物忘れが気になるあなたへ、

認知症(痴呆症、ボケ)の正しい知識

もの忘れの自覚症状

@最近、なんだかおかしい。年をとれば暗記力が衰えるとは思うけど、
それにしても、ちょっと気になる・・・
A娘の電話番号を忘れる。
B財布を探すことが多くなった。
Cカギを忘れる(きちんとしまったつもりなのに見つからない)
D家族に「同じこと何度も聞かないでよ」と言われるが、何度も質問した覚えは全然ない

もの忘れが気になる。

誰でも年をとると、物忘れを自覚するようになる。
多くの場合は老化に伴う自然現象ですが、中には「認知症」の疑いがある「物忘れ」もある。

「自分は認知症かもしれない」と疑ってみるのは辛いですが、
不安のある場合は、まず、ご家族に聞いてみるのがよいでしょう。
自分ではわからない変化を、家族の人たちは感じているかもしれません。

@家族に聞いてみる。
A医者に訪ねる。
B認知症専門の医師に診てもらう。→総合病院の「物忘れ外来」を訪ねる

認知症なのか、正常な物忘れなのか、判定は難しい。
できれば、認知症専門の医師を訪ねることをお勧めします。
「物忘れ外来」「認知症外来」などさまざまな呼び方をしていることもある
「精神科」「神経科」「神経内科」「老年科」に専門の医師がいる場合もある

「将来認知症になる可能性があるかないか」

「物忘れ外来」の専門医。

問診
計算をしたり
質問に答えたり。
「脳の画像を撮る」
いろいろな検査を組み合わせて診断する。

治療薬
記憶障害を改善したり、進行を遅らせたりする薬です。
「認知症の早期」や「認知症になる前の段階」から服用すると効果がある。

脳の「リハビリ」のすすめ

認知症の治療に効果があるのは薬だけではありません。
足を骨折した人がリハビリテーションをするのと同じように、
脳の場合もリハビリテーションが可能です。
大切なのは無理をしないこと。
カルチャー教室で好きな趣味を楽しんだり、
医療の専門職が指導するデイケアを受けるなど、
自分にあった場所を探してみよう。

家族とともに

最近、娘が孫を連れてよく遊びに来る。
前より家の中がにぎやかだ。
「ママと出会ったころのパパって、こんなにハンサムだったの?」
昔の写真を見て娘が笑う。
写っているのが誰なのかどうしても思い出せない時もある
けれど気にしないようにしている。
私の周りに家族がいて私に笑顔を見せてくれて。
それで十分幸せだから。

たとえ認知症の症状が進むことがあっても、
「あなたらしさ」を失うことはないでしょう。
ご家族が、あなたと過した日々を覚えてらっしゃいます。
その記憶をもとに、あなたの暮らしを支えてくれます。
親しい人の名前を忘れることがあっても、
目の前にいる人がとても大切な人だということはわかります。
人のつながりまで失われることはない。

セルフチェック表

1.今日の日付や曜日がわからないことがある
2.住所や電話番号を忘れてしまうことがある
3.何度も同じことを言ったり聞いたりする
4.買い物でお金を払おうとしても計算できないことがある
5.ものの名前が出てこないことがある
6.置き忘れ、しまい忘れが多くなった
7.慣れた道で迷ってしまうことがある
8.ささいなことでおこりっぽくなった
9.ガスや火の始末ができなくなった
10.今まで使っていた洗濯機やリモコンなどを使いこなせなくなった
11.本の内容やテレビドラマの筋がわからないことがある
12.財布や時計などを盗まれたと思うことが、よくある
13.会話の途中で言いたいことを忘れることがある
14.だらしなくなった
15.体の具合が悪いわけではないのに、何もやる気がおきない

認知症とは、「年のせい」と「認知症」は違う。

街で出会った人の名前がなかなか思い出せない、
メガネや財布をどこに置いたか忘れてしまった・・・
そんな経験はありますか?
多くの場合は「年のせい」、
つまり、脳の老化に伴う物忘れです。
年をとれば誰もが経験する多少の物忘れは、
認知症ではありません。
認知症は、脳の神経組織の障害によって起こる「病気」なのだ。

では、具体的にどんな点が違うのでしょうか。

まず、老化に伴う物忘れは、
体験したことの一部は忘れても、体験したこと全体は覚えています。
昨日の夕食は何を食べたか忘れてしまっていても、
じっくり考えたり、家族から「ほら、大根おろしと醤油で・・・」
とヒントを出されたりすれば、
「そうだ、サンマだった」と思い出すことができます。
50歳も過ぎるとほとんどの方が経験していることではないでしょうか。

それに対して認知症の物忘れは、
体験したこと自体を忘れてしまうという特徴がある。→エピソード記憶のの障害→認知症
ここが老化に伴う物忘れと、認知症による物忘れの最も違うところです。
夕食に何を食べたか忘れてしまっても、
食べたことを覚えているなら、
それは、「老化に伴う物忘れ」。
でも、「おれ、夕食、食べてないよなぁ・・・」
「何言ってるの。ちゃんと食べたじゃない」
という会話をご家族とした経験がある方は、
認知症の可能性があるかもしれない。→エピソード記憶のの障害→認知症


お問い合わせは、
漢方を現代病に活かす!漢方専門 大山漢方堂薬局
0283-22-1574(大山漢方で、イゴ・不安・ナシ)
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*漢方薬のご服用に関しましては、
「使用上の注意」をよく読み、「用法・用量」をよく守り、適切にご服用ください。

また、今回、始めて、漢方薬のご服用を希望されるお客様は、
下記、問診表に必要事項を記入して送信するか、

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大山漢方薬局、デジタル店舗で、お取り扱いの漢方薬は、すべて「一般用医薬品」です。

以上、よろしくお願い致します。

E-mail to Dr. Ohyama Kampo Pharmacy.


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老化に伴う物忘れと認知症による物忘れの違い
 
 老化に伴う物忘れ               認知症の物忘れ
体験したことの一部を忘れる       体験した全体を忘れる
大きく進行することはない         だんだん進行する
判断力の低下などは起こらない     判断力の低下などが加わる
忘れやすいことを自覚している      忘れたことを自覚しなくなる
日常生活にほぼ差し支えない      日常生活に支障をきたす

新しい記憶から薄れていく。→短期記憶障害→認知症

認知症の物忘れの特徴

初期では、数日前のことが思い出せなくなります。
やがて、数分前にあったことも忘れるようになる。
一方で、昔のこと、例えば、若いころの出来事や仕事で覚えた専門知識などはよく覚えていたりします。
ある時、記憶のすべてがなくなってしまうというのではなく、まず、新しい記憶から失われていくのです。

ご家族から「頼んだばかりのことをよく忘れない?」
「同じことを何度も聞かないで」
などとたびたび指摘されるようであれば、
早めに専門の医師の診察を受けてみる。

時間や場所がわからなくなります

認知症の症状は記憶力の低下だけではない。
「今日は何月何日だ」
「そこの角を曲がれば、自分の家が見える」
など、ふだんは当たり前に認識している時間や場所の感覚が薄れていくのも認知症の特徴。
@まず、今日の日付や曜日、時間がわからなくなることが多い。
約束の日時をしばしば間違えたり、人によっては、春なのか秋なのか今の季節がわからなくなったりする。
A次に自分にいる場所がわからなくなる。
一度か二度行っただけの場所で迷うことは誰でもありますが、
認知症が進むと、近所の店で買い物した帰り道がわからなくなったり、自分が住んでいる家の住所が答えられなくなったりする。
このように、「いつ」や「どこ」がきちんと認識できなくなる状態を「見当識障害」と言う。→見当識障害→認知症
「見当識障害」があるかどうかは、認知症と老化に伴う物忘れを区別する上でひとつのポイントになる。


判断力、理解力にも影響が出る

認知量が進むと、思考力や判断力、理解力が低下してくる。
@例えば、料理ができなくなる。
カレーライスを作るためにはどんな材料をそろえるか、
材料をどんな大きさに切るか、
何から炒めるのか、
味見をした時の足りない調味料は何かなど、
料理するためには、「判断力」を連続して使います。
Aまた、訪問セールスを受けた時に、
自分に必要な物なのか、
毎月の返済は可能なのか、
といった判断ができなくなる。
Bより単純な判断もできなくなる。
例えば、刺身に醤油をかけるかソースをかけるか、が決められなくなる。
Cまた、理解力が落ちてくると、テレビドラマを見ていても内容がわからなくなる。
「登場人物が走っている」といったひとつひとつの場面は確かに見ていても、
登場人物の人間関係を読み取ったり、
全体の話の流れを記憶し理解することが困難になっていく。
Dさらに日常の会話でも、
「話のつじつまがあわない」とご家族から指摘される場合もある。


妄想、徘徊などさまざまな症状が現われる

@中核症状=記憶障害や見当識障害物などは、脳の神経組織の障害によって起こり、認知症の人全員に現われるので、「中核症状」と呼ばれている。
A周辺症状=認知症には、このほか、周囲とのかかわりで起こる「周辺症状」と呼ばれるものがあり、認知症の人のおよそ8割に現われる。


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特集:認知症の周辺症状

a)妄想=現実には起きていないことを信じて疑わないこと
ただし、本人が確信するのには、本人なりの理由がある。
例えば、「財布を家族が盗む」と確信する場合。
おそらく、@財布をたんすの引き出しにしまったのに、忘れてしまった(記憶障害)
A一方で「財布は机の上に置いたはずだ」と思いこんでいる(記憶障害)
B「机の上に置いた財布がなくなったのだから、家族が盗ったに違いない」と推測する、
といったプロセスが考えられる。

つまり「周辺症状」は、このように「中核症状」がもとになって現われる場合が多い。

b)徘徊=目的もなく歩き回るの
ただし、徘徊の場合も、本人なりの理由はある。
例えば、「昔、住んでいた家を訪ねたい」と思って、今の家を出たのかもしれません。
その後、自分のいる場所がわからなくなったり(見当識障害)、
何をするつもりだったのか目的を忘れてしまったり(記憶障害)して、
なぜここを歩いているのか説明できない、
ということがあると考えられる。

c)幻覚=人がいないのに人がいるように見える「幻視」、いない人の声が聞こえる「幻聴」などを「幻覚」と言う。
本人には、実際にいる人や本当の声と区別がつかない。
認知症を引き起こす病気の種類によっては、物忘れよりも先に幻視が現われることもある。

d)せん妄=突然、興奮して、物を投げたり、騒いだり、歩き回ったりする。
意識がぼんやりとしていて、幻覚や妄想を伴う。
夜間に現われやすい。
認知症とは異なる病気や、薬、生活する場の変化(入院など)によって引き起こされることもある。

d)過食・拒食=食後であるにもかかわらず、すぐに「お腹がすいた」「朝から何も食べていない」などと空腹感を覚え、必要以上に食べること
食べたこと自体を忘れるために起こる
不安感や欲求が満たされない気持ちも加わって、このような訴えになることもある。
反対に食事に興味を持てなくなって「拒食」になることもある。

d)不安・焦燥・抑うつ=認知症では、強い不安を感じたり、いらいらしたりする人がいる。
家族との会話の内容が理解できなくなったり、自分がどこにいるのかわからなくなったりしてくるとそうなる。
気持ちが相手に伝わらないと、いらいらがされに強くなり、暴力につながってしまう場合もある。
また、「抑うつ」と言って、元気がない、返事がうつろ、何をするにも意欲がわかないという状態になったり、涙もろくなったりする場合もある。


早期発見=早めの受診

物忘れが気になったり、ご家族から物忘れをたびたび指摘されたりしたら、できるだけ早く専門医を訪ねる。
かかりつけのお医者さんに相談するのもよいですが、認知症の正確な診断には、専門知識や画像診断に使う装置などが必要になる。
専門医は、多くの場合、「精神科」「神経科」「神経内科」「脳外科」「老年科」にいる。
病院によっては「物忘れ外来」「認知症外来」を開いている所もある。


早期診断・早期治療

@発症する前の段階で発見できる
診断技術の進歩により、認知症が発症する前の段階でも、脳の変化を発見できるようになってきた。
すぐに治療を開始すれば、認知症になるのを防いだり、認知症になるまでの期間を長くしたりすることができる。

A治癒できる病気がある
一見すると認知症でも実は別の病気で、効果的な治療法がある場合がある。
例えば「うつ病」です。物忘れや意欲の低下が見られることがあり、認知症と間違えられやすい病気ですが、抗うつ薬を使った治療が可能。
また、認知症にはいくつかの種類があり、その中には、早く発見して治療をすれば、治癒できたり症状を軽くできたりする病気がある。
例えば、頭を打った時に、頭の中に血液がたまる「慢性硬膜下血腫」という病気になることがあるが、
この病気の場合も、物忘れや見当識障害が現われますが、早めに血腫を取り除けば治癒する。

B症状の進行を遅らせることができる
認知症のひとつ「アルツハイマー病」は、かつては、治療法がない病気と言われてきました。
しかし、今では違います。治療薬が開発され、多くの人に効果があることがわかってきたのです。
薬物療法や脳の活性化訓練を行えば、治癒は難しくても、記憶障害などの症状の進行を遅らせることが可能になっている。

問診とさまざまな検査で認知症を判断する
ここ数年、診断技術は格段に進んでいます。
認知症かどうかを判断するには、問診に加えて、心理テスト、知能テスト、脳機能テスト、画像検査などさまざまな検査を実施する。
@問診=本人の「変化」「症状」=自分では気づかないこともあるので、ご家族に付き添ってもらい、ふだんの生活の様子などを話してもらう。
A画像検査では、MRIやCTと呼ばれる装置で、脳の中に萎縮や梗塞、腫瘍などがないかを見る。
一方、SPECT(スペクト)やPET(ペット)と呼ばれる画像検査では、
脳の血流や酸素消費量などを測定し、脳のどの部分がどのくらい活動しているかを調べる。
SPECTによって、アルツハイマー病の早期発見が可能になったと言われている。

問診でよく質問されること
 ●どのような変化にいつごろ気づいたのか
 ●急に起こったのか、いつのまにか始まっていたのか
 ●気づいたのは本人か、他の人か
 ●気づいたときと現在で変化があるか、あればどんな変化か
 ●ほかに気になる症状はどんなことで、いつごろから起こっているか
 ●かかったことのある病気、服用している薬、肉親の病歴


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認知症のタイプを知る

1)アルツハイマー病
「アルツハイマー型認知症」とも呼ばれます。
日本では、認知症の人の半数以上がアルツハイマー病だと言われます。

原因
脳には1000億個を超える神経細胞があり、その細胞がネットワークを作ることで、脳が機能しています。
アルツハイマー病は、脳にある種のたんぱく質がたまって神経細胞が次々と壊れて、脳の機能が損なわれていく病気です。
神経細胞の減少によって、脳も萎縮していきます。

発症年齢
40代、50代で発症する人もいますが、この病気になる人は年齢とともに多くなります。

症状
もの忘れから始まることが多く、数年から十数年かけて、だんだんと進行していきます。
若くして発症する場合は、進行が早いと言われています。
記憶障害意外にも、「いつ」「どこ」がわからなくなっていく見当識障害、判断力や理解力の低下などが見られます。
病気が進行すると徘徊、妄想、幻覚などが現れることがあります。

その他の特徴
・女性に多い
・もの忘れの自覚、自分が病気だという意識が失われがち
・感情が乏しくなりがち
・意欲の低下
・画像検査検査で脳の萎縮がわかる

2)脳血管性認知症
アルツハイマー病を伴わないものと、アルツハイマー病を伴う「混合型」があります。

原因
脳の血管がつまる脳梗塞や血管が破れる脳出血によって発症します。
脳梗塞や脳出血が起きると、その部分の神経細胞が死んで、脳の働きが低下します。
ダメージを受けるのが記憶などに関係する部分だと、認知症になるのです。
多くの場合、脳梗塞や脳出血の発作を繰り返すたびに、症状が段階的に進んでいきます。

症状
ダメージを受けた場所の機能は低下しますが、ダメージを受けていない場所の機能は保たれます。
したがって、低下する機能にばらつきがあるのが、この病気の特徴です。
例えば、家族の名前を思い出せないほど記憶力が低下していても、判断力は保たれている人もいるのです。
また、感情がうまくコントロールできなくなって、ささいなことで怒ったり、急に泣き出したりすることがあります。
意欲の低下が見られることもあります。

その他の特徴
・男性に多い
・体のしびれやまひなどを伴うことが多い
・初期のころは、物忘れを自覚している 
 ・画像検査で出血や梗塞を発見できる

3)レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、日本で発見された病気です。
アルツハイマー病と間違えて診断されているケースが少なくありません。
正確に診断すれば、脳血管性認知症よりも多い病気だとも言われています。
アルツハイマー病とは症状の現れ方が少し異なります。

原因
脳の神経細胞の中に、ある種のたんぱく質が固まって「レビー小体」ができることが、この病気の原因です。
レビー小体は、パーキンソン病の原因にもなっていますが、
それが出現するのが記憶などに関係する部分だと、認知症になるのです。

発症年齢
高齢者に多く発症しますが、より若い世代の人にも発症することがあります。

症状
記憶障害や「いつ」「どこ」がわからなくなる見当識障害は、アルツハイマー病の場合ほど強くありません。
多くの場合、そうした中核症状よりも、周辺症状の方が先に現れます。
例えば、具体的な内容の「幻視」がしばしば現れますし、「抑うつ」や「妄想」が現れることもあります。
こうした症状は、時間帯によって日によって、目立ったり目立たなかったりします。
また、筋肉がこわばったり、動作が遅くなったりするなど、パーキンソン病でよく見られる症状が現れることもあります。

その他の特徴
・男性に多い
・初期のころは、物忘れを自覚している
・被害妄想やしっと妄想が起こりやすい
・画像検査では認知症の割に脳の萎縮が軽い


「軽度認知障害」
診断技術が進歩し、最近、「軽度認知障害」という言葉が使われるようになってきました。
認知症の予防との関連で注目されています。

認知症ではありません
軽度認知障害は認知症ではありません。
しかし、まったく健康な状態でもありません。
認知症になる前の段階、つまり健康な状態と認知症の間の段階、とお考えください。
「老化に伴うもの忘れ」よりは記憶障害が進んでいますが、
それ以外の脳の機能は保たれており、
日常生活は何の問題もなく送れています。

何もしないと半数が認知症になる!?
認知症の前段階と言っても、軽度認知障害の人が、将来、必ず認知症になるとは限りません。
そのまま治療を受けなくても、半数は認知症にならないと言われています。
しかし、逆に言えば、何もしなければ、半数の人は認知症になる可能性があるのです。
最近の研究では、軽度認知障害の人が適切な治療を受ければ、認知症の発症を防いだり、
発症を遅らせたりできることが、わかってきています。
早期診断で軽度認知障害が発見されれば、一生、認知症にならなくても済むかもしれないのです。
早めに専門医に相談することの大切さを、あらためてご理解いただけるかと思います。

対処法
趣味を楽しんだり人と話したりして、脳を活性化することが有効だと言われています。
また、食生活の改善や運動不足の解消など、ライフスタイルを見直すことも大切です。
場合によっては、脳の代謝をよくする薬やアルツハイマー病の治療薬を使うこともあります。

*認知症には、「アルツハイマー病」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」以外にも、さまざまな病気があり、治療法が異なります。
*「若年認知症」という言葉は、65歳未満で発症した時に使われます。
「アルツハイマー病」などさまざまな病気で症状が現れます。


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認知症の治療法

症状の進行を遅らせる薬や、イライラを抑える薬があります

アルツハイマー病の進行を抑える薬
 記憶障害など、アルツハイマー病の中核症状の進行を遅らせる薬があります。
日本で使われているのは「塩酸ドネペジル」(アリセプト)です。使い始めるのが早ければ早いほど効果が高いと言われています。
この薬は、アルツハイマー病を完全に治すことはできませんが、薬を服用しない場合に比べ、症状の進行がずっとゆるやかになるのです。
 この薬は、アルツハイマー病以外の認知症にも有効な場合があります。
脳血管性認知症の人はアルツハイマー病を合併していることが少なくなく、薬の使用が有効な場合があると考えられています。
また、レビー小体型認知症では、アルツハイマー病と比べて、この薬がさらに有効だと言われています。

 なお、アルツハイマー病を完全に治すことを目的に、日本を含め世界各国で薬の研究・開発が進められています。

周辺症状を改善する薬
 神経細胞のダメージが少ない初期の認知症では、脳代謝改善薬や脳循環改善薬が使われます。
血液の流れを改善したり、残された脳の機能を積極的に働かせたりして、症状を改善します。
とくに脳血管性認知症の場合、意欲低下や抑うつ感などが改善されることがあります。

 妄想、幻覚、興奮などの周辺症状に対しては、さまざまな抗精神病薬が使われます。
また、不安や睡眠障害には、抗不安薬や睡眠薬などが使われます。

 こうした薬を使うときは、症状を抑えこみ過ぎないように注意しましょう。
薬が原因で頭がぼうっとしたり、動きが鈍くなったり、場合によっては寝たきりになることもあるからです。
薬を服用した後の体調の変化に気をつけて医師とよく話しあうこと、また、薬に頼らずストレスを下げる工夫をすることなども必要でしょう。

周辺症状と漢方薬
 最近では、周辺症状を適度に改善してくれる薬として、漢方薬が使われるようになりました。
中でも抑肝散(ヨクカンサン)は、食事をする、着替える、歩くなどの日常の動きを低下させることなく、周辺症状を改善するという治療効果が報告されています。
また、抗精神病薬の効果を高め、使用量を減らしたり、副作用による転倒などを抑える可能性があることも分かってきています。
 認知症の場合、ずっと薬を飲み続けなければならないケースが多くなりますが、漢方薬は長期間飲み続けても副作用の心配はありません。
抗精神病薬などの一般の薬と同じように病院で処方してもらうことができ、健康保険も適用されます。
 医師に相談しながら、西洋薬と漢方薬、それぞれの良い部分を生かしながら使っていくことが大切です。

○アルツハイマー病の中核症状の進行を抑える薬
塩酸ドネペジル

○認知症の周辺症状を改善する薬
脳代謝改善薬や脳循環改善薬・・・初期の認知症で使われます
抗精神病薬・・・妄想、幻覚、興奮など
抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬・・・不安、抗うつ、睡眠障害など
漢方薬・・・一人ひとりの病状や体質によって使いわけられます。
 抑肝散(ヨクカンサン)釣藤散(チョウトウサン)
 抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)
 黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)
 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)


脳のリハビリテーションも効果的です
 薬と並ぶ治療の柱は、脳の活性化訓練(リハビリテーション)です。認知症になっても、脳に刺激を加えれば脳は活性化します。
脳が活性化されれば、認知症の進行を遅らせたり、機能を回復させることができると言われています。
医師や臨床心理士などの専門職が指導してくれる場であれば、より効果があがるでしょう。
 大切なことがひとつあります。脳を刺激すると言っても、強制されてやったり、頑張りすぎたりしたはいけません。
リラックスした雰囲気の中で、楽しみながら、ほかの人とおしゃべりしながらやってください。

音読や計算
計算ならやさしい問題から。ストレスを感じながらやるのは逆効果です。

音楽療法
懐かしい曲を歌えば若いころのことを思い出します。その思い出を仲間と語り合うことで脳が活性化されます。

芸術療法
陶芸、絵画、演劇、ダンス・・・何かを表現すること、視覚や聴覚、触覚を刺激することが脳に良いのです。

運動療法
運動すると脳の血流が良くなります。体を動かすこと自体が脳を刺激します。年齢や体調を考えて無理はしないでください。

回想法
昔の写真や遊び道具を見ながら子供のころや若いころを思い出し、その記憶を語ることが脳を刺激します。
楽しかった過去が今のあなたを元気にします。

※ここでとりあげた脳のリハビリテーションの中には、認知症の治療にどのくらい効果があるか、科学的なデータで証明されていないものもあります。
それでも、こうした活動が人生を楽しくしてくれるのは間違いありません。無理のない範囲で、始めてみることをお勧めします。

※脳血管性認知症の場合は、脳梗塞や脳出血の発作が起きると症状が悪化します。運動と食生活に気をつけて、発作が起きないように注意しましょう。


認知症の予防はできないの?
 認知症の中でも、脳血管性認知症は、その原因となる脳梗塞や脳出血が起こらないようにすることが、いちばんの予防法です。
 それに対して、アルツハイマー病の場合は複雑です。今のところ100%予防できる方法は見つかっていません。
しかし、「生活習慣病の治療」をするだけではなく、ふだんから「運動の習慣化」「脳の活性化」「食生活の見直し」を心がければ、
アルツハイマー病になるリスクを減らせることがわかってきたいます。

4つのポイント 生活習慣病の治療

運動の習慣化
生活習慣病の治療
食生活の見直し
脳の活性化

生活習慣病を治療しましょう
 脳血管性認知症の発病に関係しているのは、高血圧や高脂血症、糖尿病です。
これらは、良くない生活習慣の積み重ねで発病する「生活習慣病」ですが、
実は、こうした病気がアルツハイマー病の発病にも関係していることがわかってきたのです。
既にこうした病気になっているのでしたら、そのままにしておいてはいけません。
血圧を下げる、コレステロールや中性脂肪を減らす、などの治療を続けてください。
 もちろん、生活習慣病にならないように生活習慣を見直すことが、
認知症にならないための、何よりの予防と言えます。

運動を続けましょう
 運動を続けることが生活習慣病の予防になることは、よく知られています。
それだけではなく、運動は脳に良い影響を与え、アルツハイマー病の予防にも効果がある、と言われるようになってきました。
 ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などのような有酸素運動(肺から取り入れた酸素を使って筋肉を動かす運動)を汗ばむ程度の強さで続けると、
脳の血流が良くなり、脳へ送り込まれる酸素が増えます。それによって、脳が活性化します。
また、運動の刺激そのものが脳の神経細胞を刺激するとも言われています。
 大切なのは、運動を始めることと、続けること。無理なく楽しく続けられる運動を見つけてください。
まずは一日10分でもいいのです。呼吸が苦しくならない程度のウォーキングから始めるのも良いでしょう。

脳を活性化する活動をしましょう
 認知症の治療法のひとつが「脳のリハビリテーション」だと、既に紹介しました。リハビリテーションに役立つことは、認知症の予防にも役立ちます。
趣味の活動や頭を使う活動を続けている人は、そうした活動をあまりしていない人に比べて、認知症になる確立が低くなると言われています。
 新しいことを学んだり、技術を新たに習得しようとしたりすれば、使う神経細胞の数が増え、神経細胞どうしが結び付くネットワークが強化されます。
あらかじめ脳を強化しておけば、年をとって少々神経細胞の数が減っても、アルツハイマー病にならないだろう、と推測されるのです。
体力のある人は少々の風邪ではへこたれないのと同じですね。
 同じ作業の繰り返しではなく、常に工夫して作りあげていくものがお勧めです。
歌や楽器の演奏、俳句や短歌、囲碁や将棋、絵をかいたり、庭を作ったり、興味が持てそうなものにチャレンジしてください。
一人でやるより家族や仲間とやる方が良いと思います。おしゃべりも、脳にとってはいい刺激です。

食生活を見直しましょう
 生活習慣病の予防に大切なポイントは、よく知られていると思います。
 例えば、いろいろな食材を、いつも腹八分目に、塩分と脂肪を控えめに、野菜を多めに、といったことですね。
こうした視点で食生活を見直し、生活習慣病になるのを予防すれば、認知症の予防にもつながります。
 また、最近では、認知症そのものと食生活との関係をめぐる研究も進んできています。

抗酸化物質
 体内に取り入れた酸素から生まれる「活性酸素」は、細胞を傷つけます。
そのため人間の体は、「抗酸化物質」を使って常に余分な活性酸素を取り除いています。
ところが、年をとると、この活性酸素を取り除く機能が弱ってくるのです。
活性酸素が増えると、生活習慣病を引き起こすだけではなく、ダメージを受ける神経細胞が増えることが予想されます。
 こうしたことから、抗酸化物質を含んだものを意識して食べるのが良いと言われるようになりました。
代表的なものにビタミンC、ビタミンE、ベータカロテンなどがあります。緑黄色野菜に多く含まれます。
ビタミンCは果物にも含まれています。緑茶のカテキン、大豆ポリフェノールなどにも抗酸化作用があります。

不飽和脂肪酸
 脂肪は大事なエネルギー源ですが、生活習慣病を予防する上で、とりすぎは禁物です。
また、認知症になりやすくなる脂肪と、なりにくくする脂肪があることがわかってきています。
一例をあげれば、「飽和脂肪酸」が多い肉の脂肪を取りすぎると認知症になりやすくなり、
「不飽和脂肪酸」が多い魚の脂肪を多く取ると認知症になりにくくなるようです。
魚に多く含まれる不飽和脂肪酸としては、DHAやEPAが有名です。

ビタミンB群
 ビタミンB1やビタミンB12などのビタミンB群は、脳の働きを正常に保つ作用があると言われています。
B群が不足すると動脈硬化を進めるだけではなく、アルツハイマー病になる確立を高めると言われています。
 B群は相互に助け合っていますから、総合的に摂取するのが理想です。
豚肉や穀類、特に玄米や胚芽米などに多く含まれています。

ミネラル
 ミネラルは体内の酵素の活動に欠かせません。カルシウム、亜鉛、鉄などを、きちんと食品からとる必要があります。
いろいろな食品に少しずつ含まれているので、好き嫌いをしないでバランスよくとることが大切です。



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認知症と漢方の知識

はじめに

ここ十年ほどの間に日本は急速に高齢化が進み、年々患者数が増えつつある認知症も避けては通れない問題のひとつといえるでしょう。
現在、認知症の症状がある人は85歳以上で4人に1人といわれており、決して珍しい病気ではなくなっています。
最近は、さまざまな角度から認知症に対する研究が行われており、病気の進行を遅らせたり、認知症の周辺症状を改善させたりすることができるようになっています。
ここでは、認知症、特に周辺症状に対する漢方治療、そして漢方の基礎知識として、漢方の考え方、現代医療における漢方についてまとめました。
健やかな長寿社会を確立するために、患者さんも介護する人も穏やかに暮らしていくことができるように、お役に立てれば幸いです。


第1部  認知症を知る/正しい認知症の知識

「認知症」ってどんな病気?
◎急増する認知症
 2005年の厚生労働省の調査によると、わが国の認知症患者はおよそ190万人。
2025年には300万人に達すると予想されています。
もはや認知症は珍しい病気ではなく、だれもが直面する可能性がある身近な問題といっていいでしょう。

◎物忘れと認知症の違い
 年をとるにつれ、しばしば物忘れを経験するようになりますが、これはごく自然な加齢現象です。
ところが認知症は単なる物忘れとは違い、記憶力や判断力が極端に低下して、通常の生活が送れなくなる「病気」です。
例えば、「めがねを片付けたことは覚えているのにどこに置いたのかという一部分だけを思い出すことができない」のは物忘れですが、
認知症の人は、「めがねを片付けたこと」自体を忘れてしまっているのです。

「認知症」とは
 脳や身体の疾患が原因で記憶・判断力などの障害がおこり、普通の社会生活が送れなくなった状態を「認知症」といいます。
認知症には原因別にさまざまなタイプがあります。しかし、多くは、

  @脳血管性の疾患・・・脳出血、脳梗塞など「脳血管障害による認知症」
  A退行変性疾患・・・「アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)」
               「レビー小体型認知症(レビー小体病)」

です。以前は、「アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)」と「脳血管性認知症」の2つが認知症のほとんど占めていましたが、
最近では、この2つの認知症と並ぶ3大認知症の1つとして知られてきたのが「レビー小体型認知症(レビー小体病)」です。


3大認知症

◎アルツハイマー型認知症
 アルツハイマー型認知症は、脳内でさまざまな変化がおこり、
脳の神経細胞が変性したり消失したりすることによって脳が萎縮して(小さくなって)いきます。

◎脳血管性認知症
 アルツハイマー型認知症が「脳自体の老化」であるのに対し、脳血管性認知症は、脳梗塞などによる「脳血管の障害」が原因となります。
障害がある部分によって症状が異なるため、「ある能力は低下しているのに、ある部分ではしっかりしている」というような「まだら認知症」の症状が特徴です。
そのほかにも、両者にはさまざまな違いが見られます。

               脳血管性認知症           アルツハイマー型認知症
 自覚            初期にはある             ないことが多い
 進み方          良くなったり悪くなったり、      ゆっくり進む
                階段状に進む       
 神経症状         部分的に手足が麻痺したり     初期には少ない
                しびれたりすることが多い 
 持病との関係      糖尿病、高血圧などがある     持病との関係は少ない
                ことが多い  
 認知症の特徴      まだら認知症・部分的に      全般性認知症・全般的に
                能力が低下している         能力が低下している
 人格            ある程度は保たれる         変わることが多い

◎レビー小体型認知症(レビー小体病)
 レビー小体型認知症(レビー小体病)は、脳の特定の神経細胞の中に、特異な変化(レビー小体)が現れることが原因でおこります。
初期に幻覚(特に幻視)や妄想が出て、そのうちに、体が硬くなる、動作が遅くなる、小またで歩くなどの運動障害が出てきます。

アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の経過
 アルツハイマー型認知症の場合、症状が急に出てきたり、一気に悪化するというようなことはほとんどありません。
アルツハイマー型認知症の経過は、3段階に分けられます。
 アルツハイマー型認知症は緩やかに発症し、徐々に進行していくため、
初期のうちは家族ですら発症を見逃してしまうことがあります。

第1期(前期)
 同じことを何度も言うなどの記憶の障害が目立ってくる。
  ↓
第2期(中期)
 場所や時間がわからなくなる。徘徊や異常行動が始まり、自立することが難しくなる。
  ↓
第3期(後期)
 家族の顔や名前がわからなくなる。筋道の立った話ができなくなり、会話が成り立たない。
介護がなければ日常生活が困難になり、さら に進行するとすると寝たきりになる。

■認知症高齢者の年齢別層別出現割合
 66〜69歳・・・1.5%
 70〜74歳・・・3.6%
 75〜79%・・・7.1%
 80〜84%・・・14.6%
 85歳以上・・・27.3%

認知症の年齢層別出現割合をまとめたものですが、80歳以上で認知症が多いことがわかります。
 また、脳血管性認知症の場合は病気の原因である脳血管の障害状況によって進み具合が左右されます。
脳梗塞の発作は認知症を発症するきっかけになるばかりではなく、発症後に病状を悪化させる大きな原因になります。
発作が起こるたびに認知症の症状が進んでいく人も少なくありません。


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認知症の注核症状と周辺症状
 認知症の症状には、知的機能低下の影響が直接現われる「中核症状」と、それに伴って生じる「周辺症状」があります。
中核症状は認知症患者には必ず見られる症状であり、具体的には下のようなものが挙げられます。
 一方、周辺症状は現れ方や程度にかなりの差があります。介護をする人はさまざまな周辺症状に細かい対応を迫られることから、
中核症状よりも周辺症状の方が、ストレスを増大させる場合が少なくありません。

◎主な中核症状
 ●記憶力障害
  食事をしたばかりなのにまだ食べていないというなど、直近のことを忘れてしまう。
 ●見当識障害
  慣れた道なのに迷う、ここはどこなのか、など「いつ・どこ・だれ・」がわからなくなる。
 ●判断力の低下
  寒いときに薄着のままでいたり、真夏でも厚着をするなど、簡単な判断がつかなくなる。

◎主な周辺症状
 ●せん妄
  意識に曇りを生じ、注意力や集中力がなくなる。同じ動作や質問を繰り返したり、
「誰かが部屋にいる」「虫が見える」などの幻覚、現実にはないことを言う。
 ●幻覚・妄想
  現実には起きていない、例えば、「孫が来た」「知らない人がいる」などを訴える。きちんと説明しても納得しない。
「お金を盗られた」という盗られ妄想、「ご飯を食べさせてくれない」という被害妄想、
「妻(夫)のところに男性(女性)が来ている」という嫉妬妄想など。
 ●徘徊
  記憶障害、見当識障害などにより、誰かを探したり、良く知っている道で迷ったり、行方不明になったり、歩き回る状態。
 ●暴力・不穏行為
  周辺の事態が理解できずに不安感、焦燥感、恐怖感を持つことがある。
その反応として、暴力・不穏行為が現れる。
また、痛み、痒みなどの不快感をうまく伝えられない場合などに、イライラしたりして暴力・不穏行為として現れることがある。
 ●過食・拒食・異食
  食後、直ぐに「食べていない」「お腹がすいた」などと空腹を訴え、必要以上に食べることを過食という。
また、食事に興味を持たなくなったり、「毒が入っている」と食事を拒否し、結果として拒食になる。
認知障害が進行すると本来食べ物ではないティッシュペーパーや石けんなどを口に入れる異食行動をとることもある。
 ●不潔行為
  部屋の隅などトイレ以外で排泄する、便の付いた下着を隠す、便をいじるなどの行為。
見当識障害、認知障害によるものと考えられている。
また、おむつを使用している場合は、汚物への違和感から手を入れ触ってしまうこともある。
 ●睡眠障害
  認知症の進行と共に、夜、なかなか寝つけない(入眠困難)、熟睡できない(熟睡困難)、早く目が覚める(早期覚醒)などが起こる。
結果として日中にうたた寝をしてしまい、昼夜逆転につながる。
 ●抑うつ症状
  気がない、返事がうつろ、意欲がわかないなどの状態。涙もろくなったりする。


認知症の治療〈進行を遅らせる・症状を軽減する〉
 残念ながら今のところ、認知症で失った機能を元に戻したり、進行を完全に止めたりする治療法はありません。
 しかし、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症(レビー小体病)には、
中核症状である記憶力低下の進行を遅らせることが期待できる「塩酸ドネペジル」という薬が使われています。
この薬には、残った神経細胞を効率よく回転させる作用があります。
その結果、障害のない神経細胞が機能して、障害された神経細胞の働きを補ってくれるのです。
 塩酸ドネペジルは、半年から1年ほど進行を遅らせる効果が期待できます。
「幻覚、妄想、徘徊、興奮」などの症状がある場合には慎重に、抗精神病薬が使われることもあります。
 また、脳血管性認知症の場合は、脳梗塞などの再発防止を目的に、抗血小板薬で血液を固まりにくくしたりします。
 最近では、周辺症状の改善に漢方薬が使われています。
中でも抑肝散(ヨクカンサン)は、日常生活動作を低下させることもなく、周辺症状を改善するという治療効果が報告されています。
そのほかにも、釣藤散(チョウトウサン)、抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)
、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)などの処方も用いられています。

 *日常生活動作:人間が自立して生活するための歩行、入浴、排泄、着脱衣、食事などの基本的な動作


早期発見・早期治療を
 認知症では、症状に気づいたらできるだけ早く専門医を受診し、診断を受けることが大切です。
その目的の1つは「治る認知症」あるいは、薬の服用で現れた「認知症もどきの状態」を見つけて治療すること。
認知症の症状が現れる病気にはいろいろありますが、その中には治療ができるものも含まれているからです。
原因となっている病気を見つけて適切な治療を行えば、症状を治したり軽くしたりすることができるからです。
 早期発見の2つめの目的は、早めに治療を始めることで、薬の効果を最大限に生かすことができるということです。
昨今は塩酸ドネペジルのような薬で認知症中核症状の進行を遅らせることが可能になり、
早期から使ったほうが高い効果を期待することができます。
 また、初期であれば、介護に追われる時期ではありませんから、家族にとっては医師に相談したり、
認知症やさまざまなサービスについて情報を集め、正しい知識を持つことができます。
そして将来、介護にも余裕を持って対応することができます。

早期発見のポイント
 ●慣れているところなのに、道に迷った
 ●以前よりだらしなくなった。身だしなみを気にしなくなった
 ●置き忘れや、しまい忘れが目立つ
 ●簡単な計算をよく間違える
 ●ものの名前が出てこない
 ●同じことを何度も言ったり聞いたりするようになった
 ●たびたび水道の蛇口やガス栓を締め忘れる
 ●ささいなことですぐ怒る
 ●時間や日付が不確か
 ●日課をやめた
 ●以前よりもひどく疑い深くなった
 ●薬の管理ができなくなった
 ●テレビドラマの内容ができなくなった


第2部  認知症と漢方治療

介護者の負担が大きい周辺症状
 認知症が進行し、記憶力や判断力が低下して日常生活に支障をきたすようになれば、介護は欠かせなくなります。
介護を担うのは、患者の家族という場合がほとんど。
認知症の患者数が年々増えている状況の中で、高齢の夫婦間でどちらかが伴侶を介護する
というような「老老介護」になるケースも多いようです。
 介護で大変なことは周辺症状に対する対応です。
周辺症状は、人によって現れ方や程度に差がありますが、徘徊を繰り返す患者から目が離せない、昼夜を問わず排泄物の処理をする。
財布が盗まれたと騒ぐ患者をなだめるなど、介護者の負担は大きくなります。

日常生活動作を低下させることなく周辺症状を改善する抑肝散
 現在、こうしたさまざまな周辺症状を改善する主な治療薬として、抗精神病薬などが用いられています。
抗精神病薬は異常な興奮や暴言などさまざまな症状を抑えてくれる薬です。
しかし、経過が長期間に及ぶ認知症においては、長期間投与になるケースも少なくありません。
その結果、転倒などを起こしやすくなったり、日常生活動作を低下させてしまうことも少なくないようです。
 近年、日常生活動作を損なうことなく認知症の問題行動を改善する治療薬として、漢方薬の効果が期待されています。
 現在では、抑肝散(ヨクカンサン)をはじめとする漢方薬の効果が報告されています。
 抑肝散は、伝統的に怒りや興奮を抑える効果が高い薬だと位置づけられていました。
こうした抑肝散の効果を、徘徊、幻覚、睡眠障害などに応用し、
その結果、周辺症状を改善し、日常生活動作を低下させない効果があることがわかってきています。
 抑肝散は徘徊、幻覚、睡眠障害などの問題行動だけを改善してくれるため、
患者自身のQOL(生活の質)を落としてしまうことはありません。
また、周辺症状は介護の上で大きな負担になっていることから、介護者にとっても救いになります。

レビー小体型認知症と漢方薬
 アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と並ぶ3大認知症の1つに「レビー小体型認知症」があります。
認知症全体の10%ほどを占めますが、アルツハイマー型認知症など他の認知症と比べ、幻視や妄想が高い頻度で出現することが大きな特徴です。
この周辺症状を取り除くために抗精神病薬が処方されることが多いのですが、過敏な反応を示して病状が悪化するため、治療の困難な難病でした。
 ところが近年、抑肝散が幻視を解消することがわかってきました。また、継続的に服用することにより、ほとんどの例で幻視の再発が抑えられました。
難病であったレビー小体型認知症の幻視を改善できるようになったことは、大きな進歩と言えるでしょう。

認知症の漢方治療Q&A
Q 認知症にはどのような漢方薬が使われているのでしょうか。
A 日常生活動作を低下させることなく認知症の周辺症状を改善するという治療効果が報告されている抑肝散のほかに、
釣藤散(チョウ  トウサン)、抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)、
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)などの処方が用いられ、抗精神病薬などと併用する場合もあります。
  漢方薬は抗精神病薬などの薬と同じように、病院で処方してもらうことができ、健康保険も適用されます。

Q 認知症の介護をしていますが、漢方薬をどんなふうに飲ませればいいのでしょうか。
A 認知症の患者さんの中には、薬を毒だと思い込んで飲もうとしない方もおられますし、漢方薬特有のにおいや味を嫌がることも多いようです。
飲ませやすい方法としては、とろみのある食べものに混ぜて一緒に食べてもらう、
市販のオレンジゼリーや、粉末のスポーツドリンクで作った即席ゼリーの片端に漢方薬を乗せ、
漢方薬のかかっている部分とゼリーだけの部分を交互に食べさせるようにする、
片栗粉でとろみをつけた味噌汁や全粥、アイスクリームに混ぜて食べさせる方法など、色々な方法があります。
どの方法が良いかは患者さんの状態にもよりますので、主治医や医療機関に相談してみてください。


第3部  知っておきたい、漢方の知識

《漢方の考え方》
漢方とは
患者さんの個々の状態を重視した医療です
 漢方は、もともと中国(漢)で発達し、日本に渡って独自の発展を遂げてきた伝統医学です。
患者さんの自覚症状を重視し、病気を身体全体の不調和ととらえ、全身の調和を正しくととのえるのが目的。
人が本来持っている、病気との闘い、治す力(自然治癒力)を高めることに重点をおいています。
 治療に使われる漢方薬は、草根木皮を中心に動物由来のもの、鉱物などの天然物(生薬)を組み合わせて作られています。
通常、現代医学の場では西洋医学的な診断に加え、漢方独自の診断によって、患者さん個人個人に合った漢方薬が処方されます。
 現在では、ほとんどの医師が日常診療に漢方治療を取り入れています。
また医学、薬学教育のカリキュラムにも取り入れられるようになっており、
現代医療に欠かせない治療法となっています。

漢方の考え方
「証」とは何でしょう

続く


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