯 空咳が続いて、のどに痰がはりついたような感じでいくら咳き込んでもとれない、という訴えがあったら麦門冬湯が適しています。

2 清肺湯 慢性化した呼吸器疾患で黄色い痰が多く出て長引く咳にはこちらの漢方薬がよく使われます。

3 柴朴湯 のどに違和感があり咳・痰が続く場合はこの漢方薬も使われます。神経過敏や気分がふさいでいる人に特に向いています。喘息に使われる漢方薬として広く知られています。

習慣化した咳を局所で絶つ
 咳にはいろいろな種類があります。空咳、痰の多い咳、背景に神経過敏のある咳など、いろいろです。一般的に「鎮咳薬」は脳の咳中枢に働きかけて咳を抑えるものですが、漢方薬は刺激の元になっている気管支の環境や精神的な背景を改善するので、咳の性質に合わせて対応できる処方といえます。

まだまだある、咳に効く漢方薬
 他にも、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、参蘇飲(ジンソイン)、柴陥湯(サイカントウ)、竹ジョ温胆湯(チクジョウンタントウ)、滋陰至宝湯(ジインシホウトウ)、滋陰降火湯(ジインコウカトウ)、五虎湯(ゴコトウ)なども咳に処方されます。

■風邪をひきやすい

1 補中益気湯 風邪をひきやすい人には免疫力を高める作用が知られているこの漢方薬を。低下した気力・体力の底上げをはかり、体を守る機能を回復させます。

2 十全大補湯 気力ばかりか貧血や皮膚の乾燥など体全体の衰えのある人にはこの処方で免疫力アップをはかります。

3 柴胡桂枝湯 胃腸が弱い人やお子さんなどで風邪をひきやすいタイプにはこの漢方薬もよく使われます。

補剤で風邪の予防を
 4,5ページで紹介した補剤は、神経系、免疫系、内分泌系の調整をして生体防御機能を回復させる漢方薬です。補剤によって低下しがちの気力・体力が回復するのは、こうした総合的な作用のおかげなのです。「風邪をひきやすい」のは生体防御機構の乱れの現れです。これらの補剤でその乱れを整えてあげてください。

補剤の作用の証明
 補剤の免疫能改善効果について科学的な解明が進んでいます。たとえば補中益気湯を服用した患者さんは服用しなかった患者さんより風邪をひく回数が少なかったという調査結果や、補中益気湯の服用で重要な免疫機能のひとつであるNK細胞活性が上昇したというデータが報告されています。

■風邪をひいてしまったら

1 葛根湯 かぜかな?と思ったらすぐに葛根湯を。咳・鼻などの症状が出る前で、頭痛や熱っぽいのに汗が出ないときには即効性を発揮します。

2 麻黄附子細辛湯 お年寄りや、やや弱々しいタイプの人の風邪にはこちらの漢方薬も処方されます。ぞくぞくして微熱があるというタイミングで飲むといい漢方薬です。

3 麻黄湯 熱はあるけれど汗は出ない、関節が痛く咳や寒気、頭が重いなど体格的な風邪の症状にはこちらの漢方薬がいいでしょう。インフルエンザにも使われている処方です。

どのタイミングかで処方が変わります
 風邪は病態がどんどん変わる疾患です。頭が重いなと思っているうちに咳が出る、鼻汁が出る、下痢をする、熱が出るといった変化があります。漢方薬は病名ではなく症状に合わせて治療するものなので、ひとくちに風邪といってもどの症状のタイミングかで選ぶ漢方薬がちがってくるのです。

鼻水の多い鼻風邪には小青竜湯(ショウセイリュウトウ)や葛根湯加川きゅう辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)も使われています。

■手足がしびれる

1 牛車腎気丸 お年寄りを悩ませるしびれにはまずこの処方を。抗がん剤に伴う末梢神経障害(しびれ)にも使われます。疲れやすく手足の冷えや頻尿がある患者さんには特に効果が期待されます。

2 真武湯 顔色が悪く新陳代謝が落ちて手足が冷たくしびれ感のある方に使います。脊椎脊髄疾患による神経へのダメージのしびれなどに使われることもあります。

3 八味地黄丸 坐骨神経痛など下半身の痛みやしびれにはこの処方も使われます。

まずは西洋医学できちんと検査を
 しびれの背後には中枢や脊髄などの重大な疾患が隠れていることがあるので、しびれの訴えがあったらまずは西洋医学的な検査と治療を受けるようにしてください。

牛車腎気丸と八味地黄丸の足し算・引き算
八味地黄丸にゴシツ(牛膝)とシャゼンシ(車前子)という二つの生薬を加えると牛車腎気丸になります。どちらもお年寄りの下半身を中心とした問題によく使われますが、牛車腎気丸は冷えや頻尿などの症状が強い人に使われます。

■認知症に伴う周辺症状/お年寄りの諸問題

1 抑肝散 認知症に伴う周辺症状(BPSD)を改善する効果が証明され、今や認知症のケアに欠かせない漢方薬となっています。

2 釣籐散 血圧の高いお年寄りの頭痛やめまいなどに。認知症のBPSDの改善にも使われます。

3 牛車腎気丸 前立腺肥大や頻尿などの泌尿器系からの目のかすみ、皮膚のかゆみ、むくみなど、お年寄りの全身の症状に幅広く使える漢方薬です。

認知症のBPSDとは
 夜間せん妄、徘徊、興奮、暴力、不潔行為などの行動や心理状態をBPSDといいます。認知症の介護・対応を困難にするのはBPSDで、BPSDを改善すれば介護者の負担は大いに軽減されます。BPSD改善効果が証明された抑肝散に注目が集まっているのはそのためなのです。

お年寄りに効果のある漢方薬を知っておくと、看護の幅が広がるね!


西と東  その1

ナイチンゲールと漢方医学
「看護とはその人の生命力の減退が最小限になるように、生活の全てを整えることだ」というのはナイチンゲールの言葉です。
 一方、心身の環境を整えて生体の機能を正常に保とうとするのは漢方医学の考え方の基本です。
 看護と漢方医学には、人の生命力を信じてそれを大切にするという点で共通する精神が流れているといえます。






U 漢方薬トップ10をもっと知ってみる

漢方エキス顆粒は、臨床で広く使われて西洋医学のお手伝いをしています。ここでは臨床で特に使われているトップ10の漢方エキス製剤をご紹介します。

※漢方エキス顆粒とは
薬草を煎じて煮だすという古くからの方法に対し、煎じたエキスを顆粒状にしたものが漢方エキス顆粒です。品質が安定している、煎じる手間がかからない、などのメリットがあり西洋医学を基礎とした臨床で使いやすいものになっています。
(本分の「効能又は効果」および「用法・用量」はツムラ医療用漢方製剤の記載による。

■1 大建中湯
腸の問題にはこれ!
科学的エビデンスも豊富でドクターからの信頼も厚く、腹痛・腹部膨満感、術後イレウスを中心に幅広く活躍。

□効能又は効果
 腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの
□用法・用量
 通常、成人1日15.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

術後のイレウス(腸閉塞y通過障害)
過敏性腸症候群
便秘
比較的強い腹痛
腹部膨満感

大建中湯はこれらの生薬でできています。
カンキョウ(乾姜)
ニンジン(人参)
サンショウ(山椒)
コウイ(膠飴)

○大建中湯は腸管運動亢進作用と腸管血流の増加作用が知られ、臨床データでは術後単純性癒着性イレウス症状、過敏性腸症候群患者の腹部膨満感などの消化器症状、難治性便秘症を含む排便障害、向精神薬による排便障害などの改善効果が報告されています。


出典 『金匱要略』
 ●心胸中大寒致し、嘔して飲食すること能わず、腹仲寒え上衝し、皮起こり、出で見れ、頭足有りて上下し、痛みで触れ近づくべからず証。(『金匱要略』腹満寒疝宿食病篇)

腹候
 腹力は中等度以下(1−3/5)だが、腹力によらずに適用される。軟弱無力で大腸の蠕動が見えるような場合もあり、ガスで張り気味の場合もある。

気血水
 気が主体だが気血水いずれとも関わる。

六病位
 太陰病。

脈・舌
脾胃虚寒の疝痛であれば、舌質は淡白、あるいは青紫、舌苔は白滑。脈は沈弦あるいは遅。脾胃実寒の疝痛であれば、舌質は青紫、脈は沈弦あるいは遅。

口訣
 ●本方は、出渋るような弛緩性下痢にも、兎糞状の硬い便にも有効なことがある。腸の蠕動亢進はていねいに問診すれば必発である。(藤平健)
 ●下から上へムクムク持ち上がるような腹痛によい。(浅田宗伯)
 ●本方を服用後、空咳を増したり、浮腫を生ずる場合は用量を減ずるか、半夏厚朴湯、五苓散、真武湯などに転方する。(『現代漢方治療の指針』)

本剤が適応となる病名・病態
a保険適応病名・病態
効能または効果
 腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの。
b漢方的適応病態
1)婢異虚寒の疼痛。すなわち、平素から元気がない、食欲不振、腹が張る、手足や腰の冷えなどの婢胃虚寒の症候があり、寒冷刺激などに誘発されて激しい腹部疝痛発作が生じ、腹壁弛緩したものでが腸蠕動がが望見できるもので、悪心、嘔吐を伴うこともある。
2)婢胃実寒の疝痛。すなわち、寒冷の環境や飲食物などで急激に発生する腹部疝痛で、普段虚弱症候を伴わないもの。

構成生薬
 蜀椒2、乾姜5、人参3、膠飴。(単位g)

TCM(Traditinonal Chinese Medicine) 的解説
 温中散寒・解痙止痛・補気健婢。

効果増強の工夫
1)腹痛伴う下部消化管通過障害には小建中湯としばしば合方される。
 処方例) ツムラ大建中湯 10.0g
       ツムラ小建中湯 10.0g   分2食前

2)冷えと痛みが激しいときは附子を加味。
 処方例) ツムラ大建中湯       15.0g
       ブシ末(調剤用)「ツムラ」  1.5g  分3食前

3)下痢があれば合人参湯。
 処方例) ツムラ大建中湯 10.0g
       ツムラ人参湯    5.0g   分2食前

4)腹満が強ければ半夏厚朴湯を合方。
 処方例) ツムラ大建中湯 10.0g
       ツムラ半夏厚朴湯 5.0g  分2食前

本方で先人は何を治療したか?
 瀧野一雄著『新撰類緊方』増補改訂版より
 1)腸疝痛・蛔虫・条虫・急性慢性虫垂炎・限局性腹膜炎・ダグラス氏窩膿瘍・腸閉塞症・慢性腸狭窄・腎臓結石・胆石症・膵臓炎等で腹痛腸蠕動不安、腹鳴し、或は腹満嘔吐を伴うもの。
 2)胃腸無力症・内臓下垂・尿道痛・不眠・前記疾患等で腹壁軟弱、腸の蠕動不安、足冷があるもの。
 3)乳不足で、2)の腹証があるのを治した例がある。
 4)爪反り腹痛するものを治した例がある。
 5)食道狭窄で胃部の圧重膨満感、呑酸、そう囃、あい気、悪心、涎沫等のもの、2)の腹証を呈するのを治した例がある。
 6)子宮後屈、流産癖で、2)の腹証を呈するものを治した例がある。
 7)眩暈、胃部振水音、頭重、悸、呑酸、そう囃等を治した例がある。



■ 2 芍薬甘草湯
足がつるなど筋肉のけいれんは日常生活だけでなく臨床でもよく経験します。それだけに使用頻度も高く第2位にランクイン!

□効能又は効果
急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛

□用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

急激な足のけいれん(こむらがえり)
急にくるぎっくり腰
尿管結石
胃の痛み
生理痛

芍薬甘草湯はこれらの生薬でできています。
カンゾウ(甘草)
シャクヤク(芍薬)

○たった2種類の生薬で構成されている漢方薬です。
構成生薬の数が少ないと効果が早く現れやすいといわれますが、まさにこの漢方薬は即効性があり、こむら返りやぎっくり腰など急性症状に頓服で効果を示します。
ただし、カンゾウ成分のグリチルリチンは低カリウム血症、むくみなどの副作用が報告されているので気をつけてください。

芍薬甘草湯はすぐに効果が得られやすいので基本は頓服が向いています。
カンゾウを多く含む漢方薬だから、長期連用の患者さんにはむくみなどの出現に注意してね。


出典 『傷寒論』
 ●傷寒脈浮に、自汗出で、小便数に、心煩し、微悪寒し、脚攣急するに、反つて桂枝を与えて、その表を攻めんと欲するは、これ誤りなり。之を得てすなわち厥し、咽中渇き、煩躁し、吐逆する者は、甘草乾姜湯を作りて之を与え、以てその陽を復す。もし厥いえ、足温まる者は、さらに芍薬甘草湯を作りて之を与うれば、その脚即ち伸ぶ。(太陽病上篇)

腹候
腹力によらず適用可能である。腹直筋の拘攣している場合が多いが、それが無くとも症状のみで適応してよい(腹候図)。

気血水
気血が主に関係する。

六病位
太陰病。

脈・舌
舌候はさまざまで一定せず、脈は、痛みから弦であろう。

口訣
●ありとあらゆる痛みに、一度は適用してみること。(道聴子)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛。
b 漢方的適応病態:平滑筋、骨格筋の痙攣性疼痛に頓服として用いる。末梢性の鎮痙、鎮痛以外に中枢性の鎮静作用も有する。中医学的には筋の痙攣は肝の機能失調によると考えられており、この鎮静、鎮痙、鎮痛作用を「平肝」とよぶ。なお、白芍、炙甘草ともに滋養強壮作用があり、身体を栄養、滋潤する。(『中医処方解説』)
〔より深い理解のために 横紋筋、平滑筋、いずれも治療可能なところに注目。〕

構成生薬
甘草6、芍薬6。(単位g)
〔より深い理解のために 使用上の注意として、7.5gの常用量中に甘草6gを含むことから治療上必要な最短期間の投与にとどめることが大切である。〕

TCM(Traditinonal Chinese Medicine) 的解説
平肝・解痙止痛。

効果増強の工夫
鎮痛効果を増すために、附子を加味する。附子の働きは温裏きょ寒で、血管拡張、血行促進の効能をもち、かつ鎮痛作用がある。芍薬甘草湯症で寒証を呈するものに適用される。
 処方例) ツムラ芍薬甘草湯       7.5g
       ブシ末(調剤用)「ツムラ」   1.5g 分3食間

本方で先人は何をしたか?
 瀧野一雄著『新撰類緊方』増補改訂版より
 1)脚気・腓腸筋痙攣・筋肉リュウマチ・眼病・舌硬直・寝違え等で痙攣様にすじがつれるもの。
 2)胃痙攣・腸疝痛・かん頓ヘルニヤ・イレウス・胆石発作・膵臓炎等急性腹症と云われる発作性の腹痛で、腹壁が痙攣様につれて堅くなっているもの。
 3)小児の夜泣きで腹筋が攣急するもの。
 4)下肢無力症、脚弱。
 5)咳を発して放屁するものを治した例がある。
 6)気管支喘息で、呼吸困難や劇しい咳のために筋肉に力を籠めているもの。
 7)歯痛で腹筋ひきつるものを治した例がある。

ヒント
 本方はその成り立ちからも頓用かあるいは短期間の使用にとどめるべき薬方である。理由はいうまでもなく、甘草を1日量として多く含むために、偽アルドステロン症を発症しやすいからである。
 ここに興味深い臨床研究論文がある。熊田卓、熊田博光、与芝真ほか:TJ-68ツムラ芍薬甘草湯の筋痙攣(肝硬変に伴うもの)に対するプラセボ対照二重盲検群間比較試験、臨床医薬 15(3):499−523、1999である。本論文は、肝硬変症例におけるこむら返りに対する芍薬甘草湯7.5gを分3で連日14日用いているが、実薬65例中5例の為アルドステロン症が発生したと記されている。いずれも服薬中止のみで治癒したとのことであった。
 甘草に由来する為アルドステロン症の発生頻度を知る上で貴重な記録ということができる。



■3 葛根湯
風邪のひきはじめ、肩こりなどへの即効性に患者さんのリピートも多く知名度の高い漢方薬です。

□効能又は効果
自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こりなどを伴う比較的体力のあるものの次の諸症:
感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん

□用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食後に経口投与する。

頭痛
肩や首のこり
風邪のひきはじめ

葛根湯はこれらの生薬でできています。
カッコン(葛根)
タイソウ(大棗)
マオウ(麻黄)
カンゾウ(甘草)
ケイヒ(桂皮)
シャクヤク(芍薬)
ショウキョウ(生姜)

○風邪のひきはじめ、熱がこもって汗が出ないときに処方する漢方薬です。有名な漢方薬で使いやすいのですが、マオウの成分エフェドリンによる頻脈やカンゾウの成分グリチルリチンによるむくみなどがまれにでることがあるので患者さんのドキドキ、むくみなどの訴えに気をつけて!


出典 『傷寒論』、 『金匱要略』
(1)太陽病、項背こわばること几几、汗なく、悪風する証。(『傷寒論』太陽病中篇)
 〔解説 几几を、几几とする見方もあり、その場合はキキと音読する。几几は、短羽の鳥の飛び立つときの首を前傾させる様子をいい、几几は硬く強ばる状態を指す。ともに葛根湯の「項背強」の状態を形容したものとみなされる。〕
(2)太陽と陽明との合病、自下利する証。(同上)
(3)太陽病、汗なく、小便反って少なく、気、胸に上衝し、口噤みで語るを得ざる証。(『金匱要略』痙湿渇病篇)

腹候
急性病初期では脈が重要とされ、腹候は考慮しない。慢性疾患では、腹力中等度かそれ以上(2−4/5)。葛根湯証は一般に筋緊張の傾向が認められる。

気血水
気が主体の気血水。

六病位
太陽病。

脈・舌
脈浮実数。太陽病では舌候の変化は原則としてない。

口訣
●首から上の症状には葛根湯を考慮。(道聴子)
●急性熱性の首の張る状態に用いるのは誰もが知っているが、古方の常として応用範囲の広いことはいうまでもない。(浅田宗伯)

本剤が適応となる病名・病態
a 保険適応病名・病態
効能または効果
自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん。
b 漢方的適応病態
表裏・表実。

構成生薬
葛根4、大棗3、麻黄3、甘草2、桂皮2、芍薬2、生姜2。(単位g)

TCM(Traditinonal Chinese Medicine) 的解説
辛温解表












■4 補中益気湯
低下した気力・体力を補い免疫能を高める補剤の代表格は西洋医学の良き伴侶です。

□効能又は効果
消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:
夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症

□用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

全身がだるい
食欲がない
疲れやすい
風邪をひきやすい
声や表情に力がない

補中益気湯はこれらの生薬でできています。
オウギ(黄耆)
ソウジュツ(蒼朮)
ニンジン(人参)
トウキ(当帰)
チンピ(陳皮)
カンゾウ(甘草)
ショウマ(升麻)
ショウキョウ(生姜)

■5 六君子湯
食欲不振にはこれ!
機能性ディスペプシアから抗がん剤やSSRIなどによる薬剤性の食欲不振まで幅広く確かな守備力に信頼があります。

□効能又は効果
胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血症で手足が冷えやすいものの次の諸症:
胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

□用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

食欲不振、
胃もたれ
X線や内視鏡でみても異常がみられない胃の不快感や痛み
酸っぱいものが上がってくる

六君子湯はこれらの生薬でできています。
ソウジュツ(蒼朮)
ニンジン(人参)
ハンゲ(半夏)
ブクリョウ(茯苓)
タイソウ(大棗)
チンピ(陳皮)
カンゾウ(甘草)
ショウキョウ(生姜)

名前は「六」だけど八つの生薬でできているんだよ!

■6 抑肝散
認知症に伴う周辺症状の改善作用が証明され、イライラ、怒りやすい、不眠など臨床症状改善作用の機序もわかってきています。

□効能又は効果
虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:
神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症

□用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

イライラしている
怒りっぽい
眠れない
興奮しやすい
せん妄
徘徊

※周辺症状改善効果:認知症患者さんを対象にした臨床試験でBPSD 改善効果が証明されています。

抑肝散はこれらの生薬でできています。
ソウジュツ(蒼朮)
ブクリョウ(茯苓)
センキュウ(川きゅう)
チョウトウコウ(釣籐鈎)
トウキ(当帰)
サイコ(柴胡)
カンゾウ(甘草)

認知症のケアで大変なのは問題行動。これが改善すれば、患者さんもご家族も看護スタッフも、とても楽になるわ。


■7 牛車腎気丸
お年寄りの頻尿改善に確かな実績。
下半身のしびれや痛みにも処方されます。

□効能又は効果
疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿でときに口渇がある次の諸症:
下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ

□用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

かすみ目
口が乾く
かゆみ
四肢のしびれ
下肢の脱力感
冷え
夜間頻尿
排尿困難

牛車腎気丸はこれらの生薬でできています。
ジオウ(地黄)
ゴシツ(牛膝)
サンシュユ(山茱萸)
サンヤク(山薬)
シャゼンシ(車前子)
タクシャ(沢瀉)
ブクリョウ(茯苓)
ボタンピ(牡丹皮)
ケイヒ(桂皮)
ブシ末(附子)

■8 加味逍遥散
更年期女性の強い味方。
いつも不安や不満があり、焦りを感じているタイプに広く使われてトップ10入り!

□効能又は効果
体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、時に便秘傾向のある次の諸症:
冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症

□用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3かいに分割し、食前又は食間に経口投与する。

加味逍遥散はこれらの生薬でできています。
サイコ(柴胡)
シャクヤク(芍薬)
ソウジュツ(蒼朮)
トウキ(当帰)
ブクリョウ(茯苓)
サンシシ(山梔子)
ボタンピ(牡丹皮)
カンゾウ(甘草)
ショウキョウ(生姜)
ハッカ(薄荷)

■9 小青竜湯
さらさら鼻汁にはこれ!
鼻かぜだけでなく花粉症にも眠くならない漢方薬は人気です。

□効能又は効果
@下記疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘息、咳嗽、流涙:
気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒

A気管支炎

□用法・用量
通常、成人1日9.0を2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

水っ鼻
鼻づまり
くしゃみ
水っぽい痰

小青竜湯はこれらの生薬でできています。
ハンゲ(半夏)
カンキョウ(乾姜)
カンゾウ(甘草)
ケイヒ(桂皮)
ゴミシ(五味子)
サイシン(細辛)
シャクヤク(芍薬)
マオウ(麻黄)

花粉症の薬で眠くならないのはうれしいね!

■10 麦門冬湯
空咳が続いて困っている人に最適の漢方。末梢に作用する鎮咳薬として広く使われています。

□効能又は効果
痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく

□用法・用量
通常、成人1日9.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

のどに痰がはりついたような感じ
のどのイガイガ
はげしく咳き込むけれど単は出ない
風邪の後咳だけ残っている

麦門冬湯はこれらの生薬でできています。
バクモンドウ(麦門冬)
ハンゲ(半夏)
タイソウ(大棗)
カンゾウ(甘草)
ニンジン(人参)
コウベイ(粳米)

多くの陳咳薬は中枢に働いて咳反射を止める作用だけれど、麦門冬湯は気管支炎に作用して、過敏になっていた局所の刺激を和らげる薬なの。長引く咳を抑えるのに向いている作用ね!

漢方薬に使われる生薬の花々
ボタンピ(牡丹皮)  サンシシ(山梔子)


すぐに効く漢方薬を試してみる 
速効性のある漢方薬をご存じですか?
ここでは「効き目がゆっくり」という漢方薬のイメージをくつがえす、飲んですぐに実感できる漢方エキス顆粒をご紹介します。

■二日酔いには五苓散
五苓散の速効性
 五苓散は体のなかの水分代謝を改善する働きをする漢方薬です。体にたまっている余分な水分を排出するので、むくみやめまい、吐き気の改善に使われます。水分代謝を改善する漢方薬は他にもありますが、五苓散はアルコール代謝改善作用も確認されており、二日酔いに対する効果への関係が指摘されています。
 タクシャ(沢瀉)、ソウジュツ(蒼朮)、、チョレイ(猪苓)、ブクリョウ(茯苓)、ケイヒ(桂皮)の五つの生薬で構成されています。

便秘には大建中湯  桃核承気湯
大建中湯の速効性
 腸管運動亢進作用が認められており、腹部膨満感・腰痛のある慢性便秘症や通常の下痢が合わない場合、過敏性腸症候群(IBS)にも使用されます。

桃核承気湯の速効性
 便秘に速効性のある漢方薬としては大黄甘草湯が有名ですが、女性の特に月経前にひどくなるような便秘には桃核承気湯も効果が期待されます。

■乗物酔い/こむら返り
乗物酔いには小半夏加茯苓湯
小半夏加茯苓湯の速効性
 昔からつわりや急性胃腸炎などによる吐き気・嘔吐に対し、頓服ですばやい効果を発揮することが知られている漢方薬です。時代がめぐり移動手段に自動車や船が出現してからは、乗物酔いにも使われています。
 名前は長いのですが、ハンゲ(半夏)、ブクリョウ(茯苓)、ショウキョウ(生姜)の3種類の生薬で構成されています。

こむら返りには芍薬甘草湯
芍薬甘草湯の速効性
 急激におこる筋肉のけいれん、つまりこむら返りに速効性を発揮する漢方薬です。こむら返りに速効性のある薬剤は他になく、西洋医学の現場でも芍薬甘草湯は広く浸透しています。漢方薬使用実態調査では、芍薬甘草湯は常に使用頻度の高い漢方薬の上位にランクインしています。
 シャクヤク(芍薬)とカンゾウ(甘草)の二つの生薬から構成された漢方薬です。

西と東…その2

ふたりの医聖

 西洋医学と漢方医学にはどちらにも医聖と呼ばれる人物がいます。西洋医学の医聖はかのヒポクラテス。紀元前400〜300年頃のギリシアの医師で、原始的な医学から迷信や呪術を切り離し、医学を経験科学へと発展させました。漢方医学の医聖は張仲景(ちょうちゅうけい)。150〜220年頃の中国の医師で、今なお漢方医学の最も重要な文献として使われる「傷寒論」という書物を書いたといわれている人物です。


Y漢方医学を勉強してみる

ここでは漢方医学の考え方について基礎の基礎を簡単に説明します。患者さんを全人的にみる漢方医学の視点のなかには、医療スタッフのみなさんの日常業務に役立つヒントが隠されているかもしれません。

■「寒」と「熱」
「寒」には温める漢方薬、「熱」には冷やす漢方薬を
 漢方薬を使うときのコツのひとつに、症状を「寒」と「熱」に分ける、というものがあります。「寒」には体を温める漢方薬を、「熱」には体を冷やす漢方薬を使うのです。この考え方に馴れておくと、患者さんの訴えからどんな漢方薬を使えばいいか検討をつけやすくなります。
「寒」と「熱」をみるには、
・患者さんの自覚:寒がっているか暑がっているか
・尿や便の色:薄いか濃いか
・脈の速さ:遅いか早いか
・舌苔の色:白いか黄色いか
・舌の色:赤みが薄いか赤みが濃いか
が参考になります。

体を温める漢方薬、冷やす漢方薬
 南国の食べ物は体を冷やすので夏に食べるといい、生姜は体を温めるので冬に食べるといい、ということを聞いたことがあるでしょう。漢方薬に使われる生薬にも、体を冷やすものと温めるものがあります。

体を冷やす主な生薬、温める主な生薬

体を冷やす生薬  セッコウ(石膏)
            オウレン(黄連)
            オウゴン(黄ごん)
            オウバク(黄柏)
            サンシシ(山梔子)

体を温める生薬  ブシ末(附子)
            カンキョウ(乾姜)
            ケイヒ(桂皮)

同じ症状にも「寒」と「熱」がある
 たとば「かゆみ」をみると、のぼせがあって熱が体内にこもっている人の「かゆみ」と冷えがある人の「かゆみ」では、それぞれ使う漢方薬の種類がちがってきます。熱がこもっている人の「かゆみ」に使われる黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)は、オウレン、オウゴン、オウバク、サンシンという生薬で構成されています。4つの生薬とも体を冷やす生薬です。一方冷えのある人の「かゆみ」には牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)がよく使われます。この漢方薬は、体を温めるブシやケイヒを含んでいます。
 このように漢方治療では、症状の「寒」と「熱」を見極めて、「寒」には体を温める生薬が多く含まれている漢方薬を、「熱」には冷やす生薬が多く含まれている漢方薬を選ぶ、という考え方をします。


■「不足」と「過剰」
「不足」は補い、「過剰」は減らす
 もうひとつ、漢方医学には「足りないものは補う」「過剰なものは減らして平らにする」という考え方があります
 気力・体力がたりないときは気力・体力を補う漢方薬を、体を潤滑に動かす力(漢方でいう「血」)が足りないときは「血」を補う漢方薬を、水分が不足してるときは水分を補う漢方薬を使います。また、興奮しているときは頭にのぼって停滞している気を鎮める漢方薬を、月経痛やうっ血には血の流れをスムーズにする漢方薬を、むくみには水分を排出する漢方薬を使います。たとえば補剤は低下している気力・体力を補う漢方薬で、漢方治療の考え方を明確に表現した処方ということができます。

不足したものを補う主な生薬
 気を補う  ニンジン(人参) オウギ(黄耆)など
 血を補う  トウキ(当帰)シャクヤク(芍薬)など
 水を補う  バクモンドウ((麦門冬) ジオウ(地黄)なそ

過剰なものを平らにする主な生薬
 気の流れをスムーズにする  コウボク(厚朴) サイコ(柴胡)など
 血の流れをスムーズにする  センキュウ(川きゅう) トウニン(桃仁)など
 水を排泄する ハンゲ(半夏) ブクリョウ(茯苓) ソウジュツ(蒼朮)など

漢方薬の作用は複数の生薬のベクトルの和
 足りないものを補う生薬と、過剰なものを平らにする生薬の代表的なものを挙げました。漢方薬はこれらの生薬を組み合わせて病態を改善しようとするものです。
 ひとつの漢方薬には相互する作用の生薬が含まれていることがあります。もし強い薬効が欲しいなら同じような作用をもつ生薬を組み合わせるかひとつの生薬を大量に服用すればいいのでしょうが、漢方医学では極端な薬効を求めることはありません。常に生体を安定した状態に維持することが漢方医学の目的なのです。そのために漢方薬は、同じ方向のベクトルを持つ生薬だけを組み合わせるのではなく、いろいろな方向のベクトルを組み合わせて、総合的な作用を発揮するように構成されているのです。

もっと漢方を勉強したくなったら
 漢方薬や漢方医学について学ぼうと思ったら、インターネットが便利です。ただし、ネット上の情報は玉石混淆です。ぜひとも文責が明確な信頼できるサイトからの情報を中心に集めてください。以下は株式会社ツムラの提供するサイトです。こうした企業のサイトはわかりやすく作られているので、漢方医学を勉強するときの入り口として利用するといいでしょう。


漢方薬に使われる生薬の花々
 カンゾウ(甘草) サイコ(柴胡)


X 漢方薬の飲み方を工夫してみる

患者さんのなかにはどうしても「苦い」「においが気になる」「顆粒が口に残る」などの理由で漢方薬が飲みにくい人がいます。そういうときにはぜひ飲み方の工夫を紹介してあげてください。

■漢方薬服用のひと工夫
 どうしても飲みにくいという時はちょっとした工夫が患者さんの苦手意識をとり除いてくれます。

苦みやにおいが気になる

・オブラートに包む
包んだオブラートを軽く水につけると飲み込みやすくなります。

・ジュースやココアなどに混ぜる
味のしっかりした飲み物に混ぜると苦みが和らぎます。

「においや苦みを感じるのも効果のうち」と患者さんに伝えるのも大切ね!


顆粒が口に残ってしまう場合は、顆粒をとかすか、顆粒が残る原因をとり除く工夫を。

顆粒が口に残る
・お湯にとかす
200〜250ccくらいのお湯に顆粒を入れ、よく撹拌してとかしてから服用します。お湯の量が少ないと味が濃すぎたりとけにくかったりするので注意しましょう。

とけきれなかったらレンジで温めると溶けやすくなります。

・入れ歯をはずしてから服用させる

・口が乾いている場合、服用の前にお湯で口を潤す
高齢の方は口腔が乾燥しがちで、顆粒が口腔内の粘膜に貼りついたようになってしまうことがあります。服用の前にお湯や水で口を潤すだけでも飲みやすくなります。

嚥下障害の患者さんや小さなお子さんなど顆粒を飲みこむことが難しい場合は、こんな工夫を。

飲み込めない
・ゼリーにまぜる
市販のゼリーを使えば簡単。スポーツ飲料や好みの味のゼリーを作ってまぜるのも患者さんは喜びます。

・ハチミツにつける
 1歳以上の小さなお子さんには、指にハチミツをとって、顆粒をつけてなめさせるのもいいでしょう。

・くず湯などトロミのある液体にまぜる
嚥下障害のある患者さんの場合、お湯などさらさらした液体よりもくず湯のようにある程度トロミがある液体のほうがむせる心配が少なくなります。介護用品のトロミ剤を使ってまぜるのもいいでしょう。

・お粥にまぜる
寝たきりや嚥下障害などのある患者さんには味噌汁やお粥などにまぜるのも一つの工夫です。でも、においや苦みが強い漢方薬の場合は、お粥の味が変わってしまい食欲にも影響するので慎重に。

温かい食品に混ぜるとにおいや苦みを強く感じることがあるので、その場合はデザートにまぜるなど工夫してね!

体に合う漢方薬は飲みやすい
 どんなに苦くても、症状に合った漢方薬であればそれほど苦労せずに服用できるものです。逆に一般に飲みやすいといわれている漢方薬でも症状に合っていないときはなんとなく飲めないから不思議です。
 苦さやにおいが気になってどうしても飲めないという場合は、もしかしたら漢方薬が合っていない可能性もあるので、別の漢方薬に切り替えるのもひとつの工夫といえます。

西と東・・・・・・・・・・その3

西洋医学と漢方医学のエビデンス
 現代医学はエビデンスを重視します。西洋医学で最も信頼されるエンデンスは、複数のRCT(ランダム化比較試験)のデータを集めて行うメタ解析、次いでRCTのデータです。RCTとは患者さんを同じ条件になるようにいくつかのグループに分けて(ランダム化)、AとBの薬や治療法の効果を統計学的に比較する試験のことです。
 一時期、漢方医学はエビデンスを確立しにくいので科学的でないという指摘がありました。しかし現在では、日本国内で信頼できるRCTが345、メタ解析もすでに一つ行われています。漢方医学も科学的に評価される時代になってきたのです。


Y よくある患者さんの質問とベストアンサー

ここでは、患者さんからの漢方薬に関するよくある質問とベストアンサーを紹介します。患者さんとのコミュニケーションに役立ててください。

服用のタイミング
Q1 漢方薬はいつ飲めばいいの?

A できたら食前・食間のお腹のすいているときに飲んでくださいね。

漢方薬は通常、食間(食事の後2時間ほど経過した空腹時)または食前(食事のおよそ30分前まで)にぬるま湯でのむことが望ましいとされています。しかしこうした具体的な時間を患者さんに伝えると、几帳面な方はその数字にこだわりすぎてしまいます。
「食後2時間半になってしまったのでもう飲めない!」などと思い込むことになるので、「お腹がすいているときに飲んでください」くらいの説明にしておくといいであよう。
 漢方薬は自然の生薬を原料にしているので、体内への吸収も食材に似ています。そのために食事の影響をうけやすく、基本的には食前または食間服用が望ましいのです。
 しかし食後でも漢方薬の効果がまったく失われる訳ではありません。大切なのは、決められた1日量を一定期間飲みつづけることです。1回1回の服用時間に神経質になりすぎないことが長続きのヒケツです。

Q2 1日2食の生活を送っていますが、漢方薬も1日2回飲めばいいですか?

A 1日3回の漢方薬なら、3回飲むことが大事です。たとえば、朝起きてから1回、最初の食事と夕飯の間に1回、そして夕飯の後にしばらくして1回という風に飲んでみてください。

Q3 食間に飲み忘れたら、次の食間まで飲まない方がいいですか?

A 飲み忘れに気づいたら、食後でもいいのですぐに飲んでください。時間よりも1日に飲む量をきちんと守ることが大切です。


■漢方薬の効果・服用時間

Q4 エキス顆粒より煎じ薬の方が効果はつよいのでしょう?

A 確かに煎じ薬の方が作用が強くでることがあります。エキス顆粒の良さは成分が一定なことです。成分が一定ということは、西洋医学と併用する時にはとても大事です。原料から品質管理されているのも安心です。持ち運びができるし、煎じる手間がかからないという点も便利ですよね。

 漢方薬の材料は自然の動植物なので、同じ種類の材料でも個体差や季節で成分が違ってきます。またわずかなさじ加減でも煎じ薬は成分比較が変化しやすいのです。
 一方エキス顆粒は品質を均一化して成分を一定に維持するように作られています。いつでも同じ成分比率が保証されるということは、西洋医学の現場にとって使いやすい条件といえます。
 また漢方薬の材料は中国から集められますが、仕入れの段階から厳しい検査で品質管理がされているのもエキス顆粒の特徴です。

Q5 漢方薬はすぐには効き目がないのでしょうか?

A 漢方薬によって効きめの現れ方は違います。速効性のある漢方薬で体質や症状に合っていれば服用して10〜30分で、一般的な漢方薬なら服用をはじめて1〜2週間で、特に長く飲みつづけるタイプの漢方薬でも2〜4週間で効果が実感されるようになります。一カ月ほど服用を続けても効果を実感できない場合は、漢方薬が患者さんに合っていない可能性もあります。かかりつけの先生に相談してみましょう。

漢方薬を勝手にやめたりしないで、不安になったら相談してくださいね!


 第V章で紹介したように速効性のある漢方薬は急性症状によく使われます。一方ゆっくりと効く漢方薬は慢性疾患に使われることが多くなります。慢性疾患は長いj間をかけて病的な体質ができあがっているので、それを改善するにはある程度の期間飲み続ける必要があります。

■ 併用について

Q6 西洋薬とは併用できますか?

A かかりつけの先生は併用しても安全な処方を考えてくれます。今飲んでいる西洋薬を全部先生に伝えてくださいね。また、これから新しく西洋薬を出してもらうには、この漢方薬を飲んでいることを先生に伝えてください。

今、どんなお薬を飲んでいますか?

 一般に漢方薬と西洋薬は併用しやすいのですが、たとえば小柴胡湯とインターフェロンのように併用禁忌もあります。医療スタッフのみなさんは、患者さんがどのような薬を服用しているか、その情報を正確に担当医に伝えられるようにお手伝いをしてあげてください。また万一のこともあるので、咳や動悸、むくみなど漢方薬の副作用の兆しにも注意してあげてください。

Q7 市販の漢方薬を飲んでいるのですが、飲み続けていいですか?

A いくつもの漢方薬を同時期に飲むことはやめましょう。同じ成分をとりすぎることもあって危険です。

 漢方薬は複数の生薬で構成されており、異なる漢方薬に同じ生薬が使われていることがよくあります。たとえばカンゾウは約7割の漢方薬に使われて使われています。カンゾウに含まれるグリチルリチンは大量摂取で低カリウム血症によるむくみなどの副作用を生じることがあります。万が一、カンゾウを含む漢方薬を数種類飲んでいたらグリチルリチンを大量摂取することになってしまいます。こうした危険を避けるために、漢方薬をいくつも同時に服用することは避けなくてはなりません。漢方薬が処方されるときは、他に漢方薬を飲んでいないか確認してください。



22)大建中湯(だいけんちゅうとう)=腸の問題はこれで解決!腹痛、腹部膨満感、術後イレウスによい漢方薬!

出典 『金匱要略』
●心胸中大寒痛し、嘔して飲食すること能わず、腹中寒え、上衝し、皮起こり、出で見れ、頭足有りて上下し、痛みて触れ近づくべからざる証。(『金匱要略』腹満寒疝宿食病篇)

腹候
腹力は中等度以下(1−3/5)だが、腹力によらずに適用される。軟弱無力で大腸の蠕動が見えるような場合もあり、ガスで張り気味の場合もある。

気血水
気が主体だが気血水いずれとも関わる。

六病位
太陰病。

脈・舌
脾胃虚寒の疝痛であれば、舌質は淡白、あるいは青紫、舌苔は白滑。脈は沈弦あるいは遅。脾胃実寒の疝痛であれば、舌質は青紫、脈は沈弦あるいは遅。

口訣
●本方は、出渋るような弛緩性下痢にも、兎糞状の硬い便にも有効なことがある。腸の蠕動亢進はていねいに問診すれば必発である。(藤平健)
●下から上へムクムク持ち上がるような腹痛によい。(浅田宗伯)
●本方を服用後、空咳を増したり、浮腫を生ずる場合は用量を減ずるか、半夏厚朴湯、五苓散、真武湯などに転方する。(『現代漢方治療の指針』)

本剤が適応となる病名・病態








23)芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)=足がつるなど、筋肉のけいれんによい漢方薬!

24)葛根湯(かっこんとう)=風邪のひきはじめ、肩こりなどに、すぐ効く漢方薬!

25)補中益気湯(ほちゅうえっきとう)=低下した気力、体力を補い、免疫能を高める漢方薬!

26)六君子湯(りっくんしとう)=食欲不振によい漢方薬!

27)抑肝散(よくかんさん)=イライラ、怒りやすい、不眠によい漢方薬!

28)牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)=お年寄りの頻尿改善によく効きます!下半身のしびれや痛みにもよいです!

29)加味逍遥散(かみしょうようさん)=更年期の女性、いつも不安や不満があり、焦りを感じているタイプによいです!

30)小青竜湯(しょうせいりゅうとう)=さらさら鼻汁、鼻カゼ、花粉症によいです!眠くならないので安心です!

31)麦門冬湯(ばくもんどうとう)=空咳が続いて困っている人に最適の漢方薬です!


1)「二日酔い」にすぐ効く漢方薬は、「五苓散」です。

 2)「便秘」にすぐ効く漢方薬は、@大黄甘草湯 A桃核承気湯です。

 3)「乗物酔い」にすぐ効く漢方薬は、@乾姜人参半夏丸 A小半夏加茯苓湯です。

 4)「こむら返り」にすぐ効く漢方薬は、「芍薬甘草湯」です。

 5)「かゆい人」には、@黄連解毒湯 A消風散 B当帰飲子が、すぐ効く漢方薬です。

 6)「だるい人」には、@十全大補湯 A補中益気湯 B人参養栄湯 C当帰芍薬散 D清暑益気湯が、すぐ効く漢方薬です。

 7)「食欲がない人」には、@六君子湯 A半夏瀉心湯 B補中益気湯が、すぐ効く漢方薬です。

 8)「眠れない人」には、@加味帰脾湯 A抑肝散 B酸棗仁湯が、すぐ効く漢方薬です。

 9)「肩がこる人」には、@葛根湯 A二朮湯 B加味逍遥散が、すぐ効く漢方薬です。

10)「冷える人」には、@当帰四逆加呉茱萸生姜湯 A人参養栄湯 B八味地黄丸 C温経湯 D当帰芍薬散 E人参湯が、すぐ効く漢方薬です。

11)「咳が長引く人」には、@麦門冬湯 A清肺湯 B柴朴湯 C半夏厚朴湯 D参蘇飲 E柴陥湯 F五虎湯が、すぐ効く漢方薬です。

12)「風邪をひきやすい人」には、@補中益気湯 A十全大補湯 B柴胡桂枝湯が、すぐ効く漢方薬です。

13)「風邪をひいてしまった人」には、@葛根湯 A麻黄附子細辛湯 B麻黄湯 C小青竜湯 D葛根湯加川弓辛夷が、すぐ効く漢方薬です。

14)「手足がしびれる人」には、@牛車腎気丸 A真武湯 B八味地黄丸が、すぐ効く漢方薬です。

15)「認知症に伴う周辺症状」には、@抑肝散 A釣籐散が、すぐ効く漢方薬です。

16)「お年寄りの諸問題」には、@牛車腎気丸 A八味地黄丸が、すぐ効く漢方薬です。

目次

T お年寄り介護の現場で出会う「困った」症状にこんな漢方薬が使われています。
 全身状態の底上げ 疲れやすい・だるい
 心の状態1 イライラ、暴力・興奮、せん妄
 心の状態2 抑うつ、不安
 眠りの状態 不眠・夜間の覚醒
 咽喉の問題 口内炎/のどの炎症/しつこい咳
 「食べる」の問題1 嚥下困難
 「食べる」の問題2 しゃっくり
 「食べる」の問題3 吐き気・嘔吐
 「食べる」の問題4 食欲がない
 「排泄」の問題1 尿の出が悪い
 「排泄」の問題2 頻尿、尿失禁
 「排泄」の問題3 便秘
 「排泄」の問題4 術後のイレウスや腸管マヒ/下痢

 むくみ
 手足の感覚の問題1 しびれ、痛み、冷感
 手足の感覚の問題2 筋肉の痛み、こむら返り
 手足の感覚の問題3 膝・関節の痛み
 皮膚の問題 かゆい
 風邪 風邪をひいた/風邪をひかないために
 介護のお手伝いをする漢方薬早見表
  認知症ケア、がん患者のケア


U 介護現場でよく出会う漢方薬を知ってみよう
  41 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
 100 大建中湯(ダイケンチュウトウ)
  68 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
 107 牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
  54 抑肝散(ヨクカンサン)
  47 釣藤散(チョウトウサン
  43 六君子湯(リックンシトウ)
  29 麦門冬湯(バクモンドウトウ)
  14 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
 127 麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)
  86 当帰飲子(トウキインシ)


V 漢方薬の飲み方の工夫と副作用の知識
 飲み方の工夫
 副作用にいち早く気づくためのヒント


W よくある漢方薬の疑問・質問
 服用のタイミング、飲み忘れ、服用方法 Q1、Q2、Q3
 併用の注意点、服薬情報 Q4、Q5、Q6
 お年寄りの注意点、効果が現れるまでの期間、医療経済への影響Q7、Q8、Q9



T お年寄り介護の現場で出会う「困った」症状にこんな漢方薬が使われています
 咽喉の問題  14半夏瀉心湯など
 「食べる」の問題  16半夏厚朴湯など
 「排泄」の問題  107牛車腎気丸など
 風邪  127麻黄附子細辛湯など
 手足の感覚の問題  107牛車腎気丸など
 認知症ケア
 全身状態の底上げ  補剤各種
 眠りの問題  137加味帰脾湯など
 心の状態  54抑肝散など
 むくみ  17五苓散など
 かゆい  86当帰飲子など
 がん患者のケア

本人や周囲に負担をかける、「こういう症状が出たら困るな」の中で、特に漢方薬がお手伝いしやすいものを選びました。


全身状態の底上げ 疲れやすい・だるい
 41 補中益気湯  なんとなく元気がない、気力や生命力が低下している、といった人の全身状態の底上げに使われる代表的な漢方薬です。(ここに注意! 甘草、当帰を含んでいます)

 48 十全大補湯  41補中益気湯で効果がない場合、気力だけでなく体力の低下も目立ってきた人に。(ここに注意! 甘草、当帰、桂皮を含んでいます)

108 人参養栄湯  体力消耗が目立ち、横になっている時間が多い、少し動いただけで息切れがする、咳や痰の呼吸器症状がある、という人に。(ここに注意! 甘草、当帰、桂皮を含んでいます)

・全身状態の底上げには補剤を
 ここに挙げた3つの漢方薬は代表的な補剤です。補剤とは、低下した気力や体力を補う漢方薬の総称です。元気がない、全体的に生命力が低下した感じがする高齢者、体力消耗が著しい慢性疾患や術後の患者さんなどに対して、低下した心身の状態を底上げすることを目的に処方します。穂剤には免疫力回復の作用も期待されます。気力・体力が上昇すると、全身倦怠感や抑うつ気分が改善するだけでなく、食欲不振やしびれや痛み、不眠、頻尿などの諸症状までも改善することがあります。


心の状態1 イライラ、暴力・興奮、せん妄
 54 抑肝散  興奮してイライラが強く、夜も眠れないような人に。認知症の周辺症状、がん末期のせん妄にも使われます。(ここに注意! 甘草、当帰を含んでいます)

 15 黄連解毒湯  比較的体力がある人で、のぼせ気味でイライラのある場合に。(ここに注意! 黄ごん、山梔子を含んでいます。苦いので服用の工夫を)

 47 釣藤散  イライラ・興奮などに加え、緊張が強く、めまいや慢性的な頭痛のあるような場合に。(ここに注意! 甘草、を含んでいます)

・傾眠の心配がない漢方薬
 認知症の周辺症状に使われることが多い抗精神病薬は過鎮静による日中の傾眠がしばしば問題になりますが、54抑肝散などの漢方薬にはこうした副作用がほとんどありません。
 *認知症の周辺症状
  認知症に伴って生じる、徘徊、攻撃行動、不潔行為、幻覚、妄想などの行動や心理症状のことを指します。英語の頭文字をとって「BPSD」とも呼ばれます。


心の状態2 抑うつ、不安
 54 抑肝散  不安で胸がいっぱいになり落ち着かない、胸が熱く感じるような時に。(ここに注意! 甘草、当帰を含んでいます)

 41 補中益気湯  がん患者の気力低下に処方して、治療にとりくむ気力を維持し、免疫力アップをはかる、という使い方もあります。(ここに注意! 甘草、当帰を含んでいます)

 12 柴胡加竜骨牡蛎湯 発作的に不安が強まり、焦りを感じたり動悸を訴えたりする場合に。(ここに注意! 黄ごん、桂皮を含んでいます)

漢方メモ1
 介護は、相手の生活スタイルから人生観までをトータルに受け止めて、その人に寄り添う姿勢が求められます。漢方医学もまた、ひとりひとりの心身の状態に合わせて治療法を考えます。介護も漢方医学も、その人にぴったりのサービスを提供する、最上の「オーダーメイド」なのです。

その他の処方
 体力のない高齢者やがん末期の抑うつや不安には、70香蘇散(コウソサン)や16半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)なども使われます。


眠りの問題  不眠・夜間の覚醒

137 加味帰脾湯 体力がおち、顔色が悪いような人で、眠りが浅く不安を訴えるような人に。(ここに注意!甘草当帰を含んでいます。

54 抑肝散 帰が高ぶって眠れない、一度目覚めると寝つけないときなどに。頓服で用いられることもあります。(ここに注意!甘草、当帰を含んでいます。)

103 酸棗仁湯 疲れきってねむれないような人に(ここに注意!甘草を含んでいます

その他の処方
 この他、心を落ち着かせる柴胡を含む漢方薬(柴胡剤)も熟眠感を増す作用が期待されます。不眠に使われる柴胡剤には、11 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)、8 大柴胡湯(ダイサイコトウ)などがあります。


咽喉の問題 口内炎/のどの炎症/しつこい咳

14 半夏瀉心湯 口内炎に  口内炎には第一に選択すべき漢方薬。溶かした薬液を口に含んでゆっくり服用します(ここに注意!甘草、黄ごんを含んでいます)

138 桔梗湯 のどの炎症、腫れ、痛みに 咽咽部の痛みや炎症に。溶かした薬液でのどをすすぐようにしながら服用します。冷やして服用してもいいでしょう。(ここに注意!甘草を含んでいます。桔梗は多飲で悪心をおこすことがあります。

29 麦門冬湯 しつこい咳に 感染症によるせきではなく、乾いた痰のない咳が長引き、顔が赤くなるほど咳き込むようなときに(ここに注意! 甘草を含んでいます)


ほとんどの漢方薬エキス製剤はお湯で溶かして温かいまま飲むのに適しているけれど、桔梗湯のように冷やした方がいい漢方薬もあるんだね!

黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)も、エキス剤を溶かして服用する場合には冷まして飲むといいよ。


「食べる」の問題1  嚥下困難

16 半夏厚朴湯 のどの違和感があって「のどになにかいる」という訴えがある場合に用いられます。のどが狭い、食道が狭い、何となく息苦しくてものが飲み込めない、というときに。

116 茯苓飲合半夏厚朴湯  のどの違和感など、上記の症状に加えて、吐き気や胸焼けなど消化器症状を伴う場合に。


その他の処方
 のどの渇きが強く飲み込めない時には白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)、乾いた咳が多く出る時は 29麦門冬湯(バクモンドウトウ)も用います。

食べ物を食べやすい大きさに揃える、とろみを加える、などの介護の工夫が、漢方薬でいっそう効果的になるといいな。

漢方メモ2
 オーダーメイドで治療法を決める漢方医学では、元々の体質を重視します。基本的な体質は「虚証」と「実証」にわけられます。「虚証」は筋肉が少なくどちらかというと弱々しいタイプ。「実証」は筋肉質でがっちりしているタイプです。同じ症状でもタイプによって使う漢方薬が違ってきます。介護を受けるお年寄りにはどちらかというと「虚証」が多いので、虚証向きの漢方薬が用いられることが多くなります。


「食べる」の問題2  しゃっくり

31 呉茱萸湯 体力が低下して、手足が冷えている人に。高齢者や術後患者、がん治療中の方にも使いやすい漢方薬です。冷えによって増悪する慢性頭痛などにも。(ここに注意!苦いので、服用の工夫を

68 芍薬甘草湯 筋肉のけいれんへの作用が知られる漢方薬で、しゃっくりにも使われます。即効性が期待できるので頓服で。(ここに注意!甘草をふくんでいます)

14 半夏瀉心湯 消化器症状全般に幅広い作用が知られる漢方薬で、しゃっくりにも使われます。(ここに注意!甘草、黄ごんを含んでいます

西洋薬には特効薬がないしゃっくり
 しゃっくりは抗がん薬の副作用や手術の影響でも発症します。漢方薬には西洋医学では特効薬がないこれらの症状に対処できるものがあり、QOLの維持に役立てられています。


「食べる」の問題3   吐き気・嘔吐

17 五苓散 のどが乾いて、むくみ、めまいを伴い、胃に水がたまってチャプチャプする感じがある場合に。(ここに注意!桂皮を含んでいます)

69 茯苓飲 高齢者や病後で体力が低下した人で、胸がつかえる、吐き気がする、酸っぱいものが上がってくる、水のようなものを吐く、といった症状に使われます。

43 六君子湯 食欲不振に対する作用が広く知られていますが、逆流や吐き気にも使われています。術後や抗がん薬治療に伴う悪心にも。(ここに注意!甘草を含んでいます)

抗がん薬の副作用対策としての漢方薬
 がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対して、制吐剤だけではQOLの維持が十分でない時に漢方薬が役立っています。


「食べる」の問題4 食欲がない

43 六君子湯 食欲不振に一番に使われます。高齢者や、手足が冷えやすい人に。(ここに注意!甘草を含んでいます)

14 半夏瀉心湯 消化管全般の症状に処方される漢方薬ですが、特に胸がつかえたような感じがあって食欲が出ない場合に。(ここに注意!甘草、黄ごんを含んでいます

41 補中益気湯 疲れやすい人、病後や術後に。名前にある「中」は消化管を意味します。きちんと食べて体力を補うというのが名前の由来です。(ここに注意!甘草、当帰を含んでいます)

食は気力・体力の元
 食欲不振に使われる漢方薬には、単に消化器症状を改善するだけでなく、気力・体力を回復させるものが多くあります。41 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)や43 六君子湯(リックンシトウ)はそうした作用の代表的な漢方薬です。きちんと食べることが気力・体力維持には不可欠、ということですね。


「排泄」の問題1 尿の出が悪い

107 牛車腎気丸 お年寄りなどの下半身の諸症状に。尿の出が悪い時も、頻尿にも、どちらにも作用を持っています。(ここに注意!桂皮、附子を含んでいます。地黄を含んでいるので、時にムカムカを感じることも。

40 猪苓湯 利尿作用で知られる猪苓を含む漢方薬で、排尿障害や尿路不定愁訴に広く使われます。

112 猪苓湯合四物湯 上記40 猪苓湯の症状に加えて、皮膚が乾燥して貧血傾向で色つやが悪く、胃腸が弱い人にはこちらも使われます・

尿が出ないのは怖いので、漢方薬などを上手に使って改善したいね。


「排泄」の問題2  頻尿、尿失禁

107 牛車腎気丸 前立腺肥大、女性に多い過活動膀胱などによる頻尿・尿漏れ、夜間の頻尿、切迫した尿意の改善に幅広く使われます。(ここに注意!桂皮、附子を含んでいます。地黄を含んでいるので、時にムカムカを感じることも。

111 清心蓮子飲 弱々しく冷えのある人の、尿の出は悪いが、尿意は頻繁にある、残尿感、下腹部の不快感といった尿路不定愁訴に。(ここに注意!甘草、黄ごんを含んでいます。

その他の処方
 慢性に経過した尿路感染症からくる症状には 56 五淋散(ゴリンサン)、イライラして怒りっぽい人には 76 竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)なども使います。

漢方メモ3
 漢方医学では、症状も「虚証」と「実証」に分けます。症状としての「虚証」は生命活動を支える要素が不足している状態で、「実証」は要素の循環が滞って部分的に過剰になっている状態です。不足しているところは補い、過剰になっているところは平らかにするのが漢方治療の基本的な考え方です。例えば補剤は不足したものを補う漢方薬、抑肝散は「気」の過剰を抑える漢方薬です。


「排泄」の問題3  便秘

126 麻子仁丸 どんな便秘にもまずこれを。高齢者にも使いやすい漢方薬です。

51 潤腸湯 体力が低下している人、高齢者の便秘に。水分の足りないところを潤す性質を持っています。(ここに注意!甘草、黄ごん、当帰をふくんでいます。

84 大黄甘草湯 便秘に幅広く使われている漢方薬です。大黄と甘草の二つの生薬で構成されているので、即効性が期待できます。(ここに注意!甘草を含んでいます)

100 大建中湯 腹痛を伴う便秘や、冷えがあり、ガスがたまって下腹がはっている便秘などに。腸の蠕動運動を活発にしたり硬い便を柔らかくする作用があります。

認知症での下剤の難しさ
 効果的な下剤は西洋薬にもありますが、効きすぎて軟便や下痢になることがあり、結果的に弄便などの周辺症状につながるという問題があります。漢方薬は便を出させるという下剤としての作用だけでなく、全身の調和をはかって結果的に正常な便通の回復を期待するもので、介護の現場でも使いやすいものといえます。


「排泄」の問題4  術後のイレウスや腸管マヒ/下痢
 
100 大建中湯 術後のイレウスや腸管マヒに  西洋医学との相性もよく、術後のイレウスや腸管マヒ、抗がん薬やオビオイド系鎮痛薬による便秘などに広く使われています。食品成分のみで構成されていて安全性の高さにも信頼があります。

14 半夏瀉心湯 下痢に  この漢方薬は、消化管の入り口(口)から出口(便)までの症状全般に幅広く使われます。抗がん薬による下痢にも。(ここに注意!甘草、黄ごんをふくんでいます。

30 真武湯 下痢に  冷えが強く体が弱っている人に。お年寄りの胃腸疾患など幅広い症状に使われます。(ここに注意!附子を含んでいます)

ひとつの症状を治すだけでなく、からだ全体の調和をはかってその人本来の状態に回復させるのが漢方医学なのね。

漢方メモ4
 メモ3で紹介した「虚証」「実証」の他に、症状を「寒」と「熱」に分け、「寒」つまり冷えによる症状には温める漢方薬、熱がこもった症状には冷ます漢方薬、という使い分けをすることもあります。温める漢方薬として代表的なものには100 大建中湯、冷ます漢方薬には 15 黄れん解毒湯などがあります。


むくみ

17 五苓散 消化管やからだの組織の余分な水分を調整する代表的な漢方薬です。各種疾患に伴うむくみ全般に。(ここに注意!桂皮をふくんでいます。脱水症状のある人には禁忌です。

114 柴苓湯 上記 17 五苓散の症状に比べ、消化管の炎症が強い場合に。がん切除術後のリンパ浮腫にも処方されます。(ここに注意!甘草、黄ごん、桂皮を含んでいます)

20 防已黄耆湯 色白で疲れやすく、水ぶとりの体質の人の膝関節の腫れや痛みの伴う下肢のむくみに。


114 柴苓湯と17 五苓散
 114 柴苓湯は17 五苓散にさらに7種類の生薬を足したもので、どちらもからだの中で滞っている水分の流れを正す作用があり、むくみによく使われます。とても似た漢方薬ですが、114 柴苓湯に加えられた生薬の違いで、下痢や慢性胃炎などの消化管の症状を伴う場合などに使い分けられています。


手足の感覚の問題1 しびれ、痛み、冷感

107 牛車腎気丸 お年寄りの下半身の諸症状に使われます。タキサン系やオキサリプラチンといった抗がん薬による末梢神経障害にも。(ここに注意! 桂皮、附子を含んでいます。地黄を含んでいるので、時にムカムカを感じることも。

30 真武湯 冷えの強い人に使いやすい、からだを暖める漢方薬です。冷えからくるしびれや痛み、胃腸の症状、気力の低下など、お年寄りの幅広い症状に使われます。(ここに注意!附子を含んでいます

38 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 手足の冷えが強く、冷えによる痛みやしびれに。(ここに注意!甘草、桂皮をふくんでいます。

・附子はからだを温めて痛みをとる生薬です
 附子はからだを温めつつ痛みをしずめる性質をもっています。附子を含む漢方薬は、基本的に温かいお湯と一緒に服用することがすすめられます。エキス剤をお湯に溶かして飲むのもいいでしょう。


手足の感覚の問題2 筋肉の痛み、こむら返り

68 芍薬甘草湯 筋肉のけいれんとそれに伴う疼痛に有効で、しゃっくりや急性のぎっくり腰などにも用いられます。タキサン系抗癌薬による筋肉痛、末梢神経障害にも使われています。(ここに注意!甘草を含んでいます)

68 芍薬甘草湯はこむら返り、疝痛、月経痛などにも用います。

・即効性と甘草の割合を考えて
 甘草を芍薬の2種類の生薬からなる漢方薬です。生薬の数が少ない漢方薬は即効性が期待され、本剤も症状があるときに頓服で用いるのが基本です。他の漢方薬に比べ甘草の割合が多いので、その意味でも長期間続けて飲むよりは頓服に適しています。他の甘草を含む漢方薬や、グリチルリチンを含む薬と併用するときは注意が必要です。


手足の感覚の問題3  膝・関節の痛み

20 防已黄耆湯 色白でお腹がぽっちゃりしている、いわゆる水ぶとりタイプの膝の痛みに。変形性膝関節症にももちいられます。(ここに注意!甘草を含んでいます)

18 桂枝加朮附湯 冷え症でお風呂に入ると楽になるというような人の痛みに。(ここに注意!桂皮、甘草、附子を含んでいます)

28 越婢加朮湯 体力がある人で、関節が腫れて痛む時に。(ここに注意!麻黄、甘草を含んでいます)

漢方メモ5
 漢方薬を構成する生薬にも温める性質、冷ます性質のものがあります。温める漢方薬には温める生薬が多く含まれていますが、冷ます生薬も同時に配合されることが多く、作用のバランスがとられています。冷ます性質の漢方薬も同様です。


皮膚の問題 かゆい

86 当帰飲子 冷え性の人で、皮膚がカサカサしている人のかゆみに。熱を持った炎症のある人には不向きです。(ここに注意!甘草、当帰を含んでいます)

15 黄連解毒湯 アトピー性皮膚炎など熱のあるかゆみにはこちらを。熱を冷ます性質があるので、冷え性への使用には注意を。(ここに注意!黄ごん、山梔子を含んでいます。苦いので服用の工夫を)

22 消風散 分泌物が多い、じくじくした湿疹で慢性的にかゆみがあるものに。(ここに注意!甘草、当帰を含んでいます)

 「かゆみ」にもいろいろなタイプがあるので、それに合わせて漢方薬を使い分けるんだね。


風邪 風邪をひいた/風邪をひかないために

127 麻黄附子細辛湯(風邪をひいた) お年寄りの、のどがイガイガする、背中がぞくぞくする、という風邪のひきはじめに。(ここに注意!麻黄、附子を含んでいます)

1  葛根湯(風邪をひいた) 市販薬としても有名ですが、風邪の初期に使います。風邪が長引いたら別の処方に切り替えます。(ここに注意!甘草、桂皮、麻黄を含んでいます)

41 補中益気湯(風邪をひかないために) 気力・体力の底上げをはかり、免疫力アップを目指して使われます。(ここに注意!甘草、当帰を含んでいます)

 ひとくちに風邪といっても、ひきはじめに使う漢方薬と長引いてから使う漢方薬は別なんだね。


介護のお手伝いをする漢方薬早見表
 本誌で紹介した漢方薬の中で、特に認知症およびがん患者のケアで出会うことの多いものをまとめました。症状改善の観察や副作用への注意の参考にしてください。本誌で紹介したものは代表的な処方のごく一部です。実際には症状や体質に合わせてこの他の漢方薬が使われることもあります。

認知症ケアによく使われる漢方薬

54 抑肝散(ヨクカンサン)
主な症状
 認知症の周辺症状
 ・妄想・幻覚・興奮/攻撃性・うつ・不安
 ・焦燥感/易刺激性・睡眠障害
 不眠 
 夜間覚醒
注意点
 甘草、当帰を含む!

137 加味帰脾湯(カミキヒトウ)
主な症状
 眠りが浅い
 精神不安
注意点
 甘草、当帰を含む!

47 釣藤散(チョウトウサン)
主な症状
 認知症の周辺症状
 ・妄想・幻覚・興奮/攻撃性・うつ・不安
 ・焦燥感/易刺激性・睡眠障害
 頭痛
 過度の緊張
注意点
 甘草を含む!

15 黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)
主な症状
 のぼせ気味でイライラの症状
注意点
 黄ごん、山梔子を含む!


がん患者のケアによく使われる漢方薬
41 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
48 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
108 人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)
主な症状
 気力・体力の低下、全身倦怠感、食欲不振、免疫力が低下して風邪をひきやすい、化学療法による骨髄抑制、術後の貧血
注意点
 甘草、当帰を含む!

54 抑肝散(ヨクカンサン)
主な症状
 がん末期のせん妄
注意点
 甘草、当帰を含む!

100 大建中湯(ダイケンチュウトウ)
主な症状
 術後のイレウス、腸管マヒ、化学療法、オピオイド系鎮痛薬による便秘
注意点
 特になし

107 牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
主な症状
 化学療法による末梢神経障害・しびれ、痛み、冷感、術後の排尿障害
注意点
 桂枝、附子を含む!

14 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
主な症状
 化学療法による口内炎や下痢、悪心・嘔吐、食欲不振
注意点
 甘草、黄ごんを含む!

68 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
主な症状
 化学療法による筋肉痛、化学療法によるしゃっくり、こむら返り
注意点
 甘草を含む!

43 六君子湯(リックンシトウ)
主な症状
 術後/化学療法による食欲不振、胃部不快感、胸焼け、嘔吐、下痢
注意点
 甘草を含む!

漢方薬になった食べ物@
 ショウキョウ(生姜) ・・・しょうが
こんな漢方薬に使われています
 1葛根湯、 43六君子湯、 41補中益気湯など



U 介護現場でよく出会う漢方薬を知ってみよう

認知症やがん患者の術後、緩和ケアなどの現場で漢方薬が広く使われるようになっています。
介護の現場で出会うことの多い漢方薬について、詳しくご紹介します。

41 補中益気湯
気力・体力が低下している人への代表的な補剤です。
お年寄りや術後、がん患者などにも使われます。

■効能又は効果
消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症」:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症
■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

全身がだるい 食欲がない 疲れやすい 風邪をひきやすい 声や表情に力がない

補中益気湯はこれらの生薬でできています。
からだを温める
ニンジン(人参) ソウジュツ(蒼朮) オウギ(黄耆) トウキ(当帰) チンピ(陳皮) タイソウ(大棗) ショウキョウ(生姜)
からだを冷ます
サイコ(柴胡) ショウマ(升麻)
中間の性質
カンゾウ(甘草)

100 大建中湯
お年寄りから術後・抗がん薬の副作用対策まで幅広い腸の問題に。
食品成分だけでつくられている漢方薬です。
■効能又は効果
腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの
■用法・用量
通常、成人1日15.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

術後のイレウスとその予防 過敏性腸症候群 便秘 比較的強い腹痛 腹部膨満感

大建中湯はこれらの生薬でできています。
からだを温める
カンキョウ(乾姜) ニンジン(人参) サンショウ(山椒) コワイ(膠飴)

食べ物だけでできているのがいいね。

大建中湯は腸管運動亢進作用、腸管粘膜血流の増加作用、抗炎症作用があることが解明され、臨床データでは術後単純性癒着性イレウス症状、過敏性腸症候群患者の腹部膨満感などの消化器症状、難知性便秘症を含む排便障害、向精神薬による排便障害などの改善効果が証明されています。

68 芍薬甘草湯

こむら返りに対する数少ない治療薬です。頓服で即効性があることも人気の秘訣。

■効能又は効果
急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛
■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

急激な足のけいれん(こむら返り)
しゃっくり
急に来るぎっくり腰
尿管結石
胃の痛み
生理痛

芍薬甘草湯はこれらの生薬でできています
シャクヤク(芍薬)
カンゾウ(甘草)

含まれている生薬の数が少ない漢方薬は、効果が出るまでの期間が短くなるんだって
だから芍薬甘草湯は即効性があるのね!

甘草を多く含むので、副作用の低カリウム血症(偽アルドステロン症)の出現に注意が必要です。そのため、処方は症状が出たときの頓服が基本で、できるだけ長期間の継続投与は避けるようにします。

107 牛車腎気丸
お年寄りなど体力がない人の下半身の諸症状やかすみ目に。
附子を含み、からだを温める漢方薬です。

■効能又は効果
疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:
下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

かすみ目、口が乾く、かゆみ、四肢のしびれ、下肢の脱力感、冷え、夜間頻尿、排尿困難

牛車腎気丸はこれらの生薬でできています。
サンシュユ(山茱萸) サンヤク(山薬) ケイヒ(桂皮) ブシ末(附子) 
ジオウ(地黄) シャゼンシ(車前子) タクシャ(沢瀉) ボタンピ(牡丹皮) 
ブクリョウ(茯苓) ゴシツ(牛膝)


54 抑肝散
認知症の周辺症状の改善作用の研究が進み、注目度急上昇!
がん末期のせん妄などにも。

■効能又は効果
虚弱な体質で神経が高ぶるものの次の諸症:
神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

イライラしている
怒りっぽい
眠れない
興奮しやすい
せん妄
徘徊


抑肝散はこれらの生薬でできています。
ソウジュツ(蒼朮) センキュウ(川きゅう) トウキ(当帰)
チョウトウコウ(釣藤鈎) サイコ(柴胡)
ブクリョウ(茯苓) カンゾウ(甘草)

甘草を含む漢方薬の副作用である低カリウム血症(偽アルドステロン症)は、高齢者ではその出現頻度が高くなります。抑肝散は甘草を含み、かつ高齢者に使われることが多い漢方薬なので、注意が必要です。


47 釣藤散
認知症の周辺症状に抑肝散と同様使われています。
慢性頭痛やめまいにも用いられます

■効能又は効果
慢性に続く頭痛で中年以降、または高血圧の傾向のあるもの

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する

慢性頭痛
のぼせ
肩こり
めまい
認知症の周辺症状

釣藤散はこれらの生薬でできています
チンピ(陳皮) ハンゲ(半夏) ニンジン(人参) ボウフウ(防風) ショウキョウ(生姜)
チョウトウコウ(釣藤鈎) バクモンドウ(麦門冬) キクカ(菊花) セッコウ(石膏)
ブクリョウ(茯苓) カンゾウ(甘草)


43 六君子湯
薬の影響でも、精神的なものでも、体力低下からくるものでも、食欲不振にはこれ!

■効能又は効果
胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐
■通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

食欲不振
胃もたれ
X線や内視鏡でもても異常がみられない胃の不快感や痛み

六君子湯はこれらの生薬でできています。
ニンジン(人参) ソウジュツ(蒼朮) ハンゲ(半夏) チンピ(陳皮) タイソウ(大棗) ショウキョウ(生姜)
カンゾウ(甘草) ブクリョウ(茯苓)

お腹が温まりそうだね


29 麦門冬湯
痰のないしつこい空咳に。気管支炎や気管支ぜんそくにも使われます

■効能または効果
痰のきれにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく
■用法・用量
通常、成人1日9.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する

のどに痰がはりついたような感じのどのイガイガ
はげしく咳き込むけれど痰は出ない
風邪の後、咳だけ残っている

麦門冬湯はこららの生薬でできています
ハンゲ(半夏) タイソウ(大棗) ニンジン(ニンジン)
バクモンドウ(麦門冬)
コウベイ(粳米) カンゾウ(甘草)

半夏以外は全部気道を潤す性質を持っている生薬です!
痰の多い咳に使われないのはそのためなのね。


14 半夏瀉心湯

食道全般の症状に幅広く使われます。
抗がん薬や免疫抑制剤による口内炎や下痢にも。

■効能又は効果
みぞおちがつかえ、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って何便または下痢の傾向のあるものの次の諸症:
急・慢性胃腸カタル、発酵性下痢、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸焼け、口内炎、神経炎

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

吐き気・嘔吐
下痢
食欲不振
抗がん薬による口内炎や下痢

半夏瀉心湯はこれらの生薬でできています
ハンゲ(半夏) ニンジン(人参) タイソウ(大棗) カンキョウ(乾生)
オウゴン(黄ごん) オウレン(黄連)
カンゾウ(甘草)


127 麻黄附子細辛湯
のどがチクチクするような風邪の出鼻をくじく漢方薬。お年寄りの初期の風邪に使われます。

■効能又は効果
悪寒、微熱、全身倦怠、低血圧で頭痛、めまいあり、四肢に疼痛冷感あるものの次の諸症:
感冒、気管支炎
■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

麻黄附子細辛湯はこれらの生薬でできています。
マオウ(麻黄) サイシン(細辛) ブシ末(附子)

お年寄りの風邪はまさに万病の元なので、ひきはじめに対処できるとありがたいね!


86 当帰飲子
お年寄りや、体が弱っている人の、熱を持たない乾いたかゆみにはこの処方が適しています。

■効能又は効果
冷え症のものの次の諸症:
慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ
■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

分泌物の少ない乾いた感じの湿疹、かゆみ

当帰飲子はこれらの生薬でできています。
トウキ(当帰) シツリシ(しつり子) センキュウ(川きゅう) ボウフウ(防風) カシュウ(何首烏) オウギ(黄耆) ケイガイ(荊芥)
ジオウ(地黄) シャクヤク(芍薬)
カンゾウ(甘草)

漢方薬になったたべもの
コウベイ(粳米)…お米
こんな漢方薬に使われています
21 麦門冬湯など



巻頭言
さらに増す医療スタッフの重要性
 現代医療は治療技術や薬剤、医療機器の進歩だけで成立するものではなく、患者さんのケアに関わるすべての専門職種の協力がなくては成り立ちません。
 たとえばがん患者さんを例にとると、外科、放射線科、内科の医師はもとより、抗がん剤の調整や副作用対策に取り組む薬剤師、精神面のサポートをする臨床心理士、術後のリハビリを行う理学療法士や作業療法士、そして誰よりも患者さんの身近にいて患者さんの心と体の状態を観察し看護にあたる看護師など、多くのスタッフの皆さんにはこれまで以上の期待と責任が寄せられています。

チーム医療の実践で求められるもの
 多くの専門職種の協力で医療を支えるという精神はチーム医療という形で実践されています。チーム医療は患者さんの生活全体の質(QOL)を向上させる「全人的医療」を目的としています。そのためには患者さんを中心に様々な職種の医療スタッフが互いに連携しながら各自の専門性を発揮することが求められます。すなわち、各スタッフは患者さんを中心に同等の立場でそれぞれの専門性に責任を持つ時代になったのです。チーム医療における医療スタッフの役割は、患者さんの日常の変化や訴えにきめ細かく対応して、最先端医療による治療の成果と全人的ケアを結びつけることにあります。

医療スタッフこそ漢方知識を
 チーム医療の根底にある「全人的医療」の概念は漢方治療に共通するものです。表に出ている症状の背景には全身の生命活動のバランスの乱れがあり、その環境を整えることで局所の症状を改善する、というのが漢方治療の考え方なのです。このような概念で使われてきた漢方薬は、臨床検査では測れないような微妙な変化や漠然とした患者さんの訴えなど、西洋医学では対応が難しい症状に力を発揮します。つまり医療スタッフの皆さんが接することの多い臨床の諸問題こそ、漢方薬で解決できる可能性が高いのです。全国の臨床医のうち、日常臨床に漢方薬を取り入れている医師は85%を超えているという調査結果もあります。医療スタッフの皆さんが日常業務で漢方薬に接する機会も増えています。そうしたなかで、皆さんが正しい漢方薬の知識とともに全人的ケアに役立ててくだされば、それは現代医学が求めるこれからの医療のあり方に大いに貢献すると期待されます。
 本書が医療スタッフのみなさんの漢方治療への理解の扉を開く一助になれば幸いです。


目次
T ステップ1、2、3で「困った」を解決してみる
 かゆい
 だるい
 食欲がない
 眠れない
 肩がこる
 冷える
 咳が長引く
 風邪をひきやすい
 風邪をひいてしまったら
 手足がしびれる
 認知症に伴う周辺症状/お年寄りの諸問題

U 漢方薬トップ10をもっと知ってみる
 1大建中湯(ダイケンチュウトウ)
 2芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
 3葛根湯(カッコントウ)
 4補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
 5六君子湯(リックンシトウ)
 6抑肝散(ヨクカンサン)
 7牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
 8加味逍遥散(カミショウヨウサン)
 9小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
10麦門冬湯(バクモンドウトウ)

V すぐに効く漢方薬を試してみる
 二日酔い
 便秘
 乗り物酔い
 こむら返り

W 漢方医学を勉強してみる
 「寒」と「熱」
 「不足」と「過剰」

X 漢方薬の飲み方を工夫してみる
 漢方薬服用のひと工夫

Y よくある患者さんの質問とベストアンサー
 服用のタイミング Q1、Q2、Q3
 漢方薬の効果・服用期間 Q4、Q5
 併用について Q6、Q7
 副作用と安全性 Q8、Q9
 漢方薬と医療経済 Q10、Q11



T ステップ1、2、3で「困った」を解決してみる
 医学がどんなに進歩しても治しにくい症状があります。命に関わるものではないけれどじわじわと患者さんを苦しめる、そんな症状は漢方薬が得意とする分野です。ここではそれぞれの症状に3つの漢方薬を提案します。体格や体質により効果のある漢方薬は違ってきます。1、2、3はいずれも各症状に使われる代表的な漢方薬で、患者さんに合わせて使い分けられています。


■かゆい
 1 黄連解毒湯 「かゆい」にはまずこの漢方薬。特にアトピー性皮膚炎に多く使われます。体を冷やす黄連を含んでいます。苦いので飲みにくい場合はオブラートに包むなどのひと工夫を。
 2 消風散    分泌物が多い湿疹でかゆみが強いものにはこの処方も使われます。
 3 当帰飲子  入院中やお年寄りの患者さんで体力が低下した人のかゆみの訴えに処方されることが多い漢方薬です。皮膚がカサカサして乾いた感じの湿疹に。

「かゆみ」の種類で漢方薬を使い分ける
 「かゆみ」の性格は多様です。起因する疾患もアトピー性皮膚炎、じんましん、湿疹などさまざまで、所見も炎症を伴うかゆみ、じくじくした湿疹によるかゆみ、皮膚がカサカサしている人のかゆみなど様々です。漢方薬はそうしたかゆみの種類に合わせて処方されます。アトピー性皮膚炎のような熱のあるかゆみには冷やす薬を、冷えのある人には温める漢方薬が使われます。

蝉の抜け殻がかゆみ止めに!
消風散は13種もの生薬で構成されています。このなかにはゼンタイ(蝉退)という蝉の抜け殻はかゆみ止めや解熱作用があることが知られています。


■だるい
 1 十全大補湯 体力・気力の低下に加えて、貧血気味でお肌もカサカサという体全体の衰えのある場合はこの処方も適しています。
 2 補中益気湯 体力・気力が低下して、目尻や口角が下がり、肩もがっくり落ちていて時に寝汗をかくような人に。気力を充実させてだるさをとる処方です。
 3 人参養栄湯 病後や術後のだるさにはこの処方も考えます。冷えや貧血がある場合に使ってみたい漢方薬です。呼吸器系の症状があるときに使用します。

だるさに使われるその他の漢方薬
 他にも、冷え・貧血がある女性には当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、夏ばてには清暑益気湯(セイショエッキトウ)なども使われます。

「補剤」で気力・体力の底上げを
上の3つの処方は補剤の代表格です。補剤とは不足したものを補う漢方薬の総称です。低下している体の機能を回復させて気力・体力を補うことを目的に使います。「だるい」という訴えの背景には体の機能が低下して気力・体力が不足した状態があるので、補剤の効果が期待できるのです。


■食欲がない
 1 六君子湯   食欲不振にはまずこの漢方薬をためしてください。機能性ディスペプシアから抗がん剤などの副作用による食欲不振まで、幅広く解決してくれる頼もしい漢方薬です。
 2 半夏瀉心湯  みぞおちがつかえ、げっぷが出ているような人に。暴飲暴食で胃が疲れているようなとき、二日酔いで食欲がないとき、また口内炎にもよく用いられます。
 3 補中益気湯  補剤には食欲不振を改善する働きもあります。気力の低下がいちじるしい場合には、こうした補剤もためしてください。

食欲不振と漢方薬
 食欲不振は広い領域でみられる訴えで、長く続く場合は患者さんの全身状態を左右しかねません。漢方薬には食欲不振に効果が期待されるものが数多くあります。六君子湯など食欲改善作用の機序が科学的に解明されている漢方薬もあり、西洋医学の臨床でも高い評価を受けています。

六君子湯と食欲亢進ホルモン「グレリン」
六君子湯の作用は科学的にも研究が進み、胃の運動促進、胃壁を弛緩させて食物を受け入れやすい状態にする、グレリンの分泌亢進など、多彩な作用が解明されています。グレリンとは胃から分泌される食欲亢進作用を持つホルモンです。六君子湯とグレリンの関係には国内外からの関心が集まっています。


■眠れない
 1 加味帰脾湯 入院患者さんなどで体力が落ち、顔色が悪いような人に。不眠だけでなく不安などを訴えるタイプによく使われます。
 2 抑肝散    イライラが強く興奮気味で眠れないときはこの漢方薬をためしてください。子供の夜泣き、認知症の周辺症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)にもよく使用されます。
 3 酸棗仁湯   心が疲れ弱って眠れないときに使われることの多い漢方薬です。不安があり神経過敏の人に向いています。

心身の状態を整えて眠りを誘う漢方薬
 不眠の背景には多くの場合、不安や興奮、冷えなどがあるのですが、漢方薬で心身の状態を改善すれば、睡眠のマネージメントが楽になります。また、漢方薬には日中の眠けやふらつきなどの心配がほとんどありません。これはお年寄りにも使いやすい特徴といえます。

眠れるようになると心も落ち着いて全身状態も良くなるね!

 *認知症に伴う周辺症状(BPSD):認知症に伴って生じるせん妄、徘徊、攻撃行動、異食などの異常行動や精神状態のことを指します。


■肩がこる
 1 葛根湯    肩こりにはまず葛根湯をためしてください。風邪のときに飲むというイメージが強いのですが、肩こりや頭が重いときに服用すると速効性が期待できます。
 2 二朮湯    四十肩、五十肩に使われる漢方薬です。体力が衰えていない患者さんが肩や上腕に鈍い痛を訴えたらためしてください。
 3 加味逍遥散 女性で肩こり、更年期障害など不満や不安が強い場合によく使われる漢方薬です。

「肩こりくらい」、「五十肩くらい」と軽視しないで
 漢方薬を使うとに大切なのは、西洋医学的治療をまず検討し、それで十分な効果が得られなかったときに漢方薬を考えるという姿勢です。肩こりや五十肩は「この程度は西洋薬のお世話になるほどでない」と判断してしまいがちですが、背景にどんな疾患が潜んでいるかわかりません。長引く症状には、まず西洋医学的な検査で原疾患がないか確認しましょう。

肩こりと風邪
葛根湯は風邪だけでなく肩こりや頭痛にも効果を発揮します。一見意外な組合せですが、風邪のときでも肩こりのときでもこわばった筋肉をほぐして血の巡りをよくするという作用が有効性につながるのです。


■冷える
 1 当帰四逆加呉茱萸生姜湯  どんな冷え性にも幅広く処方される漢方薬です。体力のない人にも使いやすい漢方薬で、慢性的に冷えの訴えがある人によく使われます。
 2 人参養栄湯          入院中の患者さんなどで体力がなく、手足が冷えて食欲もないような場合は人参養栄湯で元気になってもらいましょう。
 3 八味地黄丸          高齢で新陳代謝が低下して冷えやしびれを感じている患者さんには八味地黄丸を。

「冷え」と漢方薬
 「冷え」は西洋医学では診断しにくい症状です。解熱剤はありますが、冷えを治す薬はすぐには思い浮かびませんよね。漢方薬は、冷えたものは暖める。熱いものは冷ます、という考えで体の環境を一定の好ましい状態に保つことを目的とします。ですから、「冷え」の改善は漢方薬の得意分野なのです。

その他の冷えに効く漢方薬
 この他にも、手足の冷えには温経湯(ウンケイトウ)や当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)下痢や食欲不振がみられたら人参湯(ニンジントウ)などもよく使われます。八味地黄丸にゴシツ(牛膝)とシャゼンシ(車前子)を加えた牛車腎気丸も高齢の患者さんに使いやすい漢方薬です。


■咳が長引く
1 麦門冬湯 空咳が続いて、のどに痰がはりついたような感じでいくら咳き込んでもとれない、という訴えがあったら麦門冬湯が適しています。
2 清肺湯 慢性化した呼吸器疾患で黄色い痰が多く出て長引く咳にはこちらの漢方薬がよく使われます。
3 柴朴湯 のどに違和感があり咳・痰が続く場合はこの漢方薬も使われます。神経過敏や気分がふさいでいる人に特に向いています。喘息に使われる漢方薬として広く知られています。

習慣化した咳を局所で絶つ
 咳にはいろいろな種類があります。空咳、痰の多い咳、背景に神経過敏のある咳など、いろいろです。一般的に「鎮咳薬」は脳の咳中枢に働きかけて咳を抑えるものですが、漢方薬は刺激の元になっている気管支の環境や精神的な背景を改善するので、咳の性質に合わせて対応できる処方といえます。

まだまだある、咳に効く漢方薬
 他にも、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、参蘇飲(ジンソイン)、柴陥湯(サイカントウ)、竹じょ温胆湯(チクジョウンタントウ)、滋陰至宝湯(ジインシホウトウ)、滋陰降火湯(ジインコウカトウ)、五虎湯(ゴコトウ)なども咳に処方されます。


■風邪をひきやすい
1 補中益気湯 風邪をひきやすい人には免疫力を高める作用が知られているこの漢方薬を。
          低下した気力・体力の底上げをはかり、体を守る機能を回復させます。
2 十全大補湯 気力ばかりか貧血や皮膚の乾燥など体全体の衰えのある人にはこの処方で免疫力アップをはかります。
3 柴胡桂枝湯 胃腸が弱い人やお子さんなどで風邪をひきやすいタイプにはこの漢方薬もよく使われます。

補剤で風邪の予防を
 補剤は、神経系、免疫系、内分泌系の調整をして生体防御機能を回復させる漢方薬です。補剤によって低下しがちの気力・体力が回復するのは、こうした総合的な作用のおかげなのです。「風邪をひきやすい」のは生体防御機構の乱れの表れです。これらの補剤でその乱れを整えてあげてください。

補剤の作用の証明
 補剤の免疫能改善効果について科学的な解明が進んでいます。たとえば補中益気湯を服用した患者さんは服用しなかった患者さんより風邪をひく回数が少なかったという調査結果や、補中益気湯の服用で重要な免疫機能のひとつであるNK細胞活性が上昇したというデータが報告されています。


■風邪をひいてしまったら
1 葛根湯 かぜかな?と思ったらすぐに葛根湯を。咳・鼻などの症状が出る前で、頭痛や熱っぽいのに汗が出ないときには速効性を発揮します。
2 麻黄附子細辛湯 お年寄りや、やや弱々しいタイプの人の風邪にはこちらの漢方薬も処方されます。ぞくぞくして微熱があるというタイミングで飲むといい漢方薬です。
3 麻黄湯 熱はあるけれど汗は出ない、関節が痛く咳や寒気、頭が重いなど体格的な風邪の症状にはこちらの漢方薬がいいでしょう。インフルエンザにも使われている処方です。

どのタイミングかで処方が変わります
 風邪は病態がどんどん変わる疾患です。頭が重いなと思っているうちに咳が出る、鼻汁が出る、下痢をする、熱が出るといった変化があります。漢方薬は病名ではなく症状に合わせて治療するものなので、ひとくちに風邪といってもどの症状のタイミングかで選ぶ漢方薬がちがってくるのです。

鼻水の多い鼻風邪には小青竜湯(ショウセイリュウトウ)や葛根湯加川きゅう辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)も使われています。


手足がしびれる
1 牛車腎気丸 お年寄りを悩ませるしびれにはまずこの処方を。抗がん剤に伴う末梢神経障害(しびれ)にも使われます。疲れやすく手足の冷えや頻尿がある患者さんには特に効果が期待されます。
2 真武湯 顔色が悪く新陳代謝が落ちて手足が冷たくしびれ感のある方に使います。脊椎脊髄疾患による神経へのダメージのしびれなどに使われることもあります。
3 八味地黄丸 坐骨神経痛など下半身の痛みやしびれにはこの処方も使われます。

まずは西洋医学できちんと検査を
 しびれの背後には中枢や脊髄などの重大な疾患が隠れていることがあるので、しびれの訴えがあったらまずは西洋医学的な検査と治療を受けるようにしてください。

牛車腎気丸と八味地黄丸の足し算・引き算
八味地黄丸にゴシツ(牛膝)とシャゼンシ(車前子)という二つの生薬を加えると牛車腎気丸になります。どちらもお年寄りの下半身を中心とした問題によく使われますが、牛車腎気丸は冷えや頻尿などの症状が強い人に使われます。


■認知症に伴う周辺症状/お年寄りの諸問題
1 抑肝散 認知症に伴う周辺症状(BPSD)を改善する効果が証明され、今や認知症んもケアに欠かせない漢方薬となっています。
2 釣藤散 血圧の高いお年寄りの頭痛やめまいなどに。認知症のBPSDの改善にも使われます。
3 牛車腎気丸 前立腺肥大や頻尿などの泌尿器系から目のかすみ、皮膚のかゆみ、むくみなど、お年寄りの全身の症状に幅広く使える漢方薬です。

認知症のBPSDとは 
 夜間せん妄、徘徊、興奮、暴力、不潔行為などの行動や心理状態をBPSDといいます。認知症の介護・対応を困難にするのはBPSDで、BPSDを改善すれば介護者の負担は大いに軽減されます。BPSD改善効果が証明された抑肝散に注目が集まっているのはそのためなのです。

お年寄りに効果のある漢方薬を知っておくと、看護の幅が広がるね!

西と東・・・・その1

ナイチンゲールと漢方医学
「看護とはその人の生命力の減退が最小限になるように生活のすべてを整えることだ」というのはナイチンゲールの言葉です。
 一方、心身の環境を整えて生体の機能を正常に保とうとするのは漢方医学の考え方の基本です。
 看護と漢方医学には、人の生命力を信じてそれを大切にするという点で共通する精神が流れているといえます。



U漢方薬トップ10をもっと知ってみる

漢方エキス顆粒は、臨床で広く使われて西洋医学のお手伝いをしています。ここでは臨床で特に使われているトップ10の漢方エキス製剤をご紹介します。

※漢方エキス顆粒とは
薬草を煎じて煮出すという古くからの方法に対し、煎じたエキスを顆粒状にしたものが漢方エキス顆粒です。品質が安定している、煎じる手間がかからない、などのメリットがあり西洋医学を基礎とした臨床で使いやすいものになっています。
(本文の「効能又は効果」および「用法・用量」はツムラ医療用漢方製剤の記載による)

1 大建中湯

腸の問題にはこれ!
科学的エビデンスも豊富でドクターからの信頼も厚く
 腹痛・腹部膨満感、術後イレウスを中心に幅広く活躍。

■効能又は効果
 腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの
■用法・用量
 通常、成人1日15.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

術後のイレウス(腸閉塞や通過障害)
過敏性腸症候群
便秘
比較的強い腹痛
腹部膨満感

大建中湯はこれらの生薬でできています。
 カンキョウ(乾姜) ニンジン(人参) サンショウ(山椒) コウイ(膠飴)
○大建中湯は腸管運動亢進作用と腸管血流の増加作用が知られ、臨床データでは術後単純性癒着性イレウス症状、過敏性腸症候群患者の腹部膨満感などの消化器症状、難知性便秘症を含む排便障害、向精神薬による排便障害などの改善効果が報告されています。

クイズ
漢方薬を食間に飲み忘れた場合はどうすればいい?
a 1回服用を抜かして次の食間からふくようする
b 1回食事を抜かして食間状態にして服用する
c 気づいた時点でとにかく服用して1日量を守る

正解:c
1日量を守ることが大切なのでcが正解です。
服用を抜かすaや、規則正しい生活のリズムを崩すbを選択しないよう、患者さんを指導してあげましょう。


2 芍薬甘草湯
 足がつるなど筋肉のけいれんは日常生活だけでなく臨床でもよく経験します。それだけに使用頻度も高く第2位にランクイン!
■効能又は効果
 急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛
■用法・用量
 通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

急激な足のけいれん(こむらがえり)
急にくるぎっくり腰
尿管結石
胃の痛み
生理痛

芍薬甘草湯はこれらの生薬でできています。
カンゾウ(甘草) シャクヤク(芍薬)
○たった2種類の生薬で構成されている漢方薬です。
 構成生薬の数が少ないと効果が早く現れやすいといわれていますが、まさにこの漢方薬は即効性があり、こむら返りやぎっくり腰など急性症状に頓服で効果を示します。
 ただし、カンゾウ成分のグリチルリチンは低カリウム血症、むくみなど副作用が報告されているので気をつけてください。

芍薬甘草湯はすぐに効果が得られやすいので基本は頓服が向いています。
カンゾウを多く含む漢方薬だから、長期連用の患者さんにはむくみなどの出現に注意してね。

3 葛根湯
 風邪のひきはじめ、肩こりなどへの速効性に患者さんのリピートも多く知名度の高い漢方薬です。

■効能又は効果
自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こりなどを伴う比較的体力のあるものの次の諸症:
感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎)角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

頭痛
首や肩のこり
風邪のひきはじめ

葛根湯はこれらの生薬でできています。
カッコン(葛根) タイソウ(大棗) マオウ(麻黄) カンゾウ(甘草) ケイヒ(桂皮) シャクヤク(芍薬) ショウキョウ(生姜)

○風邪のひきはじめ、熱がこもって汗が出ないときに処方する漢方薬です。有名な漢方薬で使いやすいのですが、マオウの成分エフェドリンによる頻脈やカンゾウの成分グリチルリチンによるむくみなどがまれに出ることがあるので患者さんのドキドキ、むくみなどの訴えに気をつけて!

■4 補中益気湯
 低下した気力・体力を補い
 免疫能を高める
 補剤の代表格は西洋医学のよき伴侶です。

■効能又は効果
 消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:
 夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症
■用法・用量
 通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。
 全身がだるい
 食欲がない
 疲れやすい
 風邪をひきやすい
 声や表情に力がない

補中益気湯はこれらの生薬でできています。
オウギ(黄耆) ソウジュツ(蒼朮) ニンジン(人参) トウキ(当帰) サイコ(柴胡) タイソウ(大棗) チンピ(陳皮) カンゾウ(甘草) ショウマ(升麻) ショウキョウ(生姜)


■5 六君子湯
 食欲不振にはこれ!
機能性ディスペプシアから抗がん剤やSSRIなどによる薬剤性の食欲不振まで幅広く確かな守備力に信頼があります。

■効能又は効果
 胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ疲れやすく、貧血症で手足が冷えやすいものの次の諸症:
 胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

■用法・用量
 通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

食欲不振
胃もたれ
x線や内視鏡でみても異常がみられない胃の不快感や痛み
酸っぱいものが上がってくる

六君子湯はこれらの生薬でできています。
 ソウジュツ(蒼朮) ニンジン(人参)
 ホンゲ(半夏) ブクリョウ(茯苓)
 タイソウ(大棗) チンピ(陳皮)
 カンゾウ(甘草) ショウキョウ(生姜)

名前は「六」だけど8つの生薬でできているんだよ!


■6 抑肝散
 認知症の周辺症状の改善作用が証明され、イライラ、起こりやすい、不眠など臨床症状改善作用の機序もわかってきています。

■効能又は効果
虚弱な体質で神経が高ぶるものの次の症状:神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

イライラしている
怒りっぽい
眠れない
興奮しやすい
せん妄
徘徊

*周辺症状改善効果 認知症患者さんを対象にした臨床試験でBPSD改善効果が証明されています。

抑肝散はこれらの生薬でできています。
 ソウジュツ(蒼朮) ブクリョウ(茯苓)
 センキュウ(川キュウ) チョウトウコウ(釣藤鈎)
 トウキ(当帰) サイコ(柴胡)
 カンゾウ(甘草)

認知症のケアで大変なのは問題行動。これが改善すれば、患者さんもご家族も看護スタッフも、とても楽になるわ。


■7 牛車腎気丸
 お年寄りの頻尿改善に確かな実績。下半身のしびれや痛みにも処方されます。

■効能又は効果
疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ

■用法・用量
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。

かすみ目
口が渇く
かゆみ
四肢のしびれ
下肢の脱力感
冷え
夜間頻尿
排尿困難


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